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犯罪に立ち向かうテクノロジー

殺人と暴力のゲームはもう作るな

 先日、テレビか何かで見たのだが、ゲームに登場する女の子の誕生日に、オタクの男性がケーキを買ってきた。そして、テレビ画面にその女の子を映し出し、「○○ちゃん、お誕生日おめでとう」と言いながら、ケーキをうれしそうに食べていた。

 これがやらせでないなら、もはや異常だ。異常という言葉が悪ければ、あきらかに現実からはるか遠い世界だ。

 以前、アダルトビデオを制作している人たちから聞いた話だが、今の若い男の子には「ゲームオタクがゲームのキャラクターのような女の子を自由にする」といった類のストーリーが受けるという。

 それは、本当の女性にも、ゲームの中の女の子のように振る舞ってほしいという願望だろう。だが、本当の女性がそう振る舞うことはまずない。だから、成人してそうした願望を満たすアダルトゲームに向かうのだろう。

 知性や感性を磨く子どもの時期に、夜遅くまでゲームに浸り、長じてアダルトゲームやメイド喫茶にはまっているような若者が増えるようでは、ますます常軌を逸した通り魔事件が増えてしまわないか。

 先日、講演でこうした話をしたら、会場の参加者の男性が「うちの息子がまさにそうなんです」と愚痴っていた。その男性に伝えたことは、「まず奥さんと仲良くして、その仲のよさを子どもに見せてください」ということだ。夫婦が楽しそうに暮らし、その輪の中に子どもを取り込んでいけば、ゲームだけにはまることもなく、ゲームキャラクターよりは現実の女性の方が素敵だということになる。

 子どもは、その育つ過程でいろいろなものを見聞きし、将来の自分をイメージする。いわば「人生のリハーサル」を頭のなかで、仮想的に実行しているのだ。よいお手本があれば、それを取り込んでいくことだろう。だからよい環境、よい刺激の下で育ててあげたい。だが、現実と折り合うことのない仮想現実ばかりが周囲にあったら、せっかくの学習の過程が台無しになってしまうのではないだろうか。

 わたしは、すべてのゲームが悪いと言っているのではない。最近は頭や身体を鍛えるゲームも増えてきたようだ。だが、殺人や暴力を扱うゲームだけはもう作るのをやめてほしい。いくら、成人指定をしているといっても、秋葉原のジャンク屋などに行けば、成人指定も平気で売っているのだ。

 これまで、20年以上も子どもに影響を与えてきたゲーム。そこにある悪い影響は、簡単に元に戻すことはできない。再び、20年以上かけて、直していかなければならない。

 だから、ゲームを作っている人たちに強く言いたい。いくらもうかるからといって子どもをダメにしていいのか。殺人や暴力のゲームは今すぐ作ることをやめてほしい。

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