こんにちは、せみけんです。
トルコのテロも気になるところですが、為替相場は不安定な状況が続きます。
今日は、「リスクオフの円買い」について、お話ししたいと思います。
1.リスクオフとリスクオンについて
2.なぜリスクオフの円買いは起こるのか
1.リスクオフとリスクオンについて
そもそもリスクオフとは、投資家がリスクを回避するようになる状況で、株で言えば売られる状況です。株を保有するという行為はリスクがありますよね。リスクを取りたくないときは、リスクというスイッチをオフしてしまいます。
リスクオンの方がわかりやすいかもしれませんが、株で言えば株を買って、リスクを取りに行く。つまりリスクというスイッチオンで、アクセルを踏むような状況です。
アベノミクス相場は最近でいうとリスクオン相場です。まだアベノミクスが続いているのかもしれませんが、2013年のアベノミクス開始の時がまさにリスクオンでした。かなりの株が上昇し、買えば儲かるという相場で、典型的なリスクオン相場です。
為替で言えば、リスクオンの時に円安(ドル買い円売り)、リスクオフの時には円買(ドル売り円買い)になると言われています。
2.なぜリスクオフの円買いは起こるのか
長期的に為替がどう動くのかは、経常収支が黒字だと円高だ、日米金利差が開くと円安だとか、購買力平価だとかいろいろな意見があります。ただ、複合的な要因が複雑に絡み合っているので、経常収支が赤字だと円高と言い切れるものではなく、要因分解しても正しく説明できる人はほとんどいないでしょう。
要因の一つに内需系の企業が外国企業をM&Aをする際は、円安になります。これは私も経験があるのでそうなんですが、ドル円ぐらいボリュームがあればあまり動きませんが、その他の通貨であれば、数百億円レベルの売買でも為替市場は結構動きます。
つまり円を売って、メジャーではない豪ドルやポンドを数百億円買うなら市場は結構動きます。長期的な為替のトレンドは、何かの要因というよりは、複合要因かつその時々でその要因が変わるので、簡単には説明できません。
では短期的な為替変動についても説明できないのか。「リスクオフで円買いは?」何故おこるのかという本日の話についてですが、これは説明できると思います。
株でも為替でも短期的に動く一番大きな要因は需給です。日本の小型株のIPO市場見ればわかりやすいかもしれません。多くのIPOは、需給バランスが崩れて(需要が強い状態)で上場します。つまり売りたい人の方が少なく、買いたい人が多い。だからなかなか初値はつきませんよね。つまり買いたい人が多いほど、値段が吊り上がります。
そして初値が付いた後、そのまま上昇する株も中にはありますが、基本的には下がる株が多いと思います。需給が一致した点が初値であり、その後は、売りたい人が多ければ下がる、買いたい人が多ければ上がります。これはつまりIPOバブルの状態です。
株価は長期的には、利益に収斂します。短期的には需給でどんな値段にもなり、バブルと呼ばれる現象も起こります。需給の観点で初値は高くつくことがありますが、利益が出ないのであれば株価は下がります。よくあるIPOのチャートパターンは、初値天井で後は、じりじり下がっていくという株価が多いと思います。
為替の話に戻ります。○○ショックが起こると何が起こるか。為替を取引する人の頭の中には、何か危機が起これば、円高になるということが経験上染みついています。リーマンショックでも、チャイナショックでも、欧州危機でも円高になってますよね。
世界中のヘッジファンドやトレーダーは儲かる瞬間をいつも狙っています。ショックが起これば、単純に需給で円高になります。それだけなの?と思うかもしれませんが、短期的には需給が大きく影響します。
これはスイスフランも同じですが、過去の危機時には、スイスフランと円が高くなっています。それは皆がそう思っているので円高になる、つまり需給で円が欲しい人が多く、一方で、高金利通貨は売られるといった現象が起こります。
では、危機が起こった時にはどのくらい円高になるかについてですが、これは危機の大きさと短期的なものか長期的なものかという時間軸の問題が大きいでしょう。
Brexitは、予想に反して起こりました。かなり意外な結果かつ、長期的な問題ということで一気に100円割れの円高になりました。
もっと特徴的な動きがあります。日本の個人投資家は、高金利通貨をロング(買い)する割合が多いです。これは高金利の通貨を買うと、金利が貰えるからそういった投資行動をする投資家が多いのは皆が知っていることです。
日本の金利は長期金利(10年)もマイナスですが、南アフリカランドの政策金利は7%です。FXは毎日スワップポイントという金利を得ることができます。為替の変動がなく1年間、南アフリカランド円が動かなければ、7%の利回りとなります。日本の銀行に預けておいても金利が付かないなら、金利がつく国に預ければ(投資すれば)いいと考えている人が多いということです。
FXの大手の外為ドットコムのポジション比率は参考になります。上から12番目にある南アフリカランド円は、基本的にはロングしている投資家が多いのが分かります。ロングというのは、南アフリカランド買い、円売りのポジションです。
(※引用元:外為ドットコム)
少し考えてみましょう。南アフリカに旅行で行く人や仕事で行く人は実需で南アフリカランドを買うでしょう。でもほとんどの人は、高金利のメリットを享受したい、7%の金利が欲しいために南アフリカランドを買っています。
投資行動として、ランドを買っている人が多いのです。このポジションを見てもそうですね。こういった通貨は特に狙われやすいです。つまり逆に南アフリカランド売り円買いで、ランド安円高にすれば、実需で買っているわけではないので、ロスカットする人も多く、また実需が少ないために買い手が少ない(ランド買い円売り)ので、大きく動きやすくなります。
ランド円では市場が大きくないので、それほどトレーダーもランド売り円買いポジションは取れないかもしれませんが、個人のFX投資家も実需でランドが欲しいわけではないので、ほとんどのプレーヤーがランド売り円買いとなり、急速に円高が進みます。
実際Brexitの際も、1ランド7円程度で推移していたものが、1ランド6.2円程度、つまり10%程度円高になりました。
もう一度振り返ると、為替でも株でも短期的には需給が大きい。リスクオフの時は、円高になると皆が思っているので、需給の関係でまずは円高になる。その円高の深さは問題の大きさと時間軸が影響している。これである程度説明できるのではないでしょうか。
FXの難しさは、世界中どこで問題が起こるか分からず、中国の不動産バブル崩壊など今後問題が起こりそうでもいつ発生するか予見できないことです。そもそもリスクオフで、日本国債が買われるのもおかしいですよね。日本国債はA1/A+で、主要国の中ではかなり低い格付です。債務も多いので、仕方ないのですが、シングルAの国債の国の通貨がリスクオフで買われるのは、安全だからではないでしょう。
為替について長期的な予想するのは相当難しいと思っているのですが、日本円だけを持っていることはリスクだと考えています。所得を円で貰っているなら、ある程度ドルなどを持ちながら資産を守ることが大事ではないでしょうか。