【イスタンブール=佐野彰洋】トルコ政府は17日、軍の一部によるクーデター未遂に加わった軍将校ら約6000人をこれまでに拘束したと発表した。裁判官や検察官の免職、拘束にも乗り出しており、事件を利用し、政権の意に沿わない世俗派などへの弾圧を強めつつある。エルドアン大統領は政敵で米国に住むイスラム教指導者が事件に関与したと主張し、米政府に引き渡しを求めた。
トルコ政府が拘束した軍人のなかには、空軍のアクン・オズトゥルク前司令官も含まれ、首謀者の可能性があると地元メディアが報じた。政府は2700人超の裁判官らの免職と拘束も指示。人権問題などを巡りエルドアン氏の意に沿わない判決を下した裁判官も含まれるもようだ。
「すべての国家機関からウイルスを一掃する」。エルドアン氏は17日、最大都市イスタンブールで開かれた犠牲者の葬儀で強調した。真相解明と処罰徹底を口実に軍や司法の反対勢力を一掃する狙いとの見方が出ている。
16日にはクーデターの黒幕としてイスラム教指導者のギュレン師を糾弾し、米政府に引き渡しを求めた。同師は世俗主義との調和を目指し、イスラム保守の公正発展党を率いるエルドアン氏と対立する。ケリー米国務長官は、滞在先のルクセンブルクで記者団に「トルコが合理的な証拠を示せば、米国は適切に判断する」と述べた。
ギュレン師は同日、米紙の取材に対して関与を否定。「軍事的介入では民主主義は達成されない」とクーデターの試みを非難した。
軍の一部は15日夜、クーデターを試み、イスタンブールの国際空港などを一時占拠、首都アンカラの国会議事堂を攻撃した。政府は与党支持者らを動員して抵抗し、クーデター勢力を鎮圧した。16日夜にはイスタンブールの広場に何千人もの与党支持者が集まり、「民主主義の勝利だ」と歓喜の声を上げた。エルドアン氏は街頭で演説し、「軍は我々の側にあり、私が最高司令官だ」と実権掌握を誇示した。
トルコ中央銀行は17日、金融市場の安定に向け無制限の流動性供給を行うと発表した。手数料免除などでも銀行を支援する。トルコ経済の先行きに懸念が広がる中、市場の不安払拭につなげる。