THAAD:対立をあおる韓中メディア

 韓国政府は8日、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備の方針を発表したが、その後は韓国と中国の双方で互いの対立をあおるような識者の発言や報道が相次いでいる。韓国に対する経済制裁はもちろん、戦争の可能性にまで言及する中国メディアや識者らに加え、韓国でも一部の左派系メディアや政治家までもが中国の脅威を過度に強調し、事実とは異なる主張を繰り返しているのだ。

 中国では民族主義的な論調の環球時報が8日付の社説で「THAAD配備を積極的に推進した韓国の政界関係者の入国を制限し、彼らと関係する企業に制裁を加えよ」などと主張した。今月12日に慶尚北道星州郡がTHAAD配備地として決まった際には「星州郡に対する制裁を準備し、ミサイルでTHAADを狙え」などとも訴えた。

 中国の識者らも戦争や報復に言及し、脅迫とも受け取れる発言を繰り返している。中国人民解放軍予備役少将の尹卓氏は「米国との武力衝突が発生した場合、韓国は最初の攻撃対象になるだろう」と述べた。また軍事専門家の載旭氏は「(THAADを配備した韓国に)対抗する手段は長距離ロケット砲と短距離ミサイル配備の強化で十分だ」と発言し、さらに時事評論家の朱文暉氏は「韓国はTHAAD配備によって米国の将棋の駒になった」「中国人は韓国から裏切られたと感じている」などと語った。

 韓国でも政界関係者の間から「中国への恐怖心」をあおる言動が相次いでおり、中国が韓国を攻撃する名分を自分からつくり上げている。6カ国協議で最初の首席代表を務めた李秀赫(イ・スヒョク)氏は14日にあるラジオ番組に出演し「中国は米国の空母を狙うミサイル『東風21D』を白頭山の後方に配備した可能性がある」とした上で「米国政府はこのミサイルを監視する目的で(THAADを)配備したのではないか」「米国が一方的に韓国の腕を締め上げているものと疑っている」などと述べた。李秀赫氏はかつて国家情報院第1次長を務め、また今回の総選挙では共に民主党の比例代表候補にもなった人物だ。

 これに対して韓国軍関係者は「白頭山の後方を監視するのが目的なら、国民の反発が強い韓国にわざわざレーダーを追加で設置する必要はなく、東海(日本海)にイージス艦か偵察機を派遣するか、あるいは日本にあるTHAADレーダーで監視すればよい」と反論し、李秀赫氏の知見そのものを疑問視した。

崔慶韻(チェ・ギョンウン)記者
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