20代後半のとき行方が分からなくなり、19年にわたって賃金も支払われないまま、畜舎で奴隷のように働かされていた忠清北道清州市の知的障害者Aさん(47)が、ようやく家族の元に帰ることができた。
Aさんは今月14日午後9時ごろ、警察官に案内されて、清州市興徳区五松邑に住む母親(77)、姉(51)など家族と再会を果たした。母親も知的障害があるが、すっかり中年になったAさんの姿を見て、すぐに息子だと気付き、大声を上げて泣きながら顔をなでた。知らせを聞いて駆け付けた近所の人たちも、喜びと不憫に思う気持ちが入り交じったかのように、あちこちで涙を流した。警察は当初、極度の不安感や回避性パーソナリティ障害を抱えるAさんを病院に入院させる予定だったが、直系の保護者の存在が明確でないため、ひとまず家族と再会させることを決めた。
警察は集落の住民たちに連絡を取り、Aさんを母親の住む家まで案内した。互いに意思表示が難しいAさんと母親、姉は、無言のままぎゅっと抱きしめ、しばらくの間むせび泣いた。近所のある住民が母親に「息子さんが帰ってきたのだから、7年もできずじまいだった古希祝いをしないと」言うと、母親はようやくうなずき、うれしそうな表情を見せた。
Aさんの家族と近所の住民たちはスイカを分け合って食べ、1時間ほど歓談した。近所の住民たちが帰った後、Aさんは母親の懐に抱かれて眠りに就いた。里長(自治会長に相当)のJさんは「行方不明になっていたAさんが19年ぶりに無事戻ってきて、集落はお祭りムードだ。Aさんの家族が早く安定を取り戻せるよう手助けしていきたい」と語った。
Aさんの父親は、Aさんが幼いころに死亡し、その後一家は暮らし向きがよくない中、近所の人たちの支援を受けながら生活してきたという。母親が住む家と、Aさんが働かされていた畜舎(清州市清原区梧倉邑)の距離は15キロにすぎなかった。車で20分もかからない所にいたにもかかわらず、再会までに20年近い歳月を要したことになる。警察は「Aさんに対し被害者として事情聴取を行う一方、畜舎の主を呼んで、賃金の搾取や虐待の有無などについて集中的に調べを進め、逮捕の有無などを決める方針だ」と話した。