最初に望遠鏡や顕微鏡を発明した人
最初に望遠鏡をつくった人というとガリレオ・ガリレイ、最初に顕微鏡をつくった人というとロバート・フックなどを思い浮かべるが、正確には最初に観察して記録を残した人というべきであろう。
望遠鏡は、1604年にオランダ、ミデルブルフの眼鏡職人サハリアス・ヤンセンがイタリア人の所有の1590年と書かれた望遠鏡を真似て作ったという。その後、ミッテルブルフの眼鏡職人ハンス・リッペルスハイが再度発明し特許を申請したという。ガリレオはこれを知った後、1609年5月に1日で作った望遠鏡を初めて天体に向けて観測結果を記録した。ちなみに双眼鏡を発見したのもハンス・リッペルスハイである。
最初の顕微鏡は1590年、オランダのミデルブルフで眼鏡製造者サハリアス・ヤンセンと父のハンス・ヤンセンが作った。他に、同じ眼鏡製造者であるハンス・リッペルスハイ(望遠鏡を最初に作ったといわれる)が顕微鏡も最初に作ったとする説もある。
ただし、彼らがこれを使って何か意味のある観察をしたという記録はない。 ガリレオ・ガリレイは、この顕微鏡を改良し昆虫の複眼を描いている。"microscope" という名称は、ガリレオの友人だった ジョバンニ・ファベールが1625年に命名したという。
ガリレオ自身は顕微鏡を "occhiolino"(小さな目)と呼んでいた。 最初に細胞の構造の詳細まで顕微鏡で観察しようとしたのは ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナで、1644年に L'ochio della mosca(ハエの眼)を著している。
1660年代以前、イタリア、オランダ、イギリスでは顕微鏡は単なる珍しい器具でしかなかった。イタリアの マルチェロ・マルピーギ は顕微鏡を使い、肺を手始めとして生物学的構造の分析を開始した。1665年、ロバート・フックは観察結果を詳細にスケッチして発刊した Micrographia(顕微鏡図譜)が、その印象的なイラストレーションで大きな衝撃を与えた。
その後、さまざまな顕微鏡や望遠鏡が作られ、科学技術の進歩に寄与してきたのは枚挙に暇がない。今回、また新しい顕微鏡ができた。海中に生きるサンゴのそのままの姿を拡大撮影できる画期的な水中顕微鏡である。開発した、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のアンドリュー・ムレン氏とタリ・トレイビッツ氏は、海底顕微鏡(BUM)と名付けた。
このBUMを使って、研究チームはおそらくこれまで誰も記録したことがないであろうサンゴの様子を観察することに成功した。チームは紅海のサンゴ礁に顕微鏡を設置し、一晩中カメラを回した。翌日回収したカメラの映像を再生してみると、そこには隣同士のポリプが時々互いに近づいて口を押し付け合っている様子が撮影されていた。
サンゴの「キス」を撮影、新開発の海底顕微鏡で
水中顕微鏡によって、広大なサンゴ礁を作り上げている極小のポリプの様子を観察できるようになった。
巨大なサンゴ礁を形成するサンゴは、間近で見ても十分に美しい生物だ。さらによく見ると、それぞれはイソギンチャクのような触手を持つポリプと呼ばれる構造で、体の大きさはわずか数ミリ程度である。
そしてサンゴに栄養を供給する褐虫藻や、サンゴの表面を覆って窒息させてしまう細菌やウイルスはもっと小さい。サンゴ礁の世界がどのように機能しているのかを本当に理解するには、さらに至近から観察してみる必要がある。
そこで、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のアンドリュー・ムレン氏とタリ・トレイビッツ氏は、海中に生きるサンゴのそのままの姿を拡大撮影できる画期的な水中顕微鏡を開発、海底顕微鏡(BUM)と名付けた。
このBUMを使って、研究チームはおそらくこれまで誰も記録したことがないであろうサンゴの様子を観察することに成功した。チームは紅海のサンゴ礁に顕微鏡を設置し、一晩中カメラを回した。翌日回収したカメラの映像を再生してみると、そこには隣同士のポリプが時々互いに近づいて口を押し付け合っている様子が撮影されていた。
研究チームはこの行動を「ポリプのキス」と呼ぶ。何らかの理由で、食べ物や栄養を与えあっているのではないかと推測している。
自然のままの微細な生態を
BUMは、前腕ほどの大きさの筒にカメラ、レンズ、6個の明るいLEDライトを収めたもので、コンピュータで制御される。レンズは液体に包まれた柔軟性のある膜で、人間の目のような動きをする。液体の圧力を変えることで膜の形をすばやく正確に調節し、対象物に焦点を定める。
通常、研究者はサンゴのサンプルを研究室へ持ち帰って、顕微鏡で観察する。しかし、繊細なサンゴを移動中に傷つける恐れがあるし、複雑で常に変化する海中の環境を研究室で再現することは不可能だ。
BUMは、互いにわずか数ミクロンしか離れていない物体でもとらえられるので、サンゴのポリプだけでなく、褐虫藻の細胞まで撮影できる。ムレン氏とトレイビッツ氏は、サンゴとBUMの距離を6センチまで近づけることができるようにレンズの位置を調節した。
撮影された映像には、他にもサンゴ同士が協調した動きを見せる場面があった。サンゴは、食べ物の大部分を褐虫藻から得ているが、毒のある刺胞でプランクトンを捕まえて食べることもある。ムレン氏とトレイビッツ氏は、1匹のポリプが食べきれないほどのプランクトンを捕まえると、周囲のポリプと触手を絡み合わせて一緒に獲物を消化していることに気付いた。
新しく開発された水中顕微鏡は、人間の目の動きに似せた膜で、微小なサンゴのポリプに焦点を絞る。
サンゴ大量死の手がかりも
だが、サンゴ礁の中はいつも仲良く穏やかなわけではない。あるサンゴの集団を別のサンゴのそばに置くと、戦いが始まる様子もBUMがとらえている。異なる種のサンゴが隣同士になると、彼らは白い網を放出する。これは「隔膜糸」というサンゴの消化器官の一部で、刺胞が無数に詰まっている。自分のはらわたを文字通り相手にぶちまけて攻撃し、ライバルを倒す。この種間競争は、サンゴの研究者や愛好家の間ではよく知られた行動である。
サンゴの敵はそれだけではない。海水温が上がるとサンゴは共生していた褐虫藻を外へ排出する。するとエネルギーの供給元が失われ、色が白くなる白化現象を起こす。この状態になるとサンゴは弱体化し、そこへ褐虫藻とは別の芝状の藻が増殖してあっという間にサンゴを覆いつくしてしまう。
ここまでは既に知られていたことだが、BUMによって、芝状の藻が実際にはポリプの上に成長するのではなく、その周囲や隙間に入り込んで、ハチの巣のような網目を形成することがわかった。白化したサンゴの中で、どのようにして藻がサンゴを圧倒していくのか、そしてサンゴがどのように死んでいくのかを理解する上で重要な手がかりとなる。
サンゴ礁は、ポリプと呼ばれる極小の動物生物によって形成されている。海の大部分が肉眼では見えない微生物に支配されていることがわかってきた今、BUMのようなテクノロジーの登場は、願ってもないタイミングだ。微生物は私たちの吸い込む酸素のほとんどを作り出し、タンカー事故で流出した汚染物質を分解し、サンゴ礁の命運を左右する。
2002年、ある海洋生物学者は次のように言った。本来生息している自然な環境の中で、これらの微生物を観察できる顕微鏡が開発されれば、「ガリレオの望遠鏡が天文学へ与えたのと同じ影響を、微生物生態学の分野へ与えるだろう」
顕微鏡の発明とその歴史
顕微鏡(けんびきょう)とは、光学的もしくは電子的な技術を用いることによって、微小な物体を視覚的に拡大し、肉眼で見える大きさにする装置である。単に顕微鏡というと、光学顕微鏡を指すことが多い。
光学顕微鏡は眼鏡屋のヤンセン父子によって発明された。その後、顕微鏡は科学の様々な分野でこれまで多大な貢献をしてきた。その中で様々な改良を受け、また新たな形式のものも作られ、現在も随所に使用されている。顕微鏡を使用する技術のことを顕微鏡法、検鏡法という。また、試料を顕微鏡で観察できる状態にしたものをプレパラートという。
最初の顕微鏡は1590年、オランダのミデルブルフで眼鏡製造者サハリアス・ヤンセンと父のハンス・ヤンセンが作った。他に、同じ眼鏡製造者であるハンス・リッペルスハイ(望遠鏡を最初に作ったといわれる)が顕微鏡も最初に作ったとする説もある。ただし、彼らがこれを使って何か意味のある観察をしたという記録はない。
ガリレオ・ガリレイは、この顕微鏡を改良し昆虫の複眼を描いている。"microscope" という名称は、ガリレオの友人だった ジョバンニ・ファベールが1625年に命名したという。ガリレオ自身は顕微鏡を "occhiolino"(小さな目)と呼んでいた。
最初に細胞の構造の詳細まで顕微鏡で観察しようとしたのは ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナで、1644年に L'ochio della mosca(ハエの眼)を著している。
1660年代以前、イタリア、オランダ、イギリスでは顕微鏡は単なる珍しい器具でしかなかった。イタリアの マルチェロ・マルピーギ は顕微鏡を使い、肺を手始めとして生物学的構造の分析を開始した。1665年、ロバート・フックが発刊した Micrographia(顕微鏡図譜)は、その印象的なイラストレーションで大きな衝撃を与えた。顕微鏡による生物研究に多大な進歩をもたらしたアントニ・ファン・レーウェンフックは、微生物(1674年)や精子(1677年)を発見した。
彼は生涯を顕微鏡の改良に費やし、最終的には約300倍の倍率の顕微鏡を作っている。ただし、これは単レンズのものであり、顕微鏡そのものの改良につながってはいない。
微生物学の父「アントニ・ファン・レーウェンフック」
アントーニ・ファン・レーウェンフック(Antonie van Leeuwenhoek、1632年10月24日 - 1723年8月26日)はオランダの商人、科学者、顕微鏡観察マニア。歴史上はじめて顕微鏡を使って微生物を観察し、「微生物学の父」とも称せられる。
レーウェンフックは専門的教育を受けていなかったが、自作の顕微鏡で大量の生物学上の発見をした。織物商だった時代に洋服生地の品質の判定のために虫眼鏡を使って生地の細部を見ていたのでレンズの取り扱いの実務経験は豊富であった。
彼の顕微鏡は、径1mm程度の球形のレンズを、金属板の中央にはめ込んだだけの単眼式のものであった。資料を載せる針はねじ式に微調整できるようになっていた。生涯に作った顕微鏡の数は500にもなるとも言われる。それらを用いて身近なものを覗いて回り、様々なものを見て感動していた。この中には、当時の生物学専門家には知られていなかった新発見が多数含まれていたが、彼はそれらの成果を発表する場を持たなかった。
レーウェンフックの観察をロンドン王立協会に紹介したのは、デルフトの解剖学者ライネル・デ・グラーフが送った1673年の書簡が初めである。そのすぐ後にオランダの政治家・文筆家であるコンスタンティン・ホイヘンス(クリスティアーン・ホイヘンスの父)がロバート・フックに個人的に紹介の手紙を送っている。この年以降、継続的に王立協会に観察記録を送り続けた。彼は学問がなかったため、手紙の報告は日常的なオランダ語によるものであった。これを実験担当のフックが認め、ラテン語訳してレーウェンフック全集として発刊した。また、1680年に王立協会会員としても迎えられた。
1674年、バーケルス湖から採取した水を観察していたレーウェンフックはこれまで誰も報告したことのない奇妙な動く物体を発見。生物であるという証拠はなかったが、微小動物(animalcule、アニマルクル)と名付けた。このとき顕微鏡の倍率は約200倍に達していた。
しかし、肉眼で見えない小さな生物を実際に観察したのはレーウェンフックが初めてではなく、レンズを用いて小さな生物が観察できることは彼が生まれるよりも100年以上前から一部の人達の間では知られていた。1508年の記録ではヴェローナのアレクサンダー・ベネディクトゥスが「皮膚やチーズに小さな虫がいる」と記している。
彼はその強い好奇心で様々なものを覗き、それによって新しいものを発見したが、それだけではなく、鋭く批判的な観察眼で、観察したものを分析したことも重要である。当時、微細な昆虫は植物種子などから自然発生するものと考えられていたが、レーウェンフックは観察によりこれらの生物も親の産む卵から孵化することを発見した。また、彼が発見した微生物についても、砂粒との類推からその大きさを計算したり、微生物にも誕生や死があることを確認したりしている。また、赤血球が毛細血管を通ることを示した。
アントニ・ファン・レーウェンフックの顕微鏡
レーウェンフックは生涯500もの顕微鏡を作ったとされ、現在彼の真作とされる顕微鏡はヨーロッパの博物館に9個残されている。1980年代にレンズ精度が調査され、分解能は1.35μmから4μmであった。8個の顕微鏡のうち5個が100倍以上、最高の倍率は266倍であった。観察記録から推察するなら実際には500倍に達していただろうという説もある。レーウェンフックはレンズの製造技術を秘密にしたが、当初のガラスを研磨してレンズを作る製法から、細いガラス管をバーナーで加熱して先端を溶かして小球状にする方法を用いるようになったと推測されている。
レーウェンフックは次のような言葉を残している。
「前に述べた観察では、私は他の人達が思っているよりもずっと多くの時間を費やしましたが、それを楽しんでいます。なぜそんなに苦労するのですか?とか、何の役に立つのですか?とか聞く人には関心がありません。というのも、このような人々のために書いているのではなく、ただ学問をする人に対してだけ書いているからです。」
「彼らが、こんな発見が不可能だと、批判しているように、私は、自分の書いたことが他の人に受け入れられないことを心配してはいます。しかし、私はこのような反論に邪魔されません。無知なる人々のあいだでは、私のことを魔法使いだと言っていますし、私がこの世には存在しない物を見せているとも言っています。しかし彼らは許させるべきでしょう、彼らはよく知らないからです。」
「男の精子に生きた生命体があるということを大学全体として信じない所があります。しかし、このことは私は気にしていません。私は自分が正しいということをよく知っているからです。」
参考 National Geographic news: サンゴのキスを撮影、新開発の海底顕微鏡
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