山梨県笛吹市の川辺にある旅館「やまぶき」は中国人が経営している。3年前に日本人オーナーが経営難で廃業後、中国人実業家が昨年買い取り、営業を再開した。その後、旅館の主な宿泊客は日本人ではなく中国人観光客となった。
この旅館は夕方ともなると、両手に荷物をいっぱいに抱えた中国人観光客でロビーがごった返す。30分間でチェックインした中国人客は50人余り。従業員も大半が中国人であり、室内には中国語で書かれた案内文が掲げられていた。まるで中国のホテルにでもやって来たような錯覚に陥るほどだ。地元観光案内所の関係者は「旅行会社経由で中国の団体客ばかり受け入れるため、最近は日本人の客足は途絶えたようだ」と話した。
最近日本を訪れる中国人客が増え、日本の伝統文化の一つである旅館を買収する中国資本が増えている。中国人の観光パターンが大都市のショッピングから地方の温泉や文化財へとシフトし始め、中国の不動産投資家が日本の伝統旅館にも手を伸ばし始めているからだ。客は大半が中国人観光客だ。温泉で有名な笛吹市では、やまぶきのように過去1年間に中国人が取得した旅館や温泉ホテルが6カ所に達する。
不動産研究機関の都市未来総合研究所によれば、昨年外国資本による日本の旅館・ホテルの売買件数は46件で、前年より3倍近く増えた。観光客の増加で客室料金が上昇すると、地方の旅館も有望な投資先の浮上したのだ。研究所関係者は「中国資本による旅館買収規模は正確には把握できていないが、相当数が中国による買収だ」と指摘した。
旅館など宿泊施設に対する投資が活発化し、中国の不動産資産家は日本で得意客に浮上している。中国のウォーレン・バフェットと呼ばれる郭広昌氏が率いる不動産財閥、復星集団は最近、日本でのホテル、リゾートへの投資規模を現在の2000億円から5000億円に増やす計画を明らかにした。同社は昨年12月、北海道の星野リゾートを180億円で買収し、話題になった。
東京の不動産仲介業者によると、昨年3月にある中国人不動産実業家は、わずか4時間の商談で金沢と箱根にある旅館3カ所を10億円で購入する契約を結んだ。日本経済新聞は「中国資本が旅館など日本の宿泊施設を『爆買い』している」とし、「日本文化を体験した中国の富裕層の間では、有名な温泉や旅館を保有することが流行のようになっている」と分析した。
一部の中国人は東京の新宿、大阪の難波などの周辺でアパートを購入し、観光客向けの民泊を営んでいる。宿泊業の届け出を行わない場合には事実上違法だが、料金が安く、中国人観光客の間で人気が高い。東京、大阪のホテルは中国人経営の民泊に客を奪われたため、先月には政府に対し、民泊の営業日数を制限するよう求める抗議声明も出している。
日本の観光業分析業者、井門観光研究所の関係者は「中国資本の宿泊施設買収には、低迷する景気を支えるとする歓迎ムードもあるが、日本を象徴する伝統旅館が中国資本の手に渡ることに抵抗を感じる人も少なくない」と話した。