富士通の板バネ式メカニカルキーボード
についてのまとめページ

FMR60KB211

はじめに

世間で富士通製のキーボードというと、FMVに付属していたメンブレンスイッチキーボード(FMV-KB321など)やリベルタッチ、ピアレスキーボード(N860-4700系)等が良く知られているようです。

しかし、かつて富士通が製造していた計算機の多く(FM7〜FMR/FM TOWNSに至るFMシリーズ、OASYSシリーズ、オフコン、メインフレーム端末など)のキーボードや、現在製造されている親指シフトキーボードFMV-KB613等のキーボードでは、全く別の機構が採用されています。これを、とりあえず当ページでは「板バネ式メカニカルキーボード」と呼ぶことにします(正式な名称は『ブロックキーボード』と言うそうですが、先にこう書いてしまったので、以下上記で統一します)。

この機構のキーボードも、(上記ラインナップでわかるように)今に至るまで長きに渡って製造されています。このタイプのキーボードは現在、一般のパソコン用のものとして普通の配列(例えばOADG106キー等)の標準品が製造されていないようなので、あまり知名度が無いのかもしれません。そこで、知名度向上によって今後も生産が継続されるよう祈願しつつ(汗)、まとめのページを作ってみました。

ただ、あまりにも情報が不足している上に、勝手な改造情報も記載したので、このページの内容に関しては、全て自己責任の上でご利用下さい。何か重大な問題が発生したとしても、私は責任を取れません。また、間違いなどありましたら、ゲストブックメール等で指摘して頂けると有難いです。情報提供もお待ちしております。

富士通の板バネ式メカニカルキーボードとは?

富士通(少なくとも現在製造しているのは富士通コンポーネント)が70年代末頃から作り続けている、国産のメカニカルキーボードです。

板バネによるふわふわした感触と直線的な押下力-ストローク特性が特徴です。手に吸いつくようで結構ハマります。スイッチにはクリックタイプとノンクリックタイプの二種類があり、クリックタイプでは明確なクリック音と感触が楽しめます。

摺動軸(兼キートップ支え)の遊びは若干大きめのようで、特にキートップがぐらつく個体もありますが(OASYS-100系用等)、鉄板フレームが入っている等、作りは極めて頑丈です(特に、この遊びのおかげで、ある程度ラフタッチしても素直に受け入れてくれる器量の大きさがあります)。

総じて全て上の特徴通りなのですが、用途等(や製造期間が長いことによる改変など)に応じて構成部品にいくつかバリエーションがあるため、個々の機体のタッチについて一括りにはできません(キーの重さも露骨に軽いもの・重いものがありますし、摺動軸の材質・形状の違いで底付き時の感覚や打鍵音がまるで変わったりもします)。これら構成部品の違いについては後述します。

構造上の特徴として面白い点は、通常のメカニカルキーボードのキースイッチと異なり、その機能をいくつかの部品に分けて独立して実装するように作られているところです。通常、鉄板フレーム入りのキーボードだと、キースイッチ(ユニット)がフレーム(鉄板)とプリント基板の両方に固定されてしまう為、個々のキースイッチを取り出せるところまで簡単にバラすことはできないのですが、本キーボードは鉄板へはめ込まれる部品とプリント基板側に付いている部品が別部品で、基板と鉄板(にはめ込まれた部品の一部)とをネジ止めして固定する方式ですので、比較的簡単に分解・メンテナンスを行うことができます。

このため、接点や摺動軸に問題がある機体でも比較的簡単に現役復帰させることが可能です。前述の頑丈さと合わせて、長く安心して使えるキーボードだと思います(私は10年近く使っていますが、トラブルはリースアップ品での1回のみ。しかも、それも後に接点のお椀を磨くことで修復し、今では何事もなく動いています。)

但しキートップの耐候性は良い方ではなく、テカリや黄ばみが出やすいです(キーの印字に含浸印刷を使っているものは問題無し)。綺麗なまま使うには、設置場所に注意し、定期的に清掃を行うなどである程度軽減できるのではないかと思います(うちの新品KB611はそこまで酷く悪化しなかった為。ただテカリは出ました)。

板バネ式キーボードかどうかを外から判別する方法としては、型番を記したシール等に「PART No. : N860-2...-xxxx」というような記載があるかどうかで見分けがつきます(ものによっては外部にこの表示が無いものがありますが、内部のどこかには必ず記載されています)。例え似たようなキートップが使われていたとしても、2000番台以外のものは別の構造です(似たようなものとして、板バネ+メンブレンスイッチを使ったN860-46..等)。

実際の製品等(2015/01現在)

ここでは、今まで製造されていた製品/現在販売されている製品等をあつめてみました。しかし、情報不足の為、大した情報量ではありませんがご容赦下さい。

現在製造中と思われるもの

キーボード名PART No.説明
FMV-KB613?OASYS配列親指シフトキーボード。FMV-KB611とほぼ同一らしい。RoHS指令対応。NICOLA業界の新標準仕様?
FKB-2500シリーズN860-2...-....刻印や配置などを指定して作ってもらう、カスタムデザインキーボード」。所謂特注。富士通コンポーネントによる販売。カタログ掲載のキーボード配置はFM-11のキーボードとそっくり。標準配列?

構造上少量多品種には向いていそうですので、カスタムキーボードとして残っているのは納得の所です。が、富士通から出ている汎用品としては、もはや殆ど無くなってしまいました。良いキーボードなのになぁー…。

既に製造終了と思われるもの

キーボード名PART No.説明
FMV-KB101?F6680エミュレータ対応JISキーボード。非常に大きい。K端末エミュレータキーボード(FMV-KB501)の方は見るからに板バネではないようなのでご注意を。
FMV-KB211N860-2354-T001PS/2接続親指シフトキーボード。キーボード側に親指シフトのロジックが載っている。FMV-KB231の前身
FMVTW-KBS
OAKB-193
?FMV-KB611の前身? Windowsキー等やLEDの数等、いくつかバリエーションあり。KB211と同様、キーボード側に親指シフトのロジックが載っている。
Rboard Proシリーズ?リュウドによる販売。↑をベースにしたものらしい。キートップの印字とマイコン回りが別物と思われる。
FMV-KB621?OASYS配列JISキーボード。FMV-KB611のJIS配列版
FMV-KB231?USB接続親指シフトキーボード。多分親指のロジックは載っていない
FMV-KB611CA50100-0199
(N860-2367-T022)
OASYS配列親指シフトキーボード。親指のロジックが載っているが、ソフト的に無効化することも可能(Windows用ドライバではソフト的に親指を実現してるので)。殆ど同一仕様と思われるFMV-KB613にバトンタッチ。
各種FM系キーボードの多く-物によっては違う製品があるので注意
OASYS-100用キーボードの多く-物によっては違う製品があるので注意
30系などは未確認
上記機種用各種テンキーボードの多く-物によっては違う製品があるので注意

他にも、オフコン用とか汎用機用等でも採用されていたかもしれません。他社製品への採用実績も結構あるようです。

例えばカシオ楽一用のJISキーボードは、写真で見る限り露骨に富士通製のキートップですが、実物を見ていないので中身が板バネメカニカルかどうかはわかりません(後述する別物の可能性もあります)。

該当製品の例

実物の写真が無いのもアレかと思いますので、手持品の写真とコメントを掲載します。見てみたい方はこちらから。

似ているけど全然違うものの例

キーボード名PART No.説明
FMR-30BXのキーボードN860-4625-T002
(JIS配列版のもの)
実はメンブレンスイッチ+板バネ
FM-TOWNS用テンキーレスキーボードN860-46..-....実はメンブレンスイッチ+板バネ
FM-77AV系用キーボードのいくつかN860-46..-....実はメンブレンスイッチ+板バネ
初期のOASYS-100系用キーボード???リードスイッチのキーボードらしい!
70年代の富士通製コンソール???リードスイッチのキーボード??
(他)
メンブレン+板バネのキーボード

こちらはキートップと軸こそブロックキーボードと共通仕様のものですが、フレームがプラ製で、それに金属製の板バネを埋め込み、メンブレンシートを押させるという面白い仕組みのキーボードです。(現代のメンブレン式ではめずらしい)リニアなタッチは同じですが、FMR-30BXのキーボードでは後述する底付感の弱い軸を使用していることも加わり、キーを押したことが非常に分かりにくいです。底付感が明瞭な軸部品で復刻させたら「化ける」かもしれません(もう新品は作っていないようですが…)。

FMR-30BX参考写真: 全体像空けたら(キートップが床側)鉄板を外すとメンブレンシートをめくると

リードスイッチのキーボード

こちらは板バネキーホード登場以前のキーボードです。リードスイッチは不活性ガスを封入したガラス管内に接点を置き、外部から磁界を与えることで接点を動かして接触させる(つまり接点制御は非接触の)スイッチで、接点自体が外界に晒されていない為に長寿命なことから、その昔はメカキーを差し置いて(静電容量式と並んで)キースイッチの本命だったようです(尤も、今や板バネの5000万回耐久どころかメンブレンシート+ゴム椀の1000万回耐久以下が当たり前になっているご時世ですのでね…昔よりも計算機を使う人もパンチ量も明らかに増えているはずなのに、何なんでしょうね…)。

雑誌「FUJITSU」によれば、初期のものはリードスイッチの実装上、フレームから基板までの「高さ」がやたら長い形状だったようですが(だから昔のキーボードはやたら分厚い訳ですね)、最終的には現行メカキーであるFES-360程度のサイズまで押し込んだようです。接点に求められる寿命が大凡知れてしまった現代では、もはや新規に作られることは無いでしょうが、現代まで生き残ったもの達は、I/F部分さえどうにかしてしまえば(変換器を作る/回路を補修する等してしまえば)一生使えるキーボードであることだけは確実だと思います。

例外

FM-77AV初代機のキーボードです。軸受けと軸受けフレーム・外側フレームが全てプラスチックの一体部品(各種部品の説明に関しては後述)となっているようですが、N860-2...を名乗っています。メンブレン+板バネとの間に過渡的に存在したキーボードかもしれません。

導入編

まずは実際に触ってみたいところだと思います。新品ですと、親指シフトキーボードのFMV-KB613であれば、東京地下鉄表参道駅前にある「アクセス」(http://www.saccess.co.jp/)の店頭で触ることができると思います(少なくとも、昔はFMV-KB611とFMV-KB231が触れました)。その他、ごく稀にジャンク屋のキーボードコーナーにあることもありますし、富士通関係の中古やリースアップ品を扱う会社の店舗や、中古ワープロを扱う店舗にも置いてあるかもしれません。

入手経路についても前述のところや、或いはネットオークションになると思われます(KB101/211/611等はよく見かけます)。

前述したように、キーボードによって構成部品が(意図的に)異なる場合があり、また、同一型番の製品でもリビジョン違いで構成部品が変更されていることがあるので、機体間での使用感に関して大幅な違いがあることがあります。その為、店頭で触った感覚だけを頼りにして、違う構成部品を用いた製品を入手してしまうと痛い目にあうので気をつけて下さい(触って気に入ったものをその場で買うのが一番安全です)。

以下、実際にキーボードを選択する際のメモです。

親指シフターの場合

新品を考えるなら、FMV-KB613が唯一の選択肢になります。

私は未だFMV-KB613を使ったことが無いので、富士通の「FMV-KB611と同一仕様」の言葉を信じて、全く同じである事を前提に話を進めます。

KB613はPS/2端子での接続です。USB端子での接続については、キーボード側での特殊な動作の為、市販のUSB→PS/2変換器を通すと面倒な操作を強いられます。我慢できる/気にならない方なら問題ありませんが、どうしてもダメそうならOyayusbyを自作されるなりして回避する必要があります。そもそも、富士通FMVシリーズ以外での動作保証はありませんが、殆ど同一の前モデルであるKB611は、多くの環境で動作しているようです(ウチでも、自作機や会社のDELLの機械などで問題なく動いています)。

以前販売されていた中古のキーボードを使うという手もあります。こちらも比較的数多く出回っているようです(特に、FMV-KB211/611)。

FMV-KB231は数少ないUSB接続の板バネキーボードですが、殆ど109キーボード準拠の配列になっていますので、小指隣の後退キーを使う方等は使い勝手が悪いと思います。FMV-KB211も106キーボード風の配列ですが、PS/2接続で、かな入力時に右小指隣の後退キーが使える、Windowsキー等が無い等の相違点を除けば殆ど同一です。

もし、FMR/TOWNS/OASYS用のキーボードを気に入ってしまった場合は、変換アダプタを製作することで使い物になる可能性があります。例えば、PS/2キーボード(親指対応)への変換であれば、拙作の変換アダプタで対応できます。

JIS配列利用の場合

JIS配列のリテール新品は消滅してしまったようです。よって、中古をあさる必要があります。

比較的最近まで製造されていたのはFMV-KB101です。これもPS/2接続になるので、USB接続で使いたい場合は変換アダプタをかますことになります。KB101は非常に大きなサイズですので、設置場所に注意して下さい。また、機能キーについて一般の106キー配列等とは違う配列になってしまうので気をつけて下さい。その他のAT互換機に接続可能なキーボードとしては、機能キーがOASYS配列になっているFMV-KB621もありました(こちらも終息済)。

JIS配列の刻印を必要とせず、親指キーの存在に我慢できるのであれば、親指シフトキーボードであるKB211やKB231を代用する手もあります。特に、OASYS刻印にも我慢できれば、新品のFMV-KB613を流用することが可能です。

もし、FMR/TOWNS/OASYS用のキーボードを気に入ってしまった場合は、変換アダプタを製作することで使い物になる可能性があります。例えば、PS/2キーボードへの変換であれば、拙作の変換アダプタで対応できます。

構成部品の解説

(工事中。@todo 写真増やす)

ここでは、板バネ式キーボードを構成する主な部品を解説します。

FMR用やTOWNS用、OASYS-100用などのものを分解すると、大体次のような構成になっています。

一目でわかる! キーボードの構造(絵)

上下のフタと静電シールドのシートについては、構成によって必ずしも存在するものではありません。

さすがに、これほどチャチな絵でイメージして頂くのは厳しいと思いますので(汗、以下に実物の写真を示します。

一目でわかる! キーボードの構造(写真)

これらの部品はそれぞれ独立して存在しているので、基本的に分離・相互交換することも可能ですが、ものによっては分離を想定していないと思われる構成があるので、取り扱いには十分気をつけて下さい。

キートップ

キートップ比較写真(キー表) キートップ比較写真(キー裏)

文字通りです。キートップにはいくつか系統が存在します。

ここに挙げるものだけでが全てではないかもしれませんが、標準形(TOWNS用などで色違いあり)、ハイプロファイル形(OASYS-100用のフルキー部分などで使われていた背が高いもの)、旧形状形(OASYS-100用の機能キーなどで使われていたもの)、近代形(含浸印刷、後にレーザ印字化)などがあるようです。本来の呼び名は判りませんので、いずれも私が適当に命名しています。

前述の写真上部より、標準形(FMR用のFMR60KB211のもの)、標準形の色違い(灰TOWNS用のFMT-KB207のもの)、近代形(FMV-KB211、含浸印刷時代)、近代形(FMV-KB611、レーザ印字化後)のものです。

近代形以外では、内側が軸上部を丁度覆う程度の空間しか空いておらず、この側面にある微妙なデッパリと、軸にあるデッパリとかみ合うことで固定します。近代形ではプラの使用量が減っており、軸とかみ合わせる為のツメが露骨に生えています。近代形以外でも、簡略化されたものでは同様になっているものもあります(90年代以降のものなど)。

これらのキートップは、基本的に相互交換が可能です。相手の軸によっては、手で引っ張ると外せるものもありますが、それで外れない場合も、マイナスドライバと隣のキーを使って「てこの原理」で外す方法や、キートップ引き抜き工具を使う方法で外せます。キー幅は約19ミリですが、背が高いので、引き抜き工具を買う際は注意が必要です。

キーの傾斜は、フルキー部分の上側4段分にあたるところで各キーの形状を変えることで行っています。基本となるキー形状はフルキー部の上から2段目の列のようで、傾斜をつける必要が無い部分では、この列のキー形状をそのまま使っているようです。

以下に、各系統について説明します(後日、各系統の写真を追加予定です)。

標準形

長い歴史の中で一番よく見かけるタイプの形です。FKB-2500のカタログにもこのタイプのキートップが使われていることなどから、恐らくこれが一番標準の形と考えられる為、このように命名しておきました。

指先に触れる面の形は円筒形です。奥側の丸みを帯びている形状がアクセントになっています。ホームポジションキーの指示は、キートップ面中心のハイフン状のデッパリで行っています。左右から徐々に生えてくるような造形になっていて、奥側の丸みといい、やたらと洒落っ気を感じます。

傾斜のかけかたは、他のキーボードと比べてもかなり急な部類であると思います。円筒状になるようにカーブを描いています。

二色成型で文字を表示できるように、3層のプラスチック(ABS樹脂だと思います)を流し込んで作られているようです。他では見られないほど異常に分厚いキートップです(なんと3mm!)。二色成型を行わない場合でも適当なプラが流し込まれていて、同じ厚みになるようにしてありました(含浸印刷?を使用しているものでは、表面部分だけ違うプラスチックが使われています。材質不明)。90年代になると、二色成型ではないキーに対して、プラの量が減って(単色・単材質になって)近代形と同様にツメが生えた形になった簡略版を用いたものも現れました。

ハイプロファイル形

OASYS-100シリーズ(100G〜?)のフルキー部分などで採用されていた形です。他のタイプと比べて背が高い為、このように命名しておきました。

標準形とは違い、指先の触れる面が正方形に近く、中央が窪んだ形になっています。ホームポジションキーの指示は窪みを深くして行っています。指先へのフィット感はここで紹介している形の中で一番です。正確にタッチタイプを行う場合などは他と比べ物にならない操作感になるでしょう。キー上面積が狭いので、ラフタッチするような場所には向きません(なので、OASYS-100シリーズのキーボードでは、フルキー以外の機能キー部分を別の形にしています)。

この形では、専用の軸と組み合わせたときに正しいステップを構成するように作られているようです。専用の軸を使わずとも装着することはできますが、キー上部が手前側へ傾きすぎる為、打ちにくくなってしまいます。恐らく、本来は板バネキーボード以前に設計されたキートップで、それをそのまま持ってきたのだと考えられます(板バネ以前ではキートップの取り付け方法が若干異なり、軸上部が独立した部品だったようです。基板を傾斜した状態で置いたときに、キートップ取り付け位置が真上を向くように角度がついていました)。また、傾斜の都合上、軸受けも専用のものを使います(1〜2ミリ程度長いもの)。

傾斜のかけかたは標準形と同じ角度です(専用軸に取り付けた場合)。窪んだ形の為、少し判りづらいですが、エッジの部分でカーブを見ると、標準形と同じであることがわかります(…といっても、写真がありませんね…実物をご覧下さい)。

構造・素材に関しては標準形といっしょです。二色成型をしない場合の加工も同様のようです。ただし、簡略版が存在したかどうかは、私はわかりません。

旧形状形

OASYS-100シリーズのフルキー部分以外などで採用されていた形です。板バネキーボード以前の富士通製キーボードで使われていたキートップと形状が同じように見えるので、こう命名しておきました。

形状はかなり角張った形で、指先の触れる面が若干横長の長方形で、中央が若干窪んだ形になっています。窪みはハイプロファイル形よりも浅いですが、さりげないフィット感があります。ホームポジションキーの指示は窪みを深くしたり、上面中央に「ポッチ」をつけたりして行っています。横幅がある為、ラフタッチするような場所には最適だと思います。実際、OASYS-100シリーズのキーボードでも、上手く使い分けがされています。

この形状では、どうやらキーの傾斜を変えたものが無いようです。なので、フルキー部分に使うと高さが微妙で打ちにくいと思います。ハイプロファイル形用の軸とセットにすれば、基板を傾斜させて置いたときに、キー上面が真上を向くようになりますが、今度は指を前後移動させるときに引っかかりが出ると思います。尚、こちらもハイプロファイル形と同じく専用の軸受けが使われています。

構造・素材に関しては標準形といっしょです。二色成型をしない場合の加工も同様のようです。ただし、簡略版が存在したかどうかは、私はわかりません。

近代形

FMV用のキーボードなどで見かける形です。OASYS-30シリーズのトランスポータブル形などでも同じかもしれません。最近に登場した富士通製のものでは軒並み採用されている為、このような命名としました。

キー形状はかなり直線的なデザインに変化していて、指先の触れる面が円筒形になっていることは変わっていませんが、上辺の丸みは消えています。ホームポジションキーの指示は、キートップ面の手前側にハイフン状のデッパリをつけることで行っています。手前側に移動してしまった為、他のタイプと違って、普通に触っただけでは気づきにくいです。触っただけで気づかせることが目的なのに、何でこんなトンチキなことになってしまったんでしょうね。

傾斜のかけかたが、他の形よりも若干緩くなっています。全体的に、良くも悪くも、ごく普通のキーボードの外見に近づいているような気がします。それでも、富士通製のメンブレンスイッチキーボード(FMV-KB321など)に比べれば圧倒的にキーの高さがある訳ですが…。

この形では、恐らく二色成型を行っていないと思います。その為か、キーの厚さが他の形に比べて極端に薄くなっています(約1mm)。文字表示に含浸印刷を使っている場合は、使用されているプラスチックが違い、黄ばみにくくなっています。レーザ印字などを使う場合は、他の形で使用されているものと同じプラが用いられているようです(ABS樹脂だと思います)。

また、これらのキートップに対する文字の表示方法にも、色々と種類があるようです。文字の表示方式については、既に詳しいサイトが存在する為、簡単な説明にとどめます。

尚、刻印の書体に関しては、当初のものは「ナール」という丸ゴシック体が使われていました(前述の写真に出てくる丸ゴシック体は全てこれです)。最近の近代形のキートップ以降では角ゴシック体が主体のようですが、たまに丸ゴシック風のもの(他のFMV用キーボードと同じ書体…KB231)やナールで印字されたものも見かけられます(発注主の自由? 図面通りに起こしてくれるとか?)。

二色成型

文字の部分とその他の部分に別々のプラスチックを流し込んで作られたものです。これに対応するが為、3mmもの分厚いキートップになっていたのでした。

昔のOASYSKのキーボードなどは専らこれで、なんと「罫線通過」や「拡張機能」、「半濁音」といった複雑な字形もこれでこなしていました。最後期には流石にほとんど他の方式になりましたが、なぜか「拡張機能」だけはそのままでした。意地?

紙(鉄板)入

二色成型のキートップの上に透明なカバーを取り付けられるようにして、そのカバーとキートップの間に紙を挟むことで、好きな表示が行えるようにしたものです。

本当なら利用者が後で紙を入れるのでしょうが、私が手に入れたものでは、キーボードと同時に作成されたと思わしき鉄板が入っていて、そこに(本来使っていたであろう)機能の刻印がされていました。その裏は一般の刻印(PFキー等)だったので、キートップに直接印字するより、こっちのほうが安かったのかもしれません。

彫刻

キートップへ彫りを入れて、その上をインクで着色したものです。こすれると彫刻のエッジから削れていくと考えられるので、深く彫ってあったとしてもあまり長持ちはしそうにないと思いますが、どうでしょう。

少数なら他の方式よりも安く上がるのかもしれませんが、数が出ると逆に高くなりそうです。

含浸印刷

キートップに対して高い熱と圧力をかけ、インクをプラスチック内まで浸透させる方式です。高温高圧に耐える高いプラスチックが使われるそうで、そのため、フタがとてつもなく日焼けした状態でもキートップは綺麗なまま、という状態になってしまいます。

なんだかんだでかなりカネのかかる方式のようで、最近は余り見かけない気がします。もともとこの方式を使っていた富士通製のキーホードは、いずれも後述のレーザ印字へ移行したようです。

レーザ印字

プラスチックをレーザで焼いて印字する方式です。印字の耐久性は非常に高いと言われます。コストも二色成型や含浸印刷に比べると安いそうです。

但し、文字の表示は他と比べても圧倒的に薄い為、キートップの色に制約が出ると思われます。また、表面の手触りに独特のさらつきがあります。でも富士通のものはかなりなめらかな部類だと思います。

さらに、特殊な機能があるキートップとしてLED付のものもあるようです。私は今だ実物を見ていませんので紹介にとどめます。入手の容易なものとしてはFMV-KB101に搭載されているようです。

軸(摺動軸 + キートップ支え)

軸比較写真(表、横向き) 軸比較写真(表、縦向き) 軸比較写真(裏)

キートップを支え、キースイッチを押す白い部品です。写真の黒い部品は軸受けになります(外すのが大変だったので…)。「スライダ」とか「ピストン」という表現の方が適当かもしれませんが、これで統一してしまったので勘弁してください。

これも複数の種類があるようです。特に名称等がある訳ではなさそうなので、とりあえず便宜的に、写真の左から、軸a、軸a'、軸b、軸cと名付けておきます。以降はこの名称を使って区別します。また、写真にはありませんが、ハイプロファイル形のキートップを支える専用形状のものを2種類確認しており、こちらを軸d、軸d'としておきます。

形状が違うのはみれば判る通りですが、材質も微妙に違っています。軸c以外はいずれも白色で若干柔らかく、触るとぬるつくような(摩擦が少なそうな)印象を受けます。他のものも、写真のように微妙に色が違います。少なくともどれかはポリアセタールと思われる(大昔の雑誌FUJITSUにあった板バネ以前のキースイッチの解説に、摺動軸の材質が書いてありました)のですが、もう片方はフッ素樹脂かもしれません。軸cはかなり硬質のプラスチックで、ぬるつきのようなものは感じられません。つまり、摺動性は他ほど大きくありません。

これらの違いから、このキーボードの打鍵感覚はこの部品でかなり大きく変化します。特に、打鍵音は軸受けと軸が当たった時に発生する為、軸は打鍵感触においてかなり重要なポジションを占めるのです。

軸a:FMR60KB101/FMR60KB211の軸

多分これが基本形なのでしょう。

打鍵感触としては、スムーズな動き、押し切った時の底つき感が非常に明確、底つき時の音も非常に明確などの特徴が挙げられます。

非常に重厚であり、メカニカルキーボードらしいタッチであると思います。

軸a':FKB2500の軸

上の軸とほとんど同一ですが、微妙に形が違う(上部の凹凸)ので、一応別枠としておきます。打鍵感触もほとんど軸aと同一です。

軸b:FMT-KB207/FMV-KB211の軸

使用されている樹脂が大幅に削減されています。裏からみると分かりやすいのですが、軸aと比べるとかなり空洞状になっています。比較用の写真(軸a軸b)をご覧下さい。

打鍵感触としては、スムーズな動きに関してはより強化されているものの、底つき感がヌルくなっており、非常にソフトなタッチになりました。また、底つき時の音がほとんどなくなり、メカニカルキーボードと思えないほど打鍵が静かです。さらに、この軸から、キートップが外れやすいような作りになりました。

これまでの軸から相当打鍵感覚が変わっているため、以前の軸を採用したキーボードを絶賛されている方々には、全く受け入れ難いかもしれません(汗 一方、OASYS-30系(BOXタイプ)や90年代以降のFMRシリーズ等を触ってきた方には、比較的慣れ親しんだ感覚のタッチではないかと思います。

軸c:最近のFMV-KB611の軸

軸bの素材が変更になりました(固いプラスチック製)。打鍵感触としては、余計に軽くなったという感じでしょうか。

また、これまで同様スムーズな動きであるものの、なぜか「カサカサ」という音を放つようになりました。剛性があるため、軸bと同一形状でありながら、意図的に大きな打鍵音を出すこともできます。(軸bと同様に静音タッチを行うこともできます。軸受けへのあて方次第です。)

軸受け

軸受け写真(通常キー用、横から) 軸受け写真(通常キー用、上から)

軸と軸受けフレーム/プリント基板を繋ぐ、プラスチック製の部品です。

プリント基板とは一部の軸受けが、基板半田面からネジで固定されています。写真ではネジ穴が見えない位置になってしまったのですが(汗)、右側写真の突起の向こう側、左側写真の突起の手前側にネジ穴が存在します。また、基板と固定されているキーは打鍵感覚が重厚になります。

シフトキー等長いキーには金属製のスタビライザが装着できる亜種が、FMV-KB101のLED付きキーの部分には基板上の光を通す亜種が、それぞれ使われています(写真のものは普通のキー用です)。また、ハイプロファイル形/旧形状形のキートップを採用している箇所では、筒部の長さが若干長いものが使用されています。

また、うちのFKB2500も他と若干異なる形のものが使われています(旧形状??)

基本的に、軸と軸受けは外しやすい設計にしていないようなので、軸交換の場合は、この部品ごと交換したほうが楽だと思います。軸受けフレームとはツメで止めるのですが、これが若干ひ弱ですので注意してください。

軸受けフレーム

鉄板です。軸受けがはまる穴が開けてあります。 当然ですが、キーボードによって形が違います。

基板と軸受けの間に存在しますが、基板と直接接しないことが多いようで、 大抵の場合は軸受けと基板とをネジで止めることによって固定されています。 この系統のキーボードが見た目のわりにやたらと重たい原因は多分これでしょうね。

キースイッチ

キースイッチと基板兼用写真(FKB2500)

そのまんまです。

プラの筐体に中央部から3接点、周辺部から3接点が生えていて、そこに逆お椀形の導体が乗っている構造です。導体は通常、周辺部の接点だけで支えられていて、板バネで導体をへこませると中央部接点とショートする…という仕組みになっています。

導体がへこんだ時に明確なクリック音と感触を発生するクリックタイプと、感触がほとんどなく、出来るだけクリック音が押されられたノンクリックタイプがあります。 私の手持品は全てノンクリックタイプだったようで、クリックタイプについては詳細不明です。

尚、板バネと導体の間にはフィルムが入っていて絶縁されています。ノンクリックタイプでは透明フィルムです。

板バネの重さにいくつかバリエーションがあるようですが、外見の違いは見当りません。スイッチはプリント基板に直接半田付けされています。

プリント基板

キースイッチやスキャン・通信回路が配線されています。

一貫して片面基板のようで、それぞれの面に「BUHIN」「HANDA」といった記載があります。

キースイッチの配置方向は特に決まっていないみたいです。ハイプロファイル形キートップ用軸を使うものは左右方向、スタビライザを使うものは上下方向に板バネが伸びている必要がありますが、それ以外は結構フリーダムに配置されています(実際の製品だとある程度統一されていますが…)。

各種考察

生い立ちについて

雑誌FUJITSUによれば、富士通は70年代にはキーボードの研究をしていたそうで、の成果物として、FES-5形、FES-8/9形といったリードスイッチ(ホール素子も有)を使ったキースイッチを各種キーボードに採用していたようです(例えば、初代OASYS-100等はこのあたりのキースイッチのようです)。

当時はキースイッチとしてリードスイッチ、ホール素子、容量結合(所謂静電容量式のもの)といった方式が考えられていたようで、通常のメカスイッチは「耐久性が低い」とされて検討から外れていたようです。ということで、板バネキースイッチの元となるものは、当初「シートキー」のスイッチとして登場しました(FES-300)。恐らく、こちらの分野では当時のメインフレーム等とは異なり、スイッチ部の薄さやコスト等が優先されたことからメカキーにしたのだと思われます。肝心の耐久性については、接点部分を多接点化すること等で上手く回避したようです。板バネやプラ筐体部分の形状は板バネキーボードのスイッチと若干異なりますが、全体的な構造は既に、現在の板バネキーボードと同じもののようです(FKB3000)。

後に、このメカスイッチを通常のキースイッチの形に仕立てたと思われるものが、廉価なマイコンであるFM-8等で採用されています(流石にこの価格帯でリードスイッチはねぇ)。しかし、キーボード全体の構造としては、FM-8までの形状と板バネキーボードの形状とでは、大きく違って見えます。むしろ、板バネキーボードは上記シートキーの方が構造としては近いようです。つまり、シートキーのシートを無くし、板バネを延ばしてストロークを稼ぎ、それに合わせて軸受けと摺動軸を追加したのが「板バネキーボード(ブロックキーボード)」になったのではないか? というわけです。そう考えると、一般的なメカニカルキーボードと比べると特殊な構造をしていることも納得できます。

…とここまで書いて、海外の詳しいページを見つけてしまいました。というか海外進出もしていたんですねぇ…。板バネの第二世代とか見たことないです…。

軸の変遷

まず、軸に関して少なくとも六種類存在することは上記で述べました。ハイプロ用とロープロ用の区別は当然されているようですが、しかし、各括りの中では、同一の型番(PART No.含)を名乗った製品であっても、必ずしも同じ軸を採用しているとは限らないようなのです(FMV用のキーボードは外部にリビジョン表示がありますが、FMR用等にはありません…)。

私が確認できたものでは、少なくともFMV-KB611とFMR60KB111の二つが該当しました。特にKB611では、比較的最近になって軸が変更になったようで、それ以前とそれ以降で使われている軸が明確に違います(当初は軸b、後に軸c。併せてリビジョンが03Aに変わっているようです)。

以上のことから、製造年月を調べて軸の変わり目を見つけることができれば、実際にキーボードを触らずとも軸の種類に検討をつけることができるのではないかと考えました。上で述べたように、軸による打鍵感触の変化は非常におおきなものです。なので今後の事を考えると、予めまとめておくことは意義があると思います。

それでは早速調査開始です。まず我が家に存在する、上記の軸が使われていたキーボードの製造年月と採用された軸を整理すると、以下のようになりました。

軸a:FMR60KB101(1988-11)、FMR60KB211(1989-05)
軸a':FKB-2500(不明) → 今回は調査対象としない
軸b:FMT-KB207(1992-12)、FMV-KB211(1995-07)
軸c:最近のFMV-KB611(2005-12)

以上をまとめます。

軸a→軸bへの変更時期:1989-05〜1992-12の間
軸b→軸cへの変更時期:1995-07〜2005-12の間

…うーん、間隔開き過ぎですねぇ(^^;;;

これでは使えないので、インターネット上で出回っている他の情報を参考にしてみましょう。FMR60KB211のJISキーボード版であるFMR60KB111に関しては、二人の方がそれぞれ違う軸の写真を公開されている(各自検索してみて下さい)ので、それを参照してみますと、軸aを使用しているものが1990-02、軸bを使用しているものが「90年製」とあります。90年だけでは限定できないので、大きく見積もって1990-12だとすると、こんな感じです。

軸a→軸bへの変更時期:1990-02〜1990-12の間

これくらいのマージンなら、まだ何とかなりますよね?(何

また、このあたりで富士通のロゴが現在のものに変わったようなので、少なくとも軸bを狙うのであれば、新ロゴが印刷されたキーボードを見つければ確実です。軸aに関しては、上記90年製の写真が旧ロゴであるため、ロゴだけで判断するのは危険です。

一方、FMV-KB611に関しては、なぜか軸やらの写真を公開されている方が妙に少なく、正確な判断ができません。

ただ、上でも述べたように、途中でキートップが含浸印刷による印字からレーザ印字のものに変化したので、大きな変化があったとすればその辺りではないかと思うのですが、どうでしょう。一応、この時期を仮の軸変更時期としておきます。

これらをまとめておきます。

軸a→軸bへの変更時期:1990-02〜1990-12の間
軸b→軸cへの変更時期(仮):2001年頃?

ところでこの軸bですが、1988年製と思われるFMR-30BXのキーボードでは既に使われていました。また、FM-TOWNS用のテンキーレスキーボードでも当初(1989年か?)から採用されていたようです。このことから、以下のような仮説を立ててみました。

  • 当初は、廉価設計(又は軽量化が必要な設計)のキーボード用軸として誕生。
  • 底つき感が弱いので親指シフトには丁度よかった & 打鍵音が小さくなるのでオフィス向き。
  • 90年のどこかで一斉採用へ。

こんなところでしょう。ここで「廉価設計」と記したのは、FMRに対するFM-TOWNS/FM-77シリーズの立ち位置、樹脂の使用量減少からです。

色々チューニング/メンテナンス

5000万回打鍵対応は伊達ではありません。ちゃんとメンテすれば尋常じゃない位長期間使い続けることができるはずです。ということで、ここではメンテナンスに関する情報をまとめておきます。

キーの引っ掛かり解消法

基本的に、リニアでスムーズな打鍵感覚が味わえる板バネキーボードですが、長期間使用していると、軸と軸受けの間に引っ掛かりが発生することがあります。この場合、キーボードを開けて、基板と軸受けフレームとを固定するネジを全て外し、両者の間に溜まったホコリを掃除機等で一掃すると解決することがあります。しかし、軸と軸受けの磨耗によって渋みが発生している場合は、これでは解決できません。

そこでフッ素系の潤滑剤(呉工業のドライファストルブ等)を使うと格段に良くなります。私がFKB2500を入手した時はフルキー部分が殆ど撃沈していたのですが、この技を試みたところ、全て劇的に改善されました。ここでフッ素系の潤滑剤を用いた理由は、軸c以外の樹脂の素材がフッ素樹脂らしい(出典:こちら)ので、多分問題が少ないだろうという理由です。(ただ、板バネ以前のキーボードでは摺動軸がポリアセタールらしいのです。もしかしたらこっちなのかも…。)

以前、何も考えずにKURE CRC 5-56を吹きかけたのですが、潤滑効果は全く得られなかったので、油系の潤滑剤を用いるのは止めておいたほうが良さそうです(ところで、世間でよく「プラスチックが溶ける」といったことが言われていますが、こういった現象は発生しませんでした)。

但し、軸受けの磨耗が酷くなると、キーのぐら付きが大きくなりすぎてしまったり、打鍵が必要以上に煩くなってしまったりする影響の方が厄介になる場合があります。この場合は、こちらの方の方法を参考にさせて頂くと良さそうです。つまり、摺動性と厚みがあるシートを軸受けに貼ることでグラつきを抑える作戦です。うちでも、特に磨耗が酷いカーソルキー等でいくつか試してみましたが、大分マシになりました。お悩みの方は試してみると良いかもしれません。

軸の変更で打鍵感触を変える

上でも述べた通り、このキーボードの打鍵感覚は軸によって大きく変わります。特に、私が生まれて初めて触ったキーボードが底つき感の明確なキーボード(PC-9801RX付属のもの)だったので、その影響からか、底つき感のヌルいキーボードはあまり好きではないのです(第一、板バネキーボードに興味をもったきっかけも、底つきが明確な、軸aを採用したFMR60KB101だったのだから)。

そこで、好みの軸を採用している適当なキーボードを入手して、軸の交換をしてしまう事を考えました。やり方は簡単です。交換元・交換先それぞれキートップを外し、軸受けごと軸を外して付け替えるだけで完了です。但し、基板と軸受けが固定されているものに関しては、予め分解してネジを外しておく必要があります。

この交換作業によって、我が家の常用板バネキーボードは概ね軸aの打鍵感を味わえるようになりました。一方、一つ一つ交換できるということは、特定のキーだけ打鍵感触を変えることができるということになります。これらを好みに応じて自由に組み合わせることができるというのも、このキーボードの 特徴ではないかと思うのですが、どうでしょう。

キースイッチをいじってキーの重さを変える

少なくとも、現在販売されているFMV-KB611は、非常に軽いタッチのスイッチが採用されています。これは、親指シフトには同時打鍵の関係で軽いスイッチの方が向いているため、といわれているのですが、あまりにも軽すぎて安っぽいですし、私にとってはもっと重くないと物足りなく感じるのです。

そこで、こちらのページで紹介されている方法と逆に、板バネ部分の角度を上げて、重くしてみようと考えました。

やり方は、キースイッチの板バネ部分を、上に向かって根元から少し曲げるだけです。曲げる角度はお好みでどうぞ。手でやるよりも、ラジオペンチ等を用いたほうが良いかもしれません。これによって、ウチのKB611は多少の重厚さを得ることができました。

但し、この改造を用いても接点接触に必要な力はあまり変わらないので注意が必要です。(例えば、Escキーを思いっきり重くして『STOPキーもどき!』とやっても、誤操作防止にはなりにくいです)

また、上記ページにあるように、キーの重さをさらに軽くすることもできます。つまり、逆に下へ向かって曲げるわけです。但し、あまり下げすぎるとキーが支えきれなくなってまうので程々にしておきましょう。

テカりが出たキーの修復?

テカりの出ているキートップに、市販の水性アクリル塗料(透明つや消しのもの)を吹くことでテカりを消すという技が存在するようです。これをKB611のカーソルキーで試してみました。使用した塗料はカンペハピオの「水性シリコンカラースプレー(つや消しとうめい)」です。

結果としては、施工直後こそ大成功だったのですが、2週間も仕事場で使うと徐々に地のテカりが出てきてしまい、2・3カ月程で完全に元に戻ってしまいました…。耐久性の良い塗料を使えばもっと良い結果が出せるかもしれませんが、その手の塗料は溶剤がABSを侵すそうなので、安全を考えると使いたくはないものです。

カスタムデザインキーボードに関する考察

平たく言えば「個人で配列指定して発注かけても、うてあってくれるのか」ということ。まぁ直接聞けばいいだけの話なんですが。

そういえば、前にどこかの会社がカスタムキーボードを10万〜と出してましたが、そんな相場なんでしょうか?

最後に

随分前から書き直しを進めているのですが、なんだか途中で面倒になってきて、結局半分しか書き直しか済んでいない状況です。このため、後半部分がやたらと子供っぽい文章になっていますが、予めご了承下さい。

私自身がこのキーボードを愛用し続けていることには変わりないのですが、学生から社会人になったこともあって、金も出さんと無責任な応援ページを作り続けるのもどうなのかなと思うようになりまして(※私が新品購入したのは2006年のKB611のみ)、ちょっとモチベーションが低下している状態です…。

それでも、このページによって富士通の板バネ式キーボードに興味を持って頂けたら幸いです。

今後も何かしら製品が出続けることを期待しつつ…。