敗北後の民進党 甘い総括ではいけない
先の参院選で敗北した民進党には今、「善戦できた」といった安堵(あんど)感が広がっているようだ。しかし、それは自らに甘過ぎる見方ではないだろうか。同党は来月上旬に選挙総括をまとめる予定だが、ほっとしているだけでは次の展望は開けない。
同党は今回、前回の2倍近い32議席を得て、退潮傾向には一応歯止めをかけた。特に全国32の1人区(改選数1の選挙区)では、民進、共産など野党4党で候補者を一本化して、11議席を獲得。前回、1人区では野党が2議席しか取れなかったことを考えれば、野党共闘が効果を上げたのは事実だ。
野党間の接着剤役を果たしたのは学者や市民団体、学生グループなどで作る各地の「市民連合」だった。民進党の岡田克也代表が「新しい日本の民主主義が始まった」と語ったように、有権者側から新たな動きが生まれたことも歓迎したい。
だが裏を返せば、共闘は野党第1党の民進党が主導したわけではないということだ。
選挙中、「旧民主党政権には失望した」「もう政権は任せられない」という有権者の声をどれだけ聞いただろう。党名を変更しても民進党への失望感はあまり変わらなかった。
消えない失望感が安倍政権への不満の受け皿になりきれなかった大きな要因だったと思える。より党の力が表れる比例代表では自民党は前回よりも増やしているのが現実だ。
岡田氏は今後の国会対応で野党共闘を一段と進めるという。ただし政権の選択となる衆院選での協力の仕方は、民進、共産両党が政権を組むのかどうかという問題に直結する。
「改憲勢力の3分の2阻止」という4党の合言葉だけでは、もはや通用しない。民進党内にも衆院選での共闘にはさらに反対論が強い。安全保障をはじめ共産党とどう政策を一致させるのか、具体的に求められるのは当然だろう。
野党共闘に関する党内の意見の違いは、今後、国会の大きなテーマとなる憲法改正問題に対する姿勢の違いと重なっている。共闘に慎重な姿勢を示す議員は総じて改憲に前向きだからだ。
民進党は民主党時代から、党内の基本的な考えの違いを解消しようとしてこなかった。まず、変えるべきはその体質である。
その意味で、9月末までに実施される予定の代表選は絶好の機会となる。岡田氏は再出馬するかどうかは「白紙」と繰り返しているが、やはり早急に態度を明らかにすべきである。そうしないと実際には党内の議論が始まらない。内向きに党内の亀裂を恐れるばかりでは有権者の信頼は到底、取り戻せない。