ロシアの国家的ドーピング IOCが緊急理事会

ロシアの国家的ドーピング IOCが緊急理事会
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ロシアが国家主導で組織的なドーピングを行っていたとするWADA=世界アンチドーピング機構の報告を受けて、IOC=国際オリンピック委員会の電話による緊急理事会が19日始まり対処や制裁について協議しています。
WADA=世界アンチドーピング機構は18日、カナダで会見し、おととしのソチオリンピックでロシアのスポーツ省などが関与し、国家が主導して組織的なドーピングを行っていたと指摘しました。
組織的ドーピングは2011年からおよそ4年間行われたとしたうえで、2013年にモスクワで行われた陸上の世界選手権や、去年カザンで行われた水泳の世界選手権などと合わせて陽性反応を示した577の検体のうち、ロシア選手を中心とする312の検体がすり替えられていたことが明らかになったとしています。
これを受けてIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長は「報告の内容は衝撃的で、オリンピックとスポーツの信用に対するこれまでにない攻撃だ。問題に関与した個人や組織に対し、厳しい制裁を科すことも辞さない」という声明を発表しました。
そして現地時間の19日正午(日本時間の午後7時)から電話によるIOCの緊急理事会が始まり、リオデジャネイロオリンピックを前に、ロシアに対する対処や制裁について協議しています。

ロシア ソチパラリンピックで躍進

ロシアは、自国開催となったおととしのソチパラリンピックで金メダルの数を30個と大きく伸ばしました。
2014年に開かれた冬のパラリンピックのソチ大会で、ロシアはクロスカントリースキーを中心に金30個を含む80個のメダルを獲得しました。
2010年のバンクーバー大会で、ロシアは金メダルの数がドイツに次いで2位でしたが、ソチ大会では逆転して1位となり、2位のドイツに3倍以上の差をつけて圧倒しました。
ロシアでは選手の成績に応じて、政府がオリンピックと同額の報奨金を出し、金メダル獲得の報奨金は当時のレートで換算して日本の12倍となるおよそ1200万円でした。
選手にはアパートや車なども贈られ、さらに指導者に対しても選手が獲得したメダルに応じて上限2400万円の報奨金が支払われ、国を挙げた支援の体制が敷かれていました。
また、2012年の夏のロンドン大会では、ロシアは中国に次いで2位となる36個の金メダルを獲得し、このうち半数が陸上でした。

ロシア不参加ならメダル争いに大きな影響

ロシアがリオデジャネイロオリンピックに参加できなくなった場合、日本の選手の成績を含め、メダル争いに大きな影響が出るものとみられます。

ロシアは前回のロンドン大会で、430人余りの選手を派遣し、大会が終わった時点で、金メダルは、参加した国や地域の中で4番目に多い24個、さらに銀メダル26個、銅メダル32個を獲得した強豪国です。
このうち、シンクロナイズドスイミングは、2000年のシドニー大会以降、チーム、デュエットともに4大会連続で金メダルを獲得している「お家芸」で、今回も金メダルが有力視されています。シンクロナイズドスイミングでは日本もメダルを狙える位置にいて、その可能性が高まると考えられます。
また、柔道では、ロンドン大会で、国・地域別で最も多い3つの金メダルを獲得しました。このうち、男子100キロ級で金メダルを獲得したタジール・ハイブラエフ選手はリオデジャネイロ大会の代表にも決まっていて、この階級の日本代表、羽賀龍之介選手のライバルの1人とみられています。
レスリングも、かつて世界選手権とオリンピックを12連覇し、「霊長類最強」と呼ばれたアレクサンドル・カレリン選手に代表されるように、力のある選手がそろっています。ロンドン大会では、男女合わせて金4つ、銀2つ、銅5つのメダルを獲得しました。リオデジャネイロ大会で土性沙羅選手が出場する女子69キロ級では、2大会連続の金メダルを目指すロシアのナタリヤ・ボロペワ選手が去年の世界選手権でも優勝し、ライバルの1人とみられています。
さらに新体操も去年の世界選手権では個人、団体そろって金メダルを獲得し、リオデジャネイロ大会での金メダルが有力視されています。
このほか、陸上も複数の種目で、金メダルが有力視されていましたが、一連のドーピング問題で、すでに、国際陸上競技連盟が国外を拠点し、ドーピングとの関わりがないと証明された一部の選手を除き、ロシアの選手について国際大会への出場を認めない決定を出しています。

ロシアのスポーツ相 ドーピングと無関係の選手は区別を

ロシアのムトコ・スポーツ相は18日、地元メディアに対し「IOCが選手一人一人に物語があることを考慮して決定することを望む」と述べ、ドーピングを使用した選手と無関係の選手は区別して対応すべきだという考えを示しました。
また、ロシアオリンピック委員会は19日声明を発表し、「ドーピングとは無関係の多くの選手がオリンピックに参加できなくても、それはしかたがないという意見には全く賛成できない」として、ドーピングとは関係のない選手の出場は認められるべきだという立場を改めて示しました。そのうえで、「われわれは、すべての国際機関と協力する用意がある」として、国際機関と連携してドーピング問題の再発防止に取り組む姿勢を強調しました。