とと姉ちゃん 一週間 第15週「常子、花山の過去を知る」 2016.07.17


・「普段から」・「メイクしない君が」・「薄化粧した朝」・「始まりと終わりの狭間で」・「忘れぬ約束した」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」
五反田の助言により花山伊佐次のもとを訪ねた常子
・はいお手紙届いてるかなあ?
(常子)あっ…。
どちら様?お邪魔しております。
私5年前に一度お目にかかった事がある…。
(花山)覚えてる。
甲東出版の小橋常子だ。
あの…。
私雑誌を作ったんです。
母と妹2人で。
ですが思うように売れずどうしたらいいか行き詰まってしまって。
お力を貸して頂けないでしょうか。
力など貸さん。
帰れ。
せめてこの雑誌の駄目なところを一度だけでも見て頂けませんか?駄目なところしかない。
そんな見もしないで…。
たまたま闇市で買ったんだ。
何を見せたいんだ?文章か?洋服か?テーマは何だ!?どのページを見ても同じような割り付けで飽き飽きする。
そもそも君は読者を想像できていない。
外国人や一握りの令嬢が着るような浮世離れした洋服を載せて何になる?作り方を載せたところで材料などどうやって手に入れる?型紙も載せないで読者が本当に作れると思うのか?帰れ。
的確で圧倒されました。
(五反田)才能は抜群だ。
ただ…僕が仕事の依頼をした際言われたんだ。
二度とペンは握らないとね。
今は品川で珈琲屋を始めたらしい。
花山さん私たちの編集長になって下さいませんかね…。
今度長澤に会おうと思う。
一緒に衣料の事業をやらないかと誘われている。
事業をなさるの?今のままの貧しい食事では茜が不憫でね。
常子は五反田に教わった花山の珈琲屋を訪ねます
いらっしゃい。
あっこんにちは。
好きな席にどうぞ。
また君か…。
お水持ってきますね。
昨日の話なら何度来ても同じ事だ。
昨日の話ではありません。
雑誌の編集長として入って頂きたく参ったんです。
助言するのを断った人間が編集長になる訳などなかろう!ですからそこを説得しようと。
無駄だ。
帰れ。
帰りません。
二度とペンを握らないのはなぜなんですか?花山さんほど才能がおありの方がご自身で身を引かれる…。
帰れ。
目障りだ。
花山さん…。
何も話す気はない。
出ていけ!君が帰らんのなら私が帰る。
どうぞ。
お二人はどういう?うん?ああ…息子と彼がね戦友だったんだ。
戦友?うん陸軍の同じ部隊でね。
入隊以来なぜか気が合ったそうだ。
息子は結局戦死したんだ。
終戦後花山君はすぐに弔問に来てくれてね。
その時に彼が言ったんだ。
「8月15日全てに気付いた」と。
何に気付いたんですか?とても聞く気にはなれなかった。
(五反田)花山さんの事はもう諦めるの?人をけなす事しか知らないあの人は昔から興味のない人間にはとことん冷たいんだよ。
それが君の事は覚えてたんだよ。
花山さんも心のどこかでは君が食らいついてくるのを待ってるんじゃないか?
そして翌日
もう一度お話しさせて頂けませんか?君が粘り強い根性の持ち主なのは知っている。
だがこんな時に発揮せんでいい!昨日ご老人から伺いました。
「8月15日全てに気付いた」って。
一体何に気付かれたんですか?教えて下さい。
「帰れ」とどなりつけたいところだがそれでは君は帰らない。
分かってる。
理由を聞いたら帰ると約束しろ。
ならば教えてやる。
教えて下さい。
お聞きしたら帰ります。
うちは貧しい家でね。
母親が女手一つで私たち兄弟を育ててくれたんだ。
母は毎日とても苦しそうな顔をしていた。
だが私が10歳のある日母の顔が突然変わってね。
「元始女性は太陽であった」。
平塚らいてう。
らいてうの「青鞜」を読み母はようやく明るくなったんだ。
私もそんなふうにペンで力のある言葉を生み出し人を救ったり人の役に立つ仕事をしたいと言葉や絵の仕事に就くようになったんだ。
やがて戦争が始まり国のために尽くそうとペンをとり言葉を選んだ。
戦争に勝つ事だけを考えて仕事をしてきた。
だが去年の8月15日…。
その時初めて気付いたんだ。
言葉には人を救う力があるものだと思ってばかりいて言葉の力の持つ怖さの方に無自覚のままそれに関わってきてしまったのではないかとね。
「爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず」という言葉を教えられただろう?はい。
その言葉は印刷され皆それを目にした。
だがそれは誤った言葉だったんだ。
それを信じた人々はどうした?バカ正直にバケツで水を運んだ!私ももし戦時中に「『焼夷弾は怖くない』と書け」と言われていたら書いていただろう。
信じてきた事の全てが間違っていた事に気付かされた時もうペンは握らないと決めた。
これが全てだ。
さあもう帰ってくれ。
私はどうしても女の人の役に立つ雑誌が作りたいんです。
たくさんの女の人たちが今この戦後の日本で物がないお金もない仕事もない…。
先行きが見えないこのひどい状況の中で必死にもがきながら生きています。
そんな皆さんの毎日の苦しい暮らしに少しでも明かりを灯せるような雑誌を作りたいんです。
また来ます。
来んでいい!
(せつ)雨漏りが?
(君子)ええすごいんです。
(せつ)だったらちょうどいいわ。
今うち大工さんが来てるの。
戸の立てつけが悪くて。
うちのが終わったら君子さんとこ寄るよう言っとくわ。
(君子)いいんですか?いいのいいの。
花山は拾った小銭入れに書かれた住所を頼りに小橋家を訪ねます
ごめんください。
はい。
あの…。
あら随分お早いんですね。
はい?お待ちしておりました。
これなんです。
何がです?天井です。
随分ガタが来ているようだが。
さすが分かるんですね。
ではお願いします。
いやちょっと待って下さい。
(美子)ただいま帰りました。
雨漏りの修理は?それがね大工さんに来て頂けたの。
私も手伝います。
そうじゃない!あの…何か勘違いをなさっているようですが私は雨漏りの修理になど…。
あぁ〜!
(釘を打つ音)屋根裏の方も塞いどいたから。
ありがとうございます。
助かりました。
なんて事だ…。
ちゃぶ台が傾いている。
はぁ…。
(君子)そうそう鞠子どうしたって?闇市でいろいろよくして下さる方がいて今日もその方と一緒に雑誌を売ってくれるお店を探してます。
そう。
僅かでもその売り上げが我が家の収入源だからねえ。
そして常子が帰宅すると…
・あぁ〜!どうしたの?常子?私が捜してた小銭入れ。
あ…さっきまでそこにはなかった気が…。
じゃさっきの大工さんが置いていったの?ねえ…。
よっちゃんその大工さんってどんな人だった?いい人よ。
ちょっと偉そうだったけど。
はっきり物を言う人だったわねえ。
花山さんだ!おやまた来たね。
マスター常連さんだよ。
君か…。
申し訳ありませんでした!ありがとうございました。
母と妹が大変感謝しておりました。
失礼します!
(花山)手伝う事にした!えっ?雑誌の件だ!私が手伝わないと君ら家族は死んでしまう。
でももう二度とペンは握らないって…。
ゴチャゴチャ言うならやめるぞ。
あっごめんなさい。
次の号だけだ。
はい。
よろしくお願いします!常子君鞠子君立ちなさい。
(2人)えっ?早く!帰るぞ。
はいはいはい。
角度をつけたり立体的に描くんだ。
あ…。
(花山)君が描いた挿絵は正面から描かれたものばかりだった。
だがそれでは動きがなく服のよさを十分に伝えられない。
あらゆる角度から視覚に訴えるんだ。
そうか…。
それでは文学娘!
(鞠子)はい。
この挿絵に見出しをつけてみろ。
ほう…100点。
すごい。
すごい!1,684点満点だ!この雑誌は小説を読みたい人が買うんじゃないだろ!そんな叙情的な文章は必要ない!分かりやすく簡潔である事が大事なんだ。
では花山さんが見出しをつけるとしたら?そのくらいでいいのか…。
確かに分かりやすい。
これからはそんな感じの言葉でお願いね。
うん。
よしそれではいよいよ次号に向けての作業を…。
待て待てそうはいかない。
君たちは大きな事を見落としている。
どんな服を雑誌に載せるかばかり考えているがそれよりも大事な事がある。
それって一体…。
帰る。
(一同)えっ?それを見つけない限り進める事はできないな。
今日はこれで失礼する。
は…花山さん…。
見送り結構。
そんな時間があったら考えたまえ。
服よりも大事なものって本当にあるのかしら?禅問答みたいで考えれば考えるほど答えが分からなくなるね。
(水田)あっこんにちは。
そんなにたくさんの服を抱えてどうしたんですか?
(水田)これですか?さっきまで組合の金を徴収していたんですけどお金を払えない人が着ていた衣服を代わりに渡してきたもので。
着ていた服を?お金がないと着ている服を一枚ずつ剥いでお金や食べ物に換える。
いつか下着だけしか残らないんじゃないかって心配になります。
あ…。
えっ?それですよ。
(花山)…で答えは?服よりもまず大事なものそれは…下着ではないでしょうか。
そもそも洋服を着たいと思っても下着がなければ着られません。
それを忘れてすてきな洋服の作り方を説明しても手が出せない方がいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは下着の作り方から載せる必要があった…。
ご名答!うん…。
まあ合格点をあげよう。
(一同)はぁ…。
常子たちが花山と苦心の末に作り出した「スタアの装ひ」第二号は想像以上の反響で売れていったのです
ありがとうございます。
常子君。
はい。
今のままではすぐに売れなくなるぞ。
一朝一夕にはまねされない本を作るしかない。
こんな時代だからこそ伝えなくてはいけない事があるはずだ。
だが実際には作れんよ。
そんな金のかかる雑誌。
では。
回想
(花山)こんな時代だからこそ伝えなくてはいけない事があるはずだ。

花山は友人の事業を手伝う事にしたのですが…
(長澤)花山。
この辺り一帯だ事務所が入るビルの建設予定地は。
何だって?どうした?ちょっと待ってくれ。
そうなるとここに住んでいる人たちはどうなるんだ?空襲で焼け出されて行き場がない人たちだぞ。
こいつらは勝手に住み着いているんだ。
出ていけと言われて文句を言える立場じゃない。
・お〜い長澤さん!ああ!花山さん。
何の用だ?花山さんがおっしゃっていた誰にもまねされない雑誌。
衣服だけでなく衣食住にまつわる全ての中で生活の知恵を実験してみて体験した事を読者に伝えて皆さんの生活が今日よりも明日と少しでも豊かになるような雑誌。
ああ。
そんな雑誌を作る事ができたらとこのところ考えていたんだ。
しかしそれにはとても金がかかる。
何もかも実際に作ったり試したり…。
そんな事ができる訳がない。
夢みたいな雑誌だ。
できますよ。
私となら。
私は戦争中男には毎日の暮らしなどよりももっと大事なものがあると思い込んできた。
もし豊かな暮らしを取り戻すきっかけとなる雑誌を作れるのなら…。
私となら…必ずできます。
始めましょう。
新しい雑誌作りを。
あの2人は何をしている?えっ?あっ鞠子と美子ですか?多分今家で…。
バカ者!一瞬たりとも遊ばせておくんじゃない!四六時中雑誌の事を考えさせておけ!すみません。
全く明日からが思いやられる!お力を…貸して頂けるんですか?孝行娘の手伝いをしてやるだけだ。
君らのためにペンを握ってやる。
ありがとうございます!本当にうれしいです。
終戦の日以来初めて他人の…それも女性の言葉を信じてみたくなったんだ!でしたら…私も人生を賭けます。
自分の人生の全てをかけて新しい雑誌を作ります。
ハハハハハ。
よろしくな。
常子さん。
よろしくお願いします。
花山さん。
こうして常子と花山の人々の暮らしを豊かにするための雑誌作りが始まったのです
2016/07/17(日) 11:00〜11:20
NHK総合1・神戸
とと姉ちゃん 一週間 第15週「常子、花山の過去を知る」[字]

雑誌への助言を求めて花山(唐沢寿明)を訪ねた常子(高畑充希)はもうペンを握らない理由を聞いて衝撃を受ける。しかし懸命に生きる女性のためにという熱意で説得を続け…

詳細情報
番組内容
雑誌への助言を求めて花山(唐沢寿明)を訪ねた常子(高畑充希)は、すげなく追い返される。もうペンを握らないと決めたという花山から、理由を聞いて衝撃を受ける常子。しかし懸命に生きる女性のために雑誌を、という強い熱意で説得を続ける。一方ひょんなことから小橋家を訪れた花山は、苦しい生活の中で、母と妹を必死に守る常子に心が揺れる。花山の助力を得て第2号に取りかかった常子たちは、そのアドバイスに驚かされる。
出演者
【出演】高畑充希,相楽樹,杉咲花,木村多江,唐沢寿明,及川光博,寺田農
原作・脚本
【作】西田征史
音楽
【音楽】遠藤浩二

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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