英半導体設計のアーム・ホールディングス取得は、日本企業による海外企業買収で過去最大の規模となる。ソフトバンクの代名詞である、借金をテコに成長をめざす「レバレッジ経営」が一段と加速する。
今回のアーム買収総額約3.3兆円は全て現金でまかなう。ソフトバンクグループは2016年3月末時点で2.5兆円の現預金を抱えていた。今期に入り中国電子商取引(EC)最大手のアリババ株売却やフィンランドのゲーム大手スーパーセルの売却などで調達した総計約2兆円を単純に足し合わせると約4.5兆円。今回の買収はその7割ほどを費やすほどの大きな案件だ。
買収資金の一部を調達するためみずほ銀行と借入限度額1兆円のつなぎ融資(ブリッジローン)契約を結んだ。13年の米携帯事業者スプリントの買収で急拡大した負債規模はさらに増えることになる。ソフトバンクグループは16年3月末時点で、自己資本の4.5倍に相当する12兆円弱の負債を抱える。外資系の格付け会社からは「投資不適格」級の格付けしか得られていない。今回の買収発表前に外資格付け会社のアナリストは「ソフトバンクが大型買収案件に動けば、格下げの可能性がある」とみていた。一段と格付けが下がれば今後の資金調達にも影響を及ぼしかねない。投資家の不安を払拭するために、ソフトバンクグループは今回の大型買収を通じた成長展望を明確に示す必要がありそうだ。(竹内弘文)