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【コラム】

筆洗

 新憲法の施行を五月三日に控えた一九四七年の四月は、歴史的な「選挙の月」であった▼まず五日に四十六都道府県の知事らを選ぶ首長選があり、二十日に参院選、二十五日に衆院選、三十日に地方議会選。白地図に色を塗り分けるように、新しい日本の政治模様が描かれた一カ月だった▼この時ほどではないにしても、今月もこの国の政治の色合いを決める選挙の月だ。参院選が終わったら、都知事選。首都の顔に誰がふさわしいのか。何が争点となり、どんな論戦がくり広げられるか。都民ならずとも考えさせられる選挙だ▼古い新聞を読んでみる。四七年四月七日の東京新聞。官選から公選となって初の都長官選の結果を伝える一面に、社説「新都長官に望む」が掲載されている▼曰(いわ)く「戦争以後本来自治組織であるべき隣組や町内会さえも戦争協力の機関として存在し、都民一人々々にも自治の心は失われた。それが…生活に節度をなくした原因でもある。この自治の芽を伸ばし、育成することは美しい自治の都を作る不可欠の条件であろう」▼古くとも新しい響きを含んだ言葉ではないか。少子高齢化を見すえた街づくり。震災などに備え、地域で支え合う力を育む試み。いずれも草の根の自治の力なしにはできぬ課題だ。その自治の芽をどう伸ばすか。十七日間の選挙戦で示してくれるよう、「新都知事候補に望む」。

 

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