◆一部発言が墨塗り・削除されていた議事録
情報開示請求した一連の資料はその後、半年以上をかけてさみだれ式に開示されていった。だが、その議事録も100%納得できる内容ではなかった。
たとえば、JSCの河野一郎理事長や、有識者会議の佐藤禎一委員長、デザインコンペの安藤忠雄審査委員長ら一部のメンバーを除いて、発言者名は「【◎委員】」と記されているだけで、いったい誰が話した内容か分からない作りになっていた。過去にも開示請求で、議事録を取得したことは何度もあるが、こんな議事録を見たのは初めてだった。
JSCの担当者は、「うちでは議事録はこういう作りをしている。これしかない」と説明した。また、JSCは「率直な意見の表明が困難になる」との理由で、「特定の施設に関する特定の委員の率直な意見」とされた一部の発言は墨塗りで開示していた。
いずれも納得できる理由ではなかったが、計画が白紙撤回された後の2015年8月になって、JSCのさらにとんでもない行為が発覚する。新国立競技場問題の経緯を検証していた自民党の行政改革推進本部が一連の有識者会議のうち一部の議事録を入手し、報道陣に公開した。そこで私が独自に入手していた議事録と見比べたところ、私の議事録にはない発言が、自民党の入手分にはあることが分かった。
それは、森喜朗元首相が、国際デザインコンペで選ばれたザハ・ハディドさんらのデザインについて、「正直言うと、神宮のところに宇宙から何かが降りてきたっていう感じ。(3位の案も)カキフライのフライのないカキか、生ガキがいるっていう感じがして、このあたりがちょっと違和感を(覚えた)」などと、批判的に評価していた部分だった。
JSCの広報室に問い合わせると、議事録からこうした発言を削除して開示していたことをあっさりと認め、「『議事録』とは、出席者の発言を一字一句書き起こした『発言録』から、読みやすいようにポイントをまとめたもの。自民党の行革本部には『発言録』を提出した」と説明した。さらに森元首相の発言を削除した理由は、「意図的なものではない。議論のポイントではないと判断した」と述べた。
開いた口がふさがらなかった。確かに今回の森元首相の発言は、たとえばコンペの結果を覆すほど重要な発言だった訳ではないかもしれない。だが、問題なのは、こうしたJSCの行為が、「議事録」の正当性や信頼を揺るがす行為であるということだ。政策を決定する際、いったいどんな意思決定のプロセスがあったのか、それを後の人が検証するために議事録は残されるのである。その内容を、当事者が勝手に変更してもよい訳がない。そんなことを許していたら、自分たちにとって都合の悪いことを後から改ざんする事態だって起きてしまう。
加えて、開示当時の「これしかない」という説明は何だったのか。そもそも私は開示請求の際に、「議事録をはじめとする一切の文書」と求めていた。この点を重ねて広報室に問うと、「『発言録』は私的なメモの扱いだから請求の対象にならない」との回答だった。
うんざりした。今回のケースは「情報操作」と言ってもよいくらいのひどいものだ。
* * *
本書は、これからまさに正念場を迎える新国立競技場建設についての問題提起であるとともに、森本さんの記者魂があふれて読みごたえあるノンフィクションでもあります。ご興味を持たれたかたはぜひご一読いただけると幸いです。
第3回は12月21日(月)に公開予定です。
★がついた記事は無料会員限定
コメントを書く
コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください