「エスワンナンバーワンスタイル」公式サイトより

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 人気AV女優の香西咲が「タレントとして勧誘されたのに、AV出演させられた」として、かつての所属事務所マークスインベストメントを刑事・民事の両面で訴えるという話が伝えられた。すでに同社は別件で6月、元社長らが女性をだましてAV出演させた労働者派遣法違反の疑いで警視庁に逮捕されているが、これにはAV業界の関係者が「一歩間違えば、業界が縮小する」と戦々恐々している。

「これが立件されたら、後から“私も私も”と訴訟が続きそうです。よほど悪質なケースでなければ刑事での立件は多くないでしょうが、怖いのは民事。合意のもとで出演していても、あとから『だまされた』と言われたら交渉経緯の証明は難しく、裁判費用と損害賠償で会社が潰されてしまう。今後は、出演女性への意思確認がより念入りになると思いますが、そうなるとスカウト力が低下しますから、業界が衰退してしまいそうです」(AVメーカー勤務の男性)

 AV女優と事務所の関係は、事務所が女優をAVメーカー(制作会社)に派遣する労働者派遣に該当するが、その実態は、一般企業に比べ、労働者派遣法がきちんと守られていないケースは少なくないと指摘される。

「出れば何百万円も稼げると勘違いしているような女性には事前に報酬を伝えず、出演後に3万円を渡して終わりっていうこともあるのが、この業界。メーカーはそこにはタッチせず、事務所と女優の問題なので、たとえばこっち(メーカー)が100万円払って、事務所は本人に5万円しか渡さないケースもあります。でも、きちんとした契約の提示が前提になっていけば当然、3万円とかで出演する女性はいなくなるでしょう」(同)

 悪質な事務所になると、役員に暴力団関係者や半グレばりのコワモテ連中がいて、それを怖がった女性が歯向えず、わずかな賃金でも泣き寝入りすることがあるという。

「今のマークスは元関東連合のメンバーが関係しているというウワサもありますし、確かに代表者はコワモテ系オフィスから独立した裏人脈に強い人物ですね。これまでだったら、それを生かしてトラブルを片付けてしまうところですが、最近はAV女優側に裏社会に精通したコワモテ系弁護士がついているという話。毒をもって毒を制していると、事務所側もこの問題を簡単には終わらせられないですよ」(同)

 ただ、一般社会にも「業務委託」などの手法で労働法違反から逃れる脱法的な手法は存在するため、「AV界でも巧妙な仕組みが出来上がっていくだけでは」と見るAVライターもいる。

「今ささやかれているのが、中国や東南アジアなど海外のAV事務所を設立して、そっちで女性を雇う仕組み。作品を作るには、事務所なんてどこにあってもいいわけですから。日本の法律から逃れるためには好都合で、最近は中国や台湾、韓国の女優をスカウトしたりして、現地に人脈のある大手事務所は少なくないですし」(同)

 AVメーカーのDEEPSなどは、中国で女性をスカウトし、「大手電子メーカーの箱入り令嬢」という触れ込みでデビューさせたりしている。AV女優の労働法遵守に立ち上がったのは業界にとって痛い話のようだが、商魂たくましい連中が脱法的に新たな仕組みを生み出せば、実質的な不当労働はなくならないかもしれない。
(ハイセーヤスダ/NEWSIDER Tokyo)