Hatena::ブログ(Diary)

Paradism このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-07-14

映像と音楽、物語の息吹 ―― ストーリー型OPと新海誠監督の親和性

先ず一つの記事をご紹介させて頂きます。

じゅじゅるさん。 『ストーリー型OPのすすめ』

こちらの記事を読んで真っ先に思い浮かべたOPがこちらの映像でした。

D
(minori works 公式チャンネルより)

『OPは作品の紹介の場である』 という当該記事での見方には大きく頷くばかりで、まさにOPの役割はそうした作品のメインテーマや登場するキャラクターの特徴を大きな括りで紹介するところにこそあるのだと思います。それは原作を持つアニメオリジナルアニメに限らず、まだその物語に触れたことのない視聴者を巻き込んでいく上で非常に重要な出会いの場であり、興味を引くための “あらすじ” にも成り得ると思うからです。

でもだからこそ、時としてそうした映像群はそれを手掛ける者の作家性や強過ぎる物語の匂いをフィルムそのものへと反映し、まるでその “あらすじ” が広大な物語そのものを捉えてしまうかのような現象が起こることも少なくはないのです。上記に紹介したデモムービーはその一例であり、所謂ここで語られる 『ストーリー型OP』 の代表的な作品であると私自身は考えています。

D
(minori works 公式チャンネルより)

そしてそれを手掛けたのはあの新海誠監督。氏の映像作品の特徴と言えば作品とそのテーマソングとのシンクロ率を極限まで高めたフィルムに美しい背景、あとはその作品世界における広大な景色を遠望することの出来る映像の奥行きの深さにあるわけです。けれど、そのどれもが結局は一つの主体的な物語を描くためのパーツに過ぎないのだと最近は感じていたりもしていて。むしろ氏の手掛けた映像に堪らなく良さを感じてしまうのはその透き通るように美しい映像美の向こう側に氏が意識的に埋め込んだ物語を、我々が無意識の内に感じ取ってしまうからなのだとも思うんです、

他にも同メーカーの作品で言えば 『Wind - a breath of heart -』 『eden*』*1 などのOPは同様にしてその作品が一番大切にしているメインテーマを核に据えた上で創られているような印象を受けますし、特に天門さんとタッグを組んだ新海監督の映像はまさに物語そのものと呼べるものが多く、それは美少女ゲーム界を去ったあとも数多くの劇場作品に引き継がれているもはや新海監督の代名詞的な表現方法でもあるのだと私は強く感じています。

それこそ作中における劇伴と映像の親和性を高めることに関しては並々ならぬ熱量を費やす新海監督です。それは氏が手掛けたアニメーションの多くの劇伴を担当された天門さんが 「新海監督からの依頼は(良い意味で)大変」*2 だと語ったことからも分かりますし、またそれは 『言の葉の庭』 の劇伴を担当された KASHIWA Daisukeさんに新海監督が宛てたコメントからもよく感じ取ることのできる部分なのではないかと思います。

雨の音も鳥の声も、母の足音もドアが閉まる音も、そういえば幼い頃は音楽のように心を乱すものだった。そういえば世界の全ての音は、かつて音楽のようだった。(中略) KASHIWA Daisukeの耳があれば、僕もきっと世界中の音という音に新たな意味を見つけることができるのに。そこから新しい物語を紡ぐことができるのに。そんな詮のないことをつい考えてしまう。


D
(minori works 公式チャンネルより)

音楽と映像、物語の息吹。その全てをフィルムに込め、それこそが映像の主体となるように一つ一つのパーツを組上げていく新海監督の持ち味は多くのストーリー型のOPを手掛けたことでより洗練された強さを身につけていったのではないかと思います。それも 「音楽に合わせて映像を組み立てていくPV制作はとても楽しい」*3 と語る氏の原点的な作品群でもあるというか。だからこそminoriで新海監督が手掛けた映像作品は今観ても尚感動が出来るのだと思いますし、氏の映像を観ては物語が宿らされたオープニングってやっぱり本当にいいものだなと感じ入ることが出来るのだと思います。

f:id:shirooo105:20160714182833j:image:w275f:id:shirooo105:20160714182832j:image:w275

というわけで少し当初の話題から新海監督の話へと話の軸がシフトし過ぎてしまったので、最後に幾つかストーリー型のOPとして素晴らしいものを挙げた上でこの記事を締めさせて頂こうと思います。

一つは『ef a tale of melodies.』のOP。上記で挙げた原作のOPとは趣向が大分違うのですが手掛ける監督の色が変わればこうもフィルムは変化するのかと思い知らされたOPです。しかしながら、そこに宿る物語の強靭さは新海監督の映像にも引けを取らない素晴らしいものに仕上がっていたと思います。大沼心監督快心のOPだと思います。

そして次に挙げるのは『失われた未来を求めて』のOPです。こちらもストーリー型という点では本当に素晴らしいものに仕上がっていたと思います。放課後から向かう天体観測、そして朝日を見るまでの時間経過を丹念に描いた上で、夜明けというモチーフに失われた未来への到達を予見させる辺りが最高に物語してるなぁと思います。こういう映像を観てると改めて物語の組み込まれたOPの良さを実感させられますね。ストーリー型のOP、本当に素敵だなぁと思います。

*1:『eden*』は新海監督の関わった作品ではありませんが、その影響を大きく受けた作品として挙げています。

*2アニメスタイルイベント 新文芸坐 新海誠監督作品オールナイトでのコメントより ※正確なコメントではなくニュアンスを含みます

*3:新海誠監督HP Other voices -遠い声- minori OP WORKS 前説より

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/shirooo105/20160714/1468489680