■ はじめに
タワーマジックはとても面白いゲームです。
普通にプレイするのもとても面白いのですが、自作のタワーを作るのが特に面白く、それが良いバランスで機能したときにはなんともいえない嬉しさがあります。
ただ、ルールが異なるので通常のMTGと同じように考えているとうまくバランスがとれません。
特に、土地関係のルールが大きく異なっているので、土地関係のカードや色拘束の強いカードがうまく機能しないことが多くなります。
そこで、今回はタワーマジックにおけるダブルシンボルのバランスについて考えてみたいと思います。
■ 前提とするルールやタワー
前提とするルールやタワーは以下の通りです。
・そのカードの色に対応する基本土地タイプを持つ基本土地(2つ以上基本土地タイプを持つ場合、基本でない土地)として全てのカードを土地としてプレイできる
・アーティファクトは無色マナを発生させる基本でない土地で、土地としてプレイした場合アーティファクトというタイプを持たない
■ ダブルシンボルをプレイできるようになるのは何ターン後か
各色のカードは同じ比率で入っているとすると、アーティファクト等の無色カードが全体に対してどの程度の割合で入っているのかということが重要になります。
各色のカードが均等に投入されている場合、無色カードの枚数をc、全体の枚数をDとすると、
(D-c)/5
が、それぞれの色のカードの枚数ですから、期待値の式のnをこれと置き換えた
(D-c)/5*(6+t)/D
というのが、tターン目までに引いたカード全てに含まれる特定の色のカードの総数の期待値になります。
これが土地2枚とプレイするカード1枚の合計である3であるとき、手札にある1枚のダブルシンボルをプレイできる最速ターンの平均値tが求まります。
(D-c)/5*(6+t)/D = 3
をtについて解くと、
t = (9D+6c)/(D-c)
となります。
では、具体的に計算してみましょう。
600枚のタワーで、無色のカードが100枚のとき、ダブルシンボルは何ターン目にプレイできるかを計算します。
D=600、c=100なので
t=(9*600+6*100)/(600-100)
=12
となり、同色のカードを3枚引けるのは平均的には12ターン目になるということがわかります。
■ ダブルシンボルのカードはどの程度の割合で投入すべきか
上述のタワーの場合、12ターン目に各色丁度3枚ずつ引ける計算になるので、全色含めて5/(12+6)の割合で投入すると、計算上はギリギリ全てプレイできます。
ただ、現実的に考えると高確率でプレイしませんし、できない事も多いと思います。
その要因として、実際にはもっと展開する土地を絞るということや、ダブルシンボルの呪文以外にも対戦相手の行動に逐一対処しなければならないということ、引きに偏りが出ることなどがあります。
従って、実際には5/18よりは小さくすべきです。
これを一般化すると、少なくとも
5/((9D+6c)/(D-c)+6)
よりも大きい割合で投入することは避けるべき、ということがいえます。
(もちろん各色のカードが均等に投入されない場合は異なります。)
■ ダブルシンボルのカードはどの程度のアドバンテージを生み出すのが適正か
ダブルシンボルのカードを使うためには、その色のカードを2枚土地として使わなければなりません。
一方、ダブルシンボルを土地にした場合、土地として使われる2枚のカードを逆に使うことができます。
これらを比較すると、土地としてプレイされる2枚のカードが生み出すカードアドバンテージ以上のカードアドバンテージを生み出さない限り、ダブルシンボルのカードはプレイされないということがいえます。
(前者は場に残る土地枚数が後者より多いというメリットがありますが、カードアドバンテージ面での比較なので盤面に大きな影響を与えない土地はとりあえず無視します。)
そこで、タワーのそれぞれのカードが生み出すカードアドバンテージの平均値を求め、その二倍を少し越える程度のアドバンテージが得られるダブルシンボルのカードを投入するのが良いです。
例えば、タワー全体の平均カードアドバンテージが1である超タイトなタワーだとすると、《放逐/Dismiss》のようなカードはダブルシンボルとして比較的適性なレベルのカードだといえます。
ただしここで問題になるのは、どのようにして各カードから得られる期待カードアドバンテージを評価するか、ということです。
クリーチャーの場合は、基本サイズを設定して、そのサイズのクリーチャー何体分の働きをするかによってある程度考慮する事が出来ますが、それ以外の呪文の評価は非常に難しいです。
エンチャントはタイミングによっては相手に2:1交換されてしまいますし、全体破壊呪文はどの程度のアドバンテージになるのかその状況になってみないとよくわかりません。
結局は、エンチャントは1〜1.5、全体除去は2〜4というように感覚的、経験的に評価する以外ありません。
より厳密にやろうと思ったら、何度かタワーで遊んだ時にそのカードが生み出したアドバンテージの統計をとって、その平均値を使うということもできますが、手間などを考えるとあまり現実的ではありません。