文化庁移転 京都側、国の対応に戸惑いや不安
文化庁の京都移転で、国の思惑を京都府・京都市がつかみかねている。馳浩文部科学相が13日、唐突に京都国立博物館(東山区)を移転先候補に挙げ、戸惑いが広がった。前々日には移転に対する同庁の本気度を疑い、山田啓二知事が不満をあらわにする場面もみられた。移転の大枠を決める時期が8月に迫る中、足場の定まらない国に、京都側が不安を募らせている。
■新候補地が急浮上
中京区の京都芸術センター3階。13日、京都と東京をテレビ会議システムで結ぶ実証実験で、東京の文化庁幹部とのやりとりで馳氏は「文化庁が京博(京都国立博物館)に行くのもいいな」と語った。直前に京博を視察しており、実験後の取材にも「新たな文化庁をつくるに当たり、機能的にいい」と笑顔を見せた。
4月に府市が提案した移転先候補地5カ所を視察した際、上京区の府警本部本館を「百点満点」と評価していた。にもかかわらず、移転概要をまとめる8月の直前になって、新たな有力候補地を急浮上させた。
馳氏が同センターで京博案をぶち上げてから約2時間後。下京区のホテルで門川大作市長は「幅広く議論したい」、山田啓二府知事は「評価こそすれ、問題はない」と、それぞれ平静を装った。
しかし、府は府警本部本館への移転に向け、準備にも着手している。老朽化が激しい府庁3号館は建て替えるはずだったが、工事期間に仮庁舎にする予定の府警本部は文化庁移転で使えない可能性があると判断。3号館は耐震補強に変更し、開会中の定例議会に関連費用800万円を提案している。
山田知事も5月の記者会見で「3号館の建て直しは文化庁移転と絡んできた」としていたが、この日は「直接リンクしない。府警本部に決まってもいない」。馳氏の発言に振り回される形となり、府幹部は「決めるのは国。どこでも対応できるようにするしかない」と困惑した。
■予算や組織説明なく
京都側には文化庁の姿勢へのいらだちもある。実証実験初日の11日、府庁を訪れた文化庁の佐藤安紀政策課長に山田知事は強い口調で言い放った。「政治が決めたことをやるのが事務方だ。東京目線では困る」
政府が3月に移転を決定後、府市の幹部は何度も文化庁を訪れたが、移転に関する予算や組織拡大の方針がなかなか示されない。府市の幹部は「文化庁の意気込みを感じない」と漏らし、移転規模を縮小する気ではないか、との疑念も広がりつつある。
移転で府や市は費用を応分負担する意向を示しているが、具体的な金額は決まっていない。馳氏の京博案について「国が交渉の主導権を取ろうとしている表れではないか」とみる向きも京都側にはある。
【 2016年07月14日 14時33分 】