ソフトバンクグループは半導体設計の英アーム・ホールディングスを3兆3000億円で買収して、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」関連事業を拡大する。主力の携帯電話事業と並ぶ新たな収益の柱に育てる。アーム社の設計仕様に基づくCPU(中央演算処理装置)と通信サービスなどの相乗効果も見込む。
買収額はソフトバンクグループが過去に手掛けた英ボーダフォン日本法人や米携帯電話子会社スプリントの規模を上回る。巨額を投じた背景にはソフトバンクグループの孫正義社長のIoT事業への期待がある。
ソフトバンクグループの孫社長は「2040年には(ネットにつながる機器を)1人1000個持つ時代が来る」とみている。自動車や家電、医療機器などネットにつながる機器は世界中で2020年に500億台と現在の2倍に増えるとの見方もあり、機器に搭載するCPUの需要は増えそうだ。
アーム社はCPUの設計に特化。低消費電力などを強みにスマホ向けのCPU仕様で業界標準を握る。2015年12月期の売上高は9億6830万ポンド。設計した半導体のライセンス収入などをメーカーから受け取っている。
スマホなど多くのモバイル機器に搭載されるCPUはアーム社の仕様に基づいている。ソフトバンクグループはアーム社を傘下に収めることで多様な機器に搭載されるCPUのライセンス収入などを得られる。ネットにつながる新しい機器を設計・開発する機会も得られる。
日本や米国の子会社が持つ携帯電話網を活用すれば、つながる車(コネクテッドカー)やネットにつながる家電を開発するメーカーと新たな通信サービスを共同開発しやすくなる。
10年前に携帯電話事業に参入し、ここ数年は人工知能(AI)の開発にも注力してきた。IoTで携帯電話やAIなど様々な既存事業をつなぎ、新たなサービスや市場の創出をめざす。(大和田尚孝)