南半球最高峰リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦したサンウルブズの1年目が終わった。1勝1分け13敗で、18チーム中の最下位。成績だけなら寂しさを感じさせる。実際、「ダメなチームですね」という率直な意見をスポーツ関係者が口にするのを何度も耳にした。しかし、サンウルブズは本当に期待外れだったのだろうか。
15日に南アフリカ東部のダーバンで行われたレギュラーシーズン最終戦。サンウルブズは勝てばプレーオフ進出となるシャークスとぶつかった。相手も主力数人を欠いていたが、サンウルブズはさらに苦しい布陣。負傷者は堀江翔太主将(パナソニック)らの大黒柱を含む、2桁に達していた。
リーグ最重量クラスのFWを前面に押し出すシャークスに対し、サンウルブズは取られてもまた取り返す意地をみせる。前半は19―21。後半31分までは1チャンスで逆転できる6点差で食らいついた。
終盤に突き放され、最終的には29―40での敗戦だったが、テンポの速い攻撃ラグビーという、チーム誕生時から掲げる旗は降ろさなかった。相手が反則を犯せば、すかさず速攻。ピッチの横幅いっぱいにボールを動かし、チーム史上最多タイの4トライを奪取。最後を善戦で締めくくった。
客席に向かってあいさつする選手には、シャークスのファンから温かい声援が送られた。翌日の現地紙も、好意的な報じ方。ラインアウトからの美しいサインプレーで仕留めたSH茂野海人(NEC)のトライは「2011年のワールドカップ(W杯)決勝でニュージーランドが決めた同様のトライに匹敵する」。試合全体を通しては「シャークスにとってはプレーオフ前の肩慣らしのはずが、はるかに激戦となった」と表現した。
「ラグビーが宗教」といわれるほど目の肥えた南アフリカの人にとって、サンウルブズの最終戦は予想以上の戦いだったことになる。
■逆風を全身に受けての船出
この評価は、サンウルブズの今季全体を振り返っても当てはまるのではないか。
逆風を全身に受けての船出だった。チームを立ち上げた日本ラグビー協会の準備が遅れ、メンバー42人のうち昨年のW杯を戦った日本代表は10人だけ。過去に海外のクラブでスーパーラグビーを経験した選手も6人しか集められなかった。
開幕前の準備も突貫工事。チームが集まって練習できたのは、他チームの半分以下の3週間弱。「100失点の試合が連発するのでは」と危惧する協会幹部もいた。
全敗の可能性もささやかれる中、サンウルブズはシーズン真ん中の8戦目で、同じ新加入組のジャガーズ(アルゼンチン)に初勝利。南アの有力クラブ、ストーマーズとも引き分けた。標高1400メートルの敵地で17―92と大敗したチーターズ戦(南ア)を除けば、敗戦の多くも接戦に持ち込めた。
置かれた環境を考慮すれば、「シーズンの3分の2は非常にいい試合ができた」というマーク・ハメット・ヘッドコーチ(HC)の総括は誇張ではない。
特に、攻めるエリアやパスの方向、その距離の長短に工夫を凝らした攻撃は、他チームにない魅力だった。ボールを獲得さえできれば、前進できる確率は高かった。「いいテンポで攻められているときはどのチームも止められないくらいのアタックはできていた」とSO田村優(NEC)は胸を張る。
1年目でチームの看板となった組織攻撃――。堀江主将らのリーダー陣や田辺淳コーチらが中心となって、意見を交わしながら作り上げていったものだった。