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【社説】

メイ英首相 すべては分断克服から

 欧州連合(EU)離脱を決めた英国の新首相にメイ前内相(59)が就任、EUとの交渉を担う。分断された国をまとめ、保守党を再結束させ、未来図を描き直したい。

 離脱でダメージが大きかったのは、EUより、むしろ英国だ。

 残る加盟二十七カ国での結束を急ぐEUは英国に、離脱に向けたすみやかな交渉開始を要求。EU単一市場への参加を望むなら、域内移動の自由を受け入れるように求めて、いいとこ取りを許さない。

 国民投票でEU離脱を決めたものの、その後の青写真は描けていなかった。離脱派を率いたジョンソン前ロンドン市長は首相就任レースから早々に降り、英国独立党のファラージ党首は辞任。リーダーらが主張していた離脱のメリットが誇張されていたことも分かり、離脱派は途方に暮れている。

 若者が中心の残留派は、国民投票やり直しを求めるなど未練が去らない。残留派が多数のスコットランドは再び独立の是非を問う住民投票実施の構えを見せ、ロンドンからも独立を望む声が上がる。

 離脱決定後、移民への嫌がらせも目立っているという。

 社会に広がる溝は、国自体の分裂をも招きかねない。

 メイ氏は失言したライバルの辞退で、九月の保守党首選を待たずに首相に就任した。議員を約二十年、内相を六年務めたベテラン政治家だ。EUは事前交渉には応じない考えで、新首相はEUへ離脱を通知後、密室での妥協なしでの本交渉を迫られる。

 英EUの主張の隔たりは大きく難航と長期化が予想されるが、同じ欧州の隣人であり、自由、民主主義などの価値観を共有する。孤立することなくEUとの共存を探り欧州の新秩序を築いてほしい。

 就任後の演説では「保守党の正式名称は保守統一主義者党。私にとっては統一主義者こそが重要」と強調。「特権を持つ少数者ではなく、全ての人が恩恵を受けられる」ようにすることを優先課題に挙げた。まず、国民投票で露呈した社会の格差と分断解消に取り組んでほしい。EUとの厳しい交渉の底力ともなる。

 ジョンソン氏の外相起用など早速、思い切った布陣を取った。

 英国では故サッチャー氏以来、約二十六年ぶりの女性首相。ドイツのメルケル首相らに続く女性政治指導者でもある。寛容さや、しがらみにとらわれない柔軟な発想に期待したい。

 

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