ごあいさつ
2015年は戦後70年、平和憲法の下「戦えない国」であり続けた日本が、安保法制成立により大きく揺れた年でした。その中でSEALDsの若者や一般市民が声を上げ、行動に出た。私たち演劇人も「安保法制と安倍政権の暴走を許さない演劇人・舞台表現者の会」を立ち上げ、強行採決に向け行動を起こしました。9月16日「サイレント・スタンディング」。朝8時半から1時間、各劇団最寄り駅で、安保法制や安倍政権の暴走を許さないという意思を示した内容のプラカードを持って、無言で立ち尽くす。可決後も毎月19日にサイレント・スタンディングを続けて行く。大きく日本が変わろうとしている中、私たちも何をすべきなのか考え、行動して行かなければならないと思います。
そんな中、他団体と連帯する公演が二つありました。一つは『山猫からの手紙』。別役実フェスティバルとして19団体が一人の劇作家の作品を通し演劇の未来を考える試み。もう一つは『からゆきさん』。「棄てられた民の怒り」という括りで劇団東演『明治の柩』と宮本研・紀伊國屋ホール連続公演と銘打ち、時代の意味を鮮明にする試み。ともに将来に続く一歩になったと思います。新作は早船聡作/須藤黄英演出『鑪―たたら』と野木萌葱作/黒岩亮演出『外交官』。若い劇作家との共同作業は大きな成果を残した。スタジオ公演も活発に行われた。『二人だけのお葬式』『第十七捕虜収容所』『招かれざる客』。新旧が競い合った。旅は年明け『をんな善哉』が四国・首都圏を廻り一区切りをつけた。『ブンナよ、木からおりてこい』は佐倉から始まり中部北陸を廻った。
さて2016年。今年は旅が多い。『からゆきさん』『ブンナよ、木からおりてこい』『朝食まで居たら?』『横濱短篇ホテル』。苦労してつくり上げた芝居が東京公演だけで終わらず何十回も板を踏むことが出来る。嬉しい限りである。俳優にとって成長の大きな糧。全国の鑑賞団体とつくり上げる例会、その喜び。
新作は二本。青年座初登場、古川貴義作/磯村純演出『俺の酒が呑めない』。そして鈴木聡作/宮田慶子演出『フォーカード』。『妻と社長と九ちゃん』『をんな善哉』に続く三作目。新旧二人の新作が嬉しい。そして47年ぶりの旧作矢代静一作『天一坊七十番』。本公演初演出金澤菜乃英が挑みます。また『ブンナよ、木からおりてこい』は大宮で一日だけの自主公演。好評の海外戯曲は二作。G・ストーン/R・クーニー作、伊藤大演出『朝食まで居たら?』は人情喜劇。そしてJ・R・ベイツ作/須藤黄英演出『アザー・デザート・シティ』は本邦初演の問題作。どうぞご期待ください。
座員一同、今に拘り芝居と向き合い精進いたしてまいります。
本年もよろしくお願い申し上げます。
森正敏(2016.1.1)
青年座の活動
劇団青年座は「創作劇の上演」を趣意書に謳い、1954年5月1日森塚敏、東恵美子、成瀬昌彦、天野創治郎、土方弘、中台祥浩、初井言榮、山岡久乃、氏家慎子、関弘子、ら十人の俳優によって結成いたしました。同年12月17日俳優座劇場で椎名麟三作『第三の証言』をもって第一回公演をおこない、以後、矢代静一(『写楽考』他)、八木柊一郎(『国境のある家』他)、宮本研(『からゆきさん』他)、水上勉(『ブンナよ、木からおりてこい』他)ら多くの劇作家と共に数々の創作劇を上演してきました。
1994年の創立四拾周年以降はマキノノゾミ(『横濱短篇ホテル』他)、永井愛(『パートタイマー・秋子』他)、ふたくちつよし(『切り子たちの秋』他)、中島淳彦(『タカラレ六郎の仇討ち』他)、鈴木聡(『をんな善哉』他)、早船聡(『鑪-たたら』)、野木萌葱(『外交官』他)ら、現代演劇を代表する劇作家の新作を次々と上演し、高い評価を受けております。
また2012年からはポリー・ステナム作『THAT FACE〜その顔』、マイク・バートレット作『LOVE, LOVE, LOVE』、ジョエル・ポムラ作『世界へ』と、海外現代戯曲にも取り組んでいます。
東京での本公演の他に、全国の市民劇場・演劇鑑賞会でのロングラン公演、劇団員の自主企画によるスタジオ公演、特別公演など多彩な演劇活動を展開しています。
一方、現代演劇の未来を担う俳優・スタッフの養成を目的とし、1975年より青年座研究所(2年制)をスタートさせて多くの人材を輩出てきました。2016年も本科・実習科で約80名の研究生が学びます。
さらに演劇公演・俳優養成事業とともに青年座映画放送株式会社では、所属俳優・スタッフの舞台・テレビ・ラジオ・映画出演、演出のマネージメントを行い、日本の現代演劇・エンターテイメントの発展に大きく貢献しています。
受賞
1968年 第23回芸術祭奨励賞(『禿の女歌手』の成果に対して)
1968年 第3回紀伊國屋演劇賞団体賞(年間の公演活動に対して)
1971年 第6回紀伊國屋演劇賞団体賞(年間の公演活動に対して)
1973年 第28回芸術祭優秀賞(『三文オペラ』の成果に対して)
1979年 東京都優秀児童演劇選定優秀賞(『ブンナよ、木からおりてこい』)
1979年 厚生省児童福祉文化賞(『ブンナよ、木からおりてこい』)
1980年 第34回芸術祭優秀賞(『ブンナよ、木からおりてこい』)
1981年 第35回芸術祭大賞(「五人の作家による連続公演の企画・制作」)
1985年 東京都優秀児童演劇選定優秀賞(『ブンナよ、木からおりてこい』)
厚生省児童福祉文化賞(『ブンナよ、木からおりてこい』)
1987年 第42回芸術祭芸術祭賞(『国境のある家」の成果に対して)
1990年 平成元年度芸術祭芸術祭賞(『盟三五大切」の成果に対して)
1997年 第31回紀伊國屋演劇賞団体賞
(『三文オペラ』『審判』『ベクター』などの舞台成果に対して)
1998年 第5回読売演劇賞優秀作品賞(『フユヒコ』の舞台成果に対して)
1998年 第52回芸術祭大賞(『見よ、飛行機の高く飛べるを』の成果に対して)