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1945年4月30日、総統地下壕でソ連軍の襲撃を待ち受ける中、アドルフ・ヒトラーは自らとその傍にいた新妻エヴァ・ブラウンの命を断った。
エヴァ・ブラウンが語られる際、ヒトラーと死を共にした情婦以上の扱いを受けることは少ない。世界史になんら意味合いを持たなかったという意味で、「歴史家を大いに失望させた」とすら記されることもある。
こうした政治への影響力の少なさにかかわらず、彼女の物語は興味を掻き立てる。ナチスの独裁者を心から愛した女性であり、その愛ゆえに苦しんだ。エヴァ・ブラウンとアドルフ・ヒトラーの物語は、シェイクスピアの悲劇に勝るとも劣らない悲恋である。愛した男性は、たまたま独裁者というだけだったのだ。
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10. ヒトラーを心から愛していた
まず疑問に浮かぶのはエヴァ・ブラウンの本音についてだ。17歳の少女が40歳の権力者と同棲しようとするのだから、そこに彼の魅力や容姿以外に打算があったと考えるのが普通だ。
だがエヴァにとっては真実の愛だったのだ。彼女がヒトラーに出会ったとき、彼が何者であったのかまったく知らなかった。2人の出会いは1930年のことだが、ヒトラーはようやく権力の途についたばかりであり、現在のように顔もまだ知られていなかった。何より、彼はエヴァに対して、「ヘル・ウォルフ」と偽名を名乗っている。
2人はすぐに惹かれあった。ヒトラーが一目惚れであったことは繰返し伝えられており、その日のうちに家まで送ると申し出たという。エヴァはこの申し出を断っているが、それから数日「ヘル・ウォルフ」について周囲に聞いていたそうだ。
ヒトラーは映画や食事などに彼女を誘うようになり、エヴァもまた未来の独裁者に魅了され、やがて2人は交際するようになる。友人との会話の中で、ヒトラーからの愛情について、「それに抗える人がいるかしら?」と話したという。
トレードマークのチョビヒゲと金切り声のヒトラーはまさに女ったらしであった。その正体を知らない少女もまた彼に魅了された。少なくともエヴァにとっては真実の愛だったのだろう。
9. ヒトラーには愛人がいた
エヴァとヒトラーの関係が始まったとき、ヒトラーはゲリ・ラウバルという女性と暮らしていた。ちなみに彼女は彼の姪であるが、様々な状況から、ヒトラーがゲリを世界の誰よりも愛しており、彼女もまた同じように感じていたであろうことが伺える。
1931年9月、ゲリは別の男性と結婚するためにウィーンに発つと告げ、ヒトラーを激怒させた。2人は一晩中激しく喧嘩し、その翌日銃で自殺したと思われるゲリの遺体が発見された。
エヴァは悲しみに打ちひしがれるヒトラーを慰める。両者の関係が本当に始まったのはこのときだ。しかし、この出来事にはもっと警戒すべきだったろう。エヴァと出会った当時、ヒトラーには愛人がおり、しかもその女性を自殺に追いやったのである。
このパターンはヒトラーの人生とその人間関係のすべてを貫いている。彼は8人の女性と関係を持ったが、その誰もが1度は自殺を試みているのだ。ヒトラーは付き合った女性におそろしいまでの影響力を発揮し、エヴァはこのせいで誰よりも苦しむことになる。
8. ヒトラーの浮気癖に悩む
ヒトラーは付き合った8人の女性を自殺するまで追い詰めているが、エヴァの前にいたのはたった1人だけで、あとはエヴァと交際したあとの出来事だ。つまりヒトラーには浮気癖があったということになる。
おそらく最も有名なのは、ドイツの銀幕のスターだったレナーテ・ミュラーとの情事だろう。ヒトラーは彼女を1930年代半ばのプロパガンダ映画に利用し、さらにそれ以外の要求もした。一説によると、レナーテはヒトラーが床に身を投げ出し、虐めてほしいと懇願したとアドルフ・ツィーグラーに話したことがあったようなのだ。レナーテはそれに応じて、ヒトラーを罵りつつ、鞭で打ちつけた。
ことの真偽についてはもはや知るすべもないが、2人に関係があったことは間違いない。そしてそれはエヴァの知るところとなった。1937年、レナーテは他のヒトラーの愛人と同じ道をたどる。窓から身を投げて、その生涯を終えた。
7. 銃で自殺未遂
エヴァは浮気を受け入れるような女性ではなかった。自分を差し置いてヒトラーが別の女と出歩いている姿を見ると打ちひしがれ、ある決意をした。
父親のピストルを手にすると、銃口を自分の心臓へ向け、発砲。ヒトラーが心から落胆したことといえば、彼女が知る限りはゲリの死しかなかった。もし彼がもう自分を愛さないのであれば、また同じ目に遭わせてやるつもりだったのだ。
しかし、銃弾は心臓をそれる。本当は死ぬつもりなどなかったのか、それとも人体の作りについてよく知らなかったのかどうかはわからないが、彼女はまだ生きていることを悟ると医師に連絡した。
一般的には、この行為はヒトラーの気を引くためのものと解釈されている。エヴァは医師にヒトラーにそのメッセージを伝えるよう頼む。はたしてそれは功を奏した。ヒトラーは花束を持って見舞いに訪れ、きちんと彼女を気にかけると約束したという。
6. ヒトラーは2人の関係を隠した
ヒトラーは恋人としては落第だったろう。エヴァ・ブラウンが自分の愛人であることは誰にも明かされなかった。関係を隠すために、ヒトラーは彼女に屈辱的な経験までさせている。
ヒトラーの旧友が自宅を訪れたときは、エヴァは自由にしていることが許された。しかし、それが政府の高官や大臣であった場合は、寝室の隣にあった私室での待機を命じ、誰の目にも触れさせなかった。私室で1人屈辱的な扱いを受けた彼女は、ヒトラーの同僚からは非常に不幸な女性だと評されていた。
また公然と侮辱されたこともある。彼と彼女の友人の前でこう言われたのだ。「高い知性を持つ男は、原始的でばかな女を娶るべきだ。いろいろあるというのに、女にまで仕事の邪魔をされたらどうか想像してみてくれ! 余暇の時間くらい平和が欲しいよ」と。
やがてヒトラーは言い訳を思いつく。そして彼女を「個人で雇っている秘書」と呼び、自由でいることを認めた。それでも、家に入るときには、人目につかないよう裏手のドアからこっそり入るよう強制した。
5. 睡眠薬で自殺未遂
1935年、エヴァは3ヶ月間ヒトラーから一言も口をきいてもらえなかった。ヒトラーの言葉は他の女に向けられていた。結局、エヴァは自らを撃っても何も変わらなかったことを悟らざるをえなかった。
そこで今度はどうにかして印象を残そうと決意。エヴァは日記にこう記している。「神さま、彼が今日も無視するのではないかと思うと恐ろしい。今度は睡眠薬を35錠飲むことにしました。きっと致死量でしょう。彼が誰かを呼ばない限りは」。そしてビンから薬を取り出し、すべて飲み干すと、闇が訪れるのを待った。
が、またもや自殺は未遂に終わった。そしてまたもやヒトラーは花束を持って彼女を見舞う。そこで許しを請い、日記によれば、彼女に家を買うと約束した。彼女はその生涯で3度自殺を試みている。これは2度目だ。そして3度目にはきちんとやり遂げている。
4. ヒトラーの家族から嫌われていた
ヒトラーの家には問題があった。彼の初恋の相手ゲリの母親アンゲラ・ラウバルである。ヒトラーはエヴァと付き合っている間ずっと元恋人の母親を自宅に住まわせていた。そして母親は娘を自殺に追いやった男が愛人と浮かれる姿を見ていた。
アンゲラはエヴァを嫌った。彼女への軽蔑を隠そうともしなかった。アンゲラは敵意をむき出しに、耳を貸す者なら誰にでもヒトラーの人生にエヴァという女の居場所などないと話して回った。
そうした中、エヴァは1人で読書や映画鑑賞をして過ごしていたようだ。また、食事中にヒトラーの写真を見つめ、一緒にいる場面を想像しては自らを慰めていた。
彼女にささやかな勝利が訪れたのは2度目の自殺のときだ。これを機にアンゲラは家を追い出され、エヴァはヒトラーと一緒に暮らすことを許された。
3. ヒトラーから離れることを拒絶
戦争が激化し、連合軍がドイツへ向けて侵攻すると、ナチスの敗北は誰の目にも明らかとなる。ソ連軍が接近し、やがてはヒトラーがその取り巻きとともに殺されることは時間の問題だった。
エヴァもまた危険だった。1943年、ドイツの全国青年指導者の妻だったヘンリエッテ・フォン・シーラッハは、ドイツを発ち、ヒトラーから離れるようエヴァを説得するが、彼女はそれを拒む。
ただ馬鹿正直だったわけではないだろう。ますます深刻化する状況においてもエヴァはそのまま留まり、1944年にヒトラーが死んだ場合は自分も死ぬつもりであると記した遺書をしたためている。「私が彼を1人にできるとでも? 私は最後まで彼と一緒にいます。考え抜いた末のことです。誰も私を止められないわ」と周囲に話していたという。
彼女はその言葉の通りに、ヒトラーと総統地下壕へ付き添い、彼の傍で死ぬ準備をした。
2. ヒトラーに義理の弟を処刑される
最後に残された数時間でさえもエヴァには悲劇が訪れている。総統地下壕からヒトラーはエヴァの義理の弟にあたるヘルマン・フェーゲラインを呼び出した。フェーゲラインはエヴァの妹と結婚した人物で、結婚式では他ならぬヒトラー本人が証人として署名している。
そのときフェーゲラインは酔って、スーツケースを抱えていた。ここには彼がベルリンで盗んだ品々が詰められており、そのままドイツから立ち去ろうとしていたのだ。妻でない見知らぬ女が側におり、ナチスの姿を認めると窓からさっと逃げていった。
彼は総統地下壕まで連行された。おり悪く、このときヒムラーはドイツを裏切り、降伏しようとしていた。ヒトラーは直感的に逃げた女はスパイだったと確信し、フェーゲラインもまた裏切り者だとみなすと処刑を命じた。
それから数時間後、エヴァとヒトラーは結婚した。婚姻届にサインする際、おそらく気持ちが昂ったためだろう、エヴァは姓をヒトラーにし忘れ、ブラウンの”B”を書いてしまった。
1. 人々はエヴァの死よりも犬の死を悼んだ
総統地下壕にはエヴァとヒトラー、数名の側近たちのほか、犬のブロンディもいた。エヴァにとってブロンディは憎しみの対象だった。エヴァが得られないヒトラーからの愛情を一身に受けており、愛した男からの冷たい仕打ちによるフラストレーションのはけ口にせざるをえなかった。ディナーテーブルの下に犬が潜り込むと、力一杯蹴りつけ、ヒトラーが困惑する姿を楽しんでいたという。
最後の瞬間でさえも、エヴァには犬ほどのスポットライトが当てられることもなかった。地下壕にいた看護師が数年後に語った話では、エヴァは「役に立たない少女」として誰からも軽んじられていたという。
一党が覚悟を決めると、ヒトラーはシアン化合物のカプセルをブロンディに与え、その効果を確かめた。犬が息を引き取ると、彼は悲嘆で呻き、声をかけようもないほどだった。だが、エヴァがカプセルを飲み込み絶命しても、誰1人として犬の死ほどの衝撃を受けていなかったと看護師は伝えている。
短く、悲劇的なエヴァ・ブラウンの人生は、それと同じほどの悲嘆によって幕を閉じる。彼女は総統地下壕に隠れ、愛されぬまま、自分が喜んで命を捧げられる男の後を追った。
via:10 Tragic Facts About Hitler’s Wife/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
それは幸せだったのかな
2. 匿名処理班
愛ってなんなんだろうと考えてしまう
状況からみると、ヒトラーを取り巻く女性たちは愛情深いと言うよりもとても依存的なように思えるのだけど
これも愛と呼ぶべきなんだろうか
3.
4.
5. 匿名処理班
なんというか…権力者の配偶者はだいたい可哀想な人生送るよな…。
6. 匿名処理班
ヒトラーは最後にエヴァを身代わりに殺して自分はトンズラしたんじゃ?
7.
8.
9.
10. 匿名処理班
幸せだったのかな?と考えちゃうけど、本人は幸せだったんだろうね。
周りの低評価は気にしなかったんじゃなかろうか。
17歳にこの混乱の時代にできた事はないんじゃないかな。ただ愛してた、それだけだったんだと思う。
11. 匿名処理班
独裁者とか関係なく大人と未成年の恋愛は上手くいかんと思うわ
絶対に対等になれないからな
12. 匿名処理班
うーん
文章読むに
ある種の洗脳というか精神支配を受けてた可能性もある気がする
何よりヒトラーは人の心を捉え支配するのが得意だ
13. 匿名処理班
そうだねえ…。命をかけて1人の男を愛し抜いたことは、当人にとっては幸せなのかも
でもやっぱ愛されたいよねれ
14. 匿名処理班
メンヘラの素養がある女性ばっかり
惹きつけるような部分があったんだろうな
ヒトラーに
15.
16. 匿名処理班
バルクホルン&ハルトマン
「俺達なんて美少女化されるという悲劇に巻き込まれたぞ」
17.
18. 匿名処理班
>1931年9月、ゲリは別の男性と結婚するためにウィーンに発つと告げ、
>ヒトラーを激怒させた。2人は一晩中激しく喧嘩し、
>その翌日銃で自殺したと思われるゲリの遺体が発見された。
犯人わかっちゃったんですけど
19. 匿名処理班
>ヒトラーが床に身を投げ出し、虐めてほしいと懇願した
>レナーテはそれに応じて、ヒトラーを罵りつつ、鞭で打ちつけた。
なにやってんだよwww
20. 匿名処理班
「帰ってきたヒトラー」映画版で、ドイツ全国行脚の旅費が尽きたヒトラーが似顔絵描きで小銭を稼ぐシーンがあり、見本として10の写真を元にした肖像画が掲げてあったな。
そして、それ以外にエーファのEの字すら出て来なかった。
可哀想に……フィクションですら……
21.
22. 匿名処理班
南米で生存説ってどこまでが本当なのかね?
それっぽい写真あったけどそっくりさんかもしれないし
23. 匿名処理班
>愛した男性は、たまたま独裁者というだけだったのだ。
世界も日本も変わった
30年前なら「帰ってきたヒトラー」映画版なんてありえない
エヴァ・ブラウンを肯定するようなこともありえない
過去は風化し、また繰り返す
24. 匿名処理班
女優になりたい娘が権力ありそうな男に近づいたまではよくある話
パラノイックな人間は主体性の薄い人間を飲み込んでしまう
他の愛人達は支配から逃げようと自殺するが彼女はしぬしぬ詐欺にしか見えん
25. 匿名処理班
自分に気に入らないコメだとマイナス連打で消される
言論の自由が無いねここって
26. 匿名処理班
※23
見に行ったら?
原作とは違ったアプローチで興味深いし、何より前半で普通のドイツ人の本音に向き合わされるよ。
ネオナチなんかじゃなく善良なドイツ人の、
しかも60代のね。
27. 匿名処理班
なんだか哀れだな