駅構内や列車内などで販売されている駅弁の形態は、白飯と数種類のおかずで構成される定番の「幕の内弁当」から、各地方の特産品を使用し、パッケージや容器にも意匠を凝らした「ご当地弁当」までさまざまである。列車の行く先々には豊富な種類の駅弁があり、それぞれの土地の特色ある味覚が楽しめるといった点が、駅弁の醍醐(だいご)味といえるだろう。
日本以外では、中国、台湾、シンガポール、タイなど、アジアの一部でも駅や車内での弁当販売が行われているが、日本のように数多くの種類があるわけではないらしい。多種多様な日本の駅弁は、近代以降における日本の食文化のひとつといえる。
さて、日本で初めて駅弁の販売が行われた駅については諸説があるが、一般的には1885(明治18)年、栃木県の宇都宮駅で販売された「握り飯2個と沢庵漬(たくあんづけ)を竹皮で包んだ弁当」が日本初の駅弁であったとされている。その他にも、77(明治10)年ごろに梅田駅(現在の大阪駅)や神戸駅で売り出された駅弁が日本初であるといった説もある。いずれにしても、駅弁の歴史は明治中期ごろにはすでに始まっていたという点については間違いないようだ。
また、列車の乗客が駅のホームで立ち売りをする販売者から、駅弁を購入する売買方式は明治時代から行われていた。しかし、窓の開閉ができない車両の増加や、列車の速達化による旅客の車内滞在や列車停車の時間短縮、駅構内での販売施設の増加などによって、ホームでの立ち売りは次第に姿を消していった。現在では、一部の地方駅などでわずかに行われているだけとなっている。
当館の常設展示では、『生活と鉄道』の「鉄道と文化」のコーナーにおいて、各地の駅弁を紹介している。展示しているバラエティーに富んだ食材や容器などを通して、全国各地の特産品や食文化、駅弁文化などの魅力の一端を感じていただききたい。(京都鉄道博物館学芸員 廣江正幸)