米国経済諮問委員会「時給2,100円以下の人の8割はロボットに仕事を奪われるかもしれない」

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あっ....どうしよ。

先日、米国経済諮問委員会のJason Furman議長が行なったスピーチは「オートメーション化によって人間の仕事が奪われる」という点に焦点を当てたものでした。ソース元のQuartzによると、そこで発表された驚きの分析が「時給20ドル(約2,100円)以下の仕事の83%はロボット(オートメーション)によって奪われるかも」というものだそう。以下、発表から引用です。全文はこちらで読むことができます。

オートメーションが所得格差に与える影響を示したものとして2013年のCral FreyとMichael Osbourneの研究がある。彼らの結論は「米国の職の約半分はオートメーションによって奪われる危機に面している」というものだった。この予測は議論をよび、たとえば経済協力開発機構(OECD)の研究者ArntzとZierahnからはオートメーションによって奪われる危機に面している仕事は9%にすぎないという予測が(2016年に)出された

しかしここでは、その結論部分に関する議論は無視して、FreyとOsbourneによる予測が「あり得るけれども具体的にどの職業がテクノロジーのプレッシャーを受けるかという点に関しては極めて不確実だ」という認識に立ちたい。

そこで経済諮問委員会ではこれらの職業を賃金によって並べ替えた。それをFreyとOsbourneの分析に当てはめてみると時給20ドル(約2,100円)よりも少ない仕事の83%はオートメーション(によって取って代わられるという)のプレッシャーを受けるのに対し、時給20ドルから40ドル(約2,100円から約4,200円)の仕事の場合はオートメーションのプレッシャーを受けるのは全体の31%、時給が40ドルよりも多い仕事に関しては4%であるということがわかった。

時給20ドル、というところに強く反応してしまいますが、Furman議長のスピーチのポイントは「20ドルか、25ドルか。83%か、73%か」という細かい数字ではないようです。

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数字が正確なものだとはいえないにしても、(異なる賃金の間での)相対的な差が非常に大きい。賃金と(労働者の)スキルの間にある相関関係を考慮すると、これは低スキルな仕事の需要が大幅に減少し、高スキルな仕事の需要はほとんど減少しないということを意味している。

83%なのか53%なのかはわからないけど、賃金レベルによってロボットに仕事を奪われる可能性は大きく違ってくるよ、ということですね。

発表の中でも引用されていますが、経済協力開発機構は9%だといっていますし、オックスフォード大学の研究者たちは49%が仕事を奪われる危機に面しているといっています。実際どれくらいの仕事がロボットのものになっていくかはたくさん異論があるようです。しかし、低賃金な仕事ほど奪われやすいと。それがさらに所得格差の拡大につながるということです。

これまでの歴史を振り返ってみると、テクノロジーは社会全体の富を増やしてきたし、新しい仕事も生み出してきました。しかし、富が平等に配分される可能性は低く、それによって貧困層や中産階級の間に厳しい分断が生まれることを委員会は懸念しています。

スピーチを取り上げたQuartz時給40ドル以上の仕事が危機に面するのも時間の問題かもしれない、と書いています。弁護士やパラリーガルの仕事の一部はすでにソフトウェアに奪われつつありますし、ガンの診断もコンピュータによる画像アルゴリズム診断のほうが人間の医者よりも精度が高いことが証明されつつあるとのこと。

また、スポーツや金融に関する記事であればアルゴリズムは1日に何千もの記事を生み出すことができるのでジャーナリストもコンピュータに代替されてしまうかもしれない、と指摘しています。

Furman議長は「経済がより多くの雇用を生み出すことは可能だ」と言った上で、新しい雇用を生み出し、労働力をマッチングさせるということを労働市場や各省庁がちゃんとサポートしないといけないと語ります。ロボットに仕事を奪われた労働者が、新しい仕事を見つけるという入れ替えのプロセスが長引いてしまうと、長期間に渡り大量の失業者が存在することになってしまうからです。

image by Mopic / Shutterstock.com

source: Quartz, Council of Economic Advisers, OECD, Oxford University

(塚本 紺)