「国境に壁」綱領採択…共和党大会
【クリーブランド(米中西部オハイオ州)西田進一郎】8年ぶりの政権奪還を目指す米共和党全国大会が18日午後1時(日本時間19日午前2時)、中西部オハイオ州クリーブランドで開幕した。「米国を再び偉大に」と訴える実業家ドナルド・トランプ氏(70)を19日に党の大統領候補に正式指名する。初日は党の政策綱領が採択され、トランプ氏の意向をくんだ不法移民対策などを盛り込んだ。一方、トランプ氏指名を阻止しようとする代議員らが声を上げて議事進行が一時中断するなど、異例の幕開けとなった。
貿易協定「米国第一で」
トランプ氏は不法移民対策として、メキシコ国境に壁を建設すると主張。綱領では、「米国南部の国境に壁を築く」とし、「壁」については「南部国境を完全にふさぎ、人と車両を止めるのに十分なものでなければならない」と明記した。
また、「米国第一主義」に基づいた貿易協定交渉の必要性を強調。トランプ氏が離脱を主張している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)には直接言及していないが、「米国の国益や主権」などを十分に守らない場合は協定を拒否すべきだと明記した。TPPを推進し、アジア市場を米製品に開放させるとしていた2012年の政策綱領から方針転換した。さらに、11月の大統領選後の「レームダック会期」での協定承認はすべきでない、としている。
一方、綱領採択に先立つ党大会規則の承認では、反トランプ派の西部コロラド州の代議員らが、19日の大統領候補指名選挙は、予備選の結果に縛られず自由に投票できるようにすべきだと主張し、規則変更を採決するよう訴えた。だが、トランプ氏支持の代議員は「トランプが必要だ」と反論、異常な雰囲気になった。結局、採決は行われず、コロラド州の代議員らは会場を立ち去った。
党大会には大統領経験者のブッシュ親子や過去2回の党大統領候補のマケイン上院議員、ロムニー元マサチューセッツ州知事らが欠席。トランプ氏と主流派との亀裂は深刻だ。
19日には中西部インディアナ州のマイク・ペンス知事(57)も副大統領候補として正式に指名される。トランプ氏は最終日の21日、指名受諾演説し、党内の結束をアピールしたい考えだ。
党全国大会
大統領選の年にだけ開かれ、全米の議員や一般党員、メディア関係者など数万人が集まる「4年に1度のお祭り」と言われる。主要テレビが生中継し、正副大統領候補の指名受諾演説を通じて政策や人柄、党の結束を示す重要な機会となる。民主、共和両党のうち、ホワイトハウス奪還を目指す方が先に開催するのが通例とされる。