トルコクーデター未遂 拘束の前空軍司令官が関与否定

トルコクーデター未遂 拘束の前空軍司令官が関与否定
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トルコで起きたクーデター未遂で、トルコの捜査当局は軍の幹部を含む少なくとも7500人を拘束して調べていますが、トルコのメディアは、首謀者として拘束された前の空軍司令官が関与を否定したと伝え、政権が非難するイスラム組織「ギュレン教団」との関わりなどは明らかにされていません。
トルコ政府は、15日に起きたクーデター未遂に関わった疑いで軍の幹部や兵士、それに裁判官や検察官など司法関係者ら少なくとも7500人を拘束し、イスラム組織「ギュレン教団」との関わりなどを調べています。また警察官を中心に公務員1万人余りを解任し、対立する勢力を一掃する構えを見せるとともに、すべての公務員の休暇の取得を停止させるなど、政府内の引き締めを図っています。さらに、エルドアン大統領は国内で死刑の復活を求める声が高まっているとして、刑の復活を検討すべきだという考えも示しています。
しかし、アメリカにいるギュレン教団の指導者はクーデター未遂への関与を強く否定しているほか、トルコの民間のテレビ局は18日、政府がクーデター未遂の首謀者だとして身柄を拘束したオズトゥルク前空軍司令官が、検察の調べに対しクーデター未遂への関与を否定したと伝えました。
トルコ政府による強権的な取締りには国内外で懸念が広がっていて、18日に開かれたEU=ヨーロッパ連合の外相会議では、人権の尊重や法の支配を求める声明が発表されています。

トルコ国内からも懸念の声

トルコ政府が、軍や司法機関の関係者など少なくとも7500人を拘束して、捜査を進めていることなどについて、トルコ国内からは懸念の声が上がっています。首都アンカラの公園にいた学生は「エルドアン大統領は、彼の利益になるようこのクーデター未遂を利用するに違いありません。この国の民主主義にとって悪い方向に進むでしょう」と話していました。また別の学生は「権威主義的な大統領が勝利を収めた形になり、今後何が起こるか心配する人もいます」と話していました。アンカラでは、政府に批判的な意見を持っていても、それを口にすることをためらう人も多く、「エルドアン大統領や与党の批判をすると、目をつけられて仕事を見つけるのも難しくなります」と話す人もいました。
また、最大野党、CHP=共和人民党のイェルマズ副党首は「政府はこれまで表現の自由や集会の自由を制限し、多くの人たちを拘束してきた」としたうえで、「クーデター未遂は、政権にとって、自分たちの思いどおりに物事を進めていくまたとないチャンスでもある」と述べ、今後の政権の動きを注視していく必要があるとの考えを示しました。

情報機関本部攻撃の映像

トルコの情報機関は18日、首都アンカラにある本部庁舎が、クーデター未遂の際に軍の一部の攻撃を受けた当時の様子だとする映像を公開しました。映像は、庁舎に備え付けられた複数の監視カメラが15日に記録したもので、正面ゲートなど数か所がヘリコプターからとされる激しい銃撃を受ける様子や、これに情報機関の職員たちが空に向けて銃を発砲して応戦する様子が捉えられています。

爆撃された議会内部の被害

NHKの取材班は18日、日本のメディアとしては初めて、軍の一部の攻撃を受けた議会内部の取材許可を得ました。
首都アンカラにあるトルコ議会の正面の出入り口から近い首相の執務室近くの廊下は、上空からの爆撃で天井や壁が崩れ落ちていました。建物の至る所でガラスが割れたり扉が外れたりしていて、衝撃の大きさを物語っています。もう1か所、庭にも爆弾が落ち、そこから100メートルほど離れた一般の人が出入りする建物は、飛び散った破片でできたとみられる無数の痕が残り、ガラスの部分はほぼ完全に壊れています。15日、クーデターの動きが出たことを受けて、与党AKP=公正発展党の議員らが議会に集まって、国民にどう呼びかけるかなどを話し合っていたということです。軍の一部が戦闘機やヘリコプターで上空から攻撃を始めたのは、こうした動きを阻止するためだったとみられています。一連の攻撃で、議会の敷地内では警戒に当たっていた警察官12人がけがをしたということです。また、議会の周辺では、戦車が街路樹や車などを踏みつけながら移動して激しい銃撃戦も起きたことから、市民を含む多くの死傷者が出ています。アンカラ市内では、18日もクーデター未遂に関連するとみられる発砲事件が起きるなど、治安が不安定な状況が続いており、議会の敷地の出入り口周辺では武装した警察官による厳しい警戒態勢が続いていました。