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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2016-07-18

理系に進む高校生も国語の勉強や作文は積極的に取り組んで欲しい

日本の大学入試改革では米国の大学を真似て?「思考力・判断力・表現力」を重視するようになる、と言われています。

ボランティア活動や面接重視などと言われていますが、日本の大学の入試(東大の学部、大学院)と米国の大学院の入試(スタンフォード大学等のMBA)を経験した身からすると、米国の大学(院)の入試で求められるエッセイ(作文)が日本の大学(院)入試と比較して、大きな違いだと感じました。

アメリカの大学の学部の入試は経験していないので良く知りませんが、MBA(大学院経営学修士)の入試では、学部の成績(GPA)や数学・国語(英語)の試験であるGMATで足切りをした上で、エッセイ(作文)が重視されます。

自分の弱点は何か、今までで自分が成し遂げた一番重要な成果は何か、なぜ本学を志望するのか、などが一般的なエッセイの課題です。

スタンフォードのMBAでは名物となっている課題として、

「What matters most to you, and why?(あなたにとって最も重要なことは何か?、そしてなぜか?)」

がありました。

この課題などは、志望者の価値観・それまでの生き様を問いているわけで、自由度が高い分、余計に答える難しい。

最初は何を書いて良いかわからず、呆然としたものです。

英文でエッセイを書くためには、英語の文法の力、英語の作文の仕方(構成)などで高いレベルが求められることは当然ですが、理系に進んで文章を書くことが苦手だった自分の場合は、そもそも文章を書くこと、作文自体に大変苦労しました。

留学する前に英文で技術の論文は書いていましたが、ファクト(事実関係)を論理的に順序立てて書く技術の論文と違い、フリースタイルの作文を書くことは子供のころから苦手にしていました。

課題を前に「書けない・・・」と悶絶したわけです。そして、そもそも英文を書く以前に、自分は日本語でも作文を書けないことに気づきました。

そして、まずは日本語で作文を書くことから始めました。

小学生くらいから積極的に作文をやっていれば良かった、と後悔しました。

理系に進学すると、受験科目にない場合にはどうしても国語や作文は避けるようになりがちです。

私の場合は東大の入試で国語があったので、受験勉強で国語は学んでいましたが、それではエッセイを書く上で全く不十分でした。

この米国の大学院入試では、膨大な量のエッセイを書くことになりました。10校以上を受験したので、おそらく書いた作文の量は下書きも含めると、数百ページになったと思います。

作文が苦手だった私が米国の大学院入試で仕方なく英文で作文をするうちに、不思議なことに日本語でも文章が書けるようになりました。

その結果、こうしてブログを書いたり、日経テクノロジーOnlineに連載「エンジニアが知っておきたいMOT」を持たせてもらったり、本(10年後、生き残る理系の条件世界で勝負する仕事術)さえも出したり。

昔の自分から考えると想像できない大変身です。おそらく、大学院入試のエッセイで膨大な文章を書かなければ、日本語でも文章を書けるようにはならなかったと思います。

理系の大学や大学院を卒業して、企業の技術開発の現場で仕事をすると、最初は技術だけできればある程度は何とかなります。

しかし、研究チームをマネジメントしたり計画を立案したり、開発資金を確保するためには、国語や作文の能力が求められるようになるのです。

大学教員はちょっと特殊な立場かもしれませんが、研究費を獲得するためには、100ページを超えるような提案書を書く必要があります。

先日応募した国家プロジェクトの公募では、提案書の制限が「厚さ1センチメートル以下」となっていて、少々驚きました。

ページ数の制限ではく、厚さの制限とは・・・

それだけの分量の文章を書くことが求められているのです。

私の場合はMBA留学の入試とMBAコースで作文を鍛えられたのが、今になって研究費の獲得などでも役に立っているのです。

よくコミュニケーション能力というと、プレゼンテーションが重視がされがちですが、それに負けず劣らず文章を書くことも重要です。

日本の大学入試がどのように変わるかはわかりませんが、入試とは関係なく、理系に進む高校生のみなさんは、「受験科目にないから国語は捨てよう」と思わずに、国語や作文には積極的に取り組んでもらいたいものです。

学校の授業は苦手という人でしたら、SNS、ブログやツイッターなどに文章を書くことでも良いと思います。

媒体は何でもよいので、文章を書き続けることが、コミュ力向上には大切ではないかと。

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