芥川賞に村田沙耶香さん 直木賞に荻原浩さん

芥川賞に村田沙耶香さん 直木賞に荻原浩さん
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第155回芥川賞と直木賞の選考会が19日、東京で開かれ、芥川賞に村田沙耶香さんの「コンビニ人間」が、直木賞に荻原浩さんの「海の見える理髪店」がそれぞれ選ばれました。
第155回芥川賞と直木賞の選考会は19日に東京・中央区で開かれ、このうち芥川賞には、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」が選ばれました。
村田さんは千葉県出身の36歳。大学のとき通い始めた文学学校で小説を学び、平成15年に発表した「授乳」で群像新人文学賞優秀作を受賞してデビューしました。その後も野間文芸新人賞や三島由紀夫賞を受賞するなど、実力派作家として小説を発表し続けるかたわら、現在も週3日、コンビニエンスストアでのアルバイトを続けています。
芥川賞は、今回初めての候補で受賞となりました。
受賞作の「コンビニ人間」は、幼少期から大人になるまで学校や社会になじめず、18年も同じコンビニでアルバイトを続けている36歳の独身女性が主人公の物語です。マニュアル化されたコンビニの店員であることに自分らしさを見いだした主人公と、結婚や正社員になることを主人公に期待する周囲とのギャップを通して、「普通」を強要する社会の風潮を独特のユーモアを交えて描いています。

一方、直木賞には荻原浩さんの「海の見える理髪店」が選ばれました。荻原さんは埼玉県出身の60歳。広告制作会社に勤めたあとフリーのコピーライターとして活動しながら小説を書き始め、平成9年に「オロロ畑でつかまえて」で文芸誌の新人賞を受賞してデビューしました。
その後、映画化された「明日の記憶」や「愛しの座敷わらし」など話題作を次々に発表し、直木賞は5回目の候補での受賞となりました。
受賞作の「海の見える理髪店」は、二度と会うまいと思っていた母親と再会した女性や中学生だった娘を亡くした夫婦などが主人公の、家族をテーマにした6つの作品からなる短編集です。
このうち冒頭に収められた表題作は、海辺の小さな町にある理髪店を1人で切り盛りする高齢の店主が若い男性客に自分の半生を話し続け、鮮やかな結末に至るまで人生の哀歓がつづられています。
荻原さんは受賞が決まったあと「ほっとしています。傷つかないように落ちることしか考えてなかったので、心がついていきません」とコメントしました。

コンビニ人間「過不足ない描写力とユーモアがある」

村田沙耶香さんの「コンビニ人間」が芥川賞に選ばれた理由について、選考委員の1人で作家の川上弘美さんが会見し、「過不足ない描写力とユーモアがあり、今の時代に書くべき作品だった」と受賞の理由を説明しました。会見で川上さんは賞の選考過程について、「まず、選考委員による1回目の投票で、今村夏子さん、崔実さん、村田沙耶香さんの3作品に絞られた。そこからさらに協議をしたが、1回目の投票から過半数を超える評価を得ていた村田さんの作品の受賞が決まった」と説明しました。そして、受賞作となった村田さんの「コンビニ人間」については、「『コンビニで生きる動物』として生きる変わった主人公を設定していて、コンビニという現代的な場所を舞台にしながらある種のSF的な設定の作品だった。周りの人間の姿も活写しながら一見異常な主人公を醸成することで、かえって『普通』の人間への批判になっている。全体を通じて過不足ない描写力とユーモアがあり、現代という今の時代に書くべき作品だった」と受賞の理由を説明しました。