ネットワークに接続されたロボット同士が知能を共有すれば、ロボットが普及するほど性能が高まる。このことからプラット氏は、「いつかは分からないが、AIロボットの性能が一気に高まる時が来る」と見通した。
会議を通じてプラット氏は、「欧米ではAIやロボットには雇用喪失の懸念がつきまとう。これに対し、少子高齢化が進んでいる日本では雇用問題が生じにくい。少子高齢化はむしろ好機なのではないか」と繰り返し強調した。
米ペンシルベニア大学工学応用科学部のビージェー・クマール学部長は、「半導体や3次元(3D)プリンティング、DNA解析などあらゆる分野でコストが急減している」と指摘した。
米マサチューセッツ工科大学コンピューター科学・人工知能研究所のダニエラ・ラス所長は、3Dプリンターで「机の上でなんでも作れる時代が来るかもしれない」とし、「イノベーションの新たな生態系が生まれる」と話した。
また、AIによって一部の雇用が減る代わりに、コンピューター科学に基づく仕事が増えると予想されることから、教育革命の必要性も訴えた。
講演後の議論では、コンピューター関連の科学教育市場が急成長している米国に対し、日本が遅れている点が指摘された。またAIが中間層の仕事を奪い、富の二極化に拍車をかける懸念にも関心が集まり、対策の必要性が話し合われた。
ファシリテーターの見方
米MITのダニエラ・ラス所長は「米国の良い仕事はすべてSTEM(科学・技術・工学・数学)に関連する。STEMのすべての仕事はコンピューターサイエンスに関連する」と自信満々です。AIを中心にコンピューターサイエンスの人材獲得競争は過熱するばかりでバブルの様相です。日本の政策担当者としては、ポスト・コンピューターが知りたいことろ。
盛り上がっているうちに、次のイノベーションの種を仕込んでいるはずです。会議では委員から「ITやAIで日本が巻き返せる余地は残っているか」と嘆きにも近い質問が出ていましたが、巻き返せないならITやAIをスポイルする戦略が必要です。
イノベーションエコシステムを牛耳るにはOSやデバイス、顧客数など、プラットフォームを握る必要があります。結局、自社の技術や事業領域はクローズし、周辺がオープンに競争する構造が一番儲かります。ウィンテル時代、インテルとマイクロソフトは互いに自社をクローズ化し周囲をオープン化しようと動きました。双方向からオープン化の力が働き、2社の周囲は丸裸になったといえます。
<続きはコメント欄で>
日刊工業新聞 記者
2時間前
オープンイノベーションが技術調達からエコシステムや共創にシフトしたのは、1社でネットワークを育てるのが難しいからでもあります。日本も材料メーカーと完成品メーカーなどプラミッドの上と下からオープン&クローズを仕掛ける必要があるかもしれません。ただ裸にされる側はたまったものではないです。日本では日本式のイノベーションエコシステムであった〝系列〟は解体中です。抵抗勢力を抑えられるタイミングですが、日本が強い製造業を犠牲にしては本末転倒です。ITやAIなど海外が強いプラットフォームを裸にするオープン&クローズ戦略が求められているのだと思います。
(日刊工業新聞社科学技術部・小寺貴之)
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