顔の怖い後輩、鬼ころし君。
組織に入って以来、あちこちでトラブルを起こしてくれます。
ある時、鬼ころし君の運転で現場に向かう途中。
キキーッ!
ドンッ!
ぐはっ!
オカマ掘られました。
「せせせ先輩!だだ大丈夫ですか?」
お、おお。何とか。。。
とにかく路肩に寄せろ。
ストップ!ストップ!
降りろ!俺が寄せる!
顔恐いクセに度胸がないんだよなー
私は鬼ころし君を降ろし、車を路肩に寄せます。
鬼ころし君は突っ込んできた車をボーッと見ています。
おい!ボケッとすんな!
危ないだろ!
その車も寄せさせろ!
ケガがないか確認しろよ!
私は、とにかく落ち着こうとタバコを咥えながら車のダッシュボードにある保険屋の連絡先へ電話します。
そして現場に行けない事と指示を出し、ゆっくり煙を吐き出します。
すると一向に動かない突っ込んできた車と車の真横で窓ガラスを叩く鬼ころし君に気づきました。
何やってんだ?
私は車に近づくと
中には若い女の子。
ハンドルをギュッと握って震えています。
やれやれ。初めての事故かな?
オロオロしている鬼ころし君を下がらせ声を掛けます。
何してるの?
危ないから車を寄せて。
運転代わるから降りてきなさい。
「…ごめんなさい。ごめんなさい。弁償しますから。勘弁してください。」
え?何聞こえない。
いいから降りてきなさい。
私がドアを開けると
「…すみません…すみません…わざとじゃないんです…必ず弁償しますから…」
おいおい勘違いしてるぞ…
「先輩。応援呼びましょうか?」
ぬっと割って入る鬼ころし君。
「イヤーッ!助けてーッ!」
その声にビクッとなりドアから離れてしまう私と鬼ころし君。
女の子は
「警察を呼びます!」
と、叫びました。
バッと手を伸ばして、ロックされるドア!
鬼ころし君。
このバカ最悪のタイミングで声かけてきたね。。。
鬼ころし君を振り返ると
どこからか現れた近所の住民らしきモブABCに取り押さえられています。。。
しかも弱いのかよ。。。
いつの間にか周囲には人だかり。
こうなったら私もお手上げです。
文字通り手を上げ、無抵抗を示しました。
サイレンが近づく音がします。
・・・
あ~疲れた。
オカマ掘られたのに警察に捕まるなんて悪の組織にあるまじき失態だよ。
警官に、世界征服なんていい歳になって恥ずかしくないのか!なんて言われましたよ。
うるせーや!恥ずかしいに決まってんだろ!
捕まったのかって?
もちろん捕まりましたよ。
悪の組織ですから。
武器めっちゃ車に乗ってたし。
夕飯までに帰らないと怒られるので脱走しましたけど。
ついでに鬼ころし君拾って。
アイツといるとろくな目に合わない。
現場のみんなに怒られるし減給かなぁ。
現場に穴あいちゃったな。
・・・
後日、女の子から謝罪の手紙が来ました。
勘違いしてごめんなさい。
世界征服頑張って下さい。
部下の方もすいませんでした。
部下じゃねーし!