アルツハイマー病、脳の変化は幼少期に 米医学誌
アルツハイマー病に関係する脳の変化は、高い遺伝子リスクを抱えた人では早ければ幼少期に確認できることが、13日に刊行された米医学誌「神経学」に掲載された研究報告書で発表された。
アルツハイマーの研究は主として、高齢者の脳に蓄積する特定のタンパク質に焦点が絞られているが、タンパク質の蓄積の兆候を標的にした実験薬の開発は期待通りに進んでいない。最近では、アルツハイマー病は幼少期に始まる発達障害であるとの新説も唱えられている。
今回の研究には参加していないノースカロライナ大学発達認知神経学者のレベッカ・ニックメイヤー博士は、「報告書はその仮説を大々的に拡大したものだ」と話す。アルツハイマー病は、高齢者の認知症としては最も一般的なもので、軽度の物忘れから始まり、進行すると話すことや読むこと、書くことも難しくなる。
研究チームは、3歳から20歳までの健常者1187人の脳画像と認知テストのデータを分析した。これら被験者はまた、アルツハイマー病のリスクに関連する遺伝子であるアポリポタンパクE(アポE)遺伝子の変異のテストを受けた。
研究チームは、「アポE4」と呼ばれる遺伝子を少なくとも1つ持っている人の一部について、海馬の大きさが他の被験者に比べかなり小さかったことを突き止めた。アポE4はアルツハイマー病のリスク増大に最も関係があるとされる遺伝子で、海馬は記憶形成をつかさどる脳の領域である。これらの人々は、大脳皮質で物体認識や意思決定などをつかさどる領域の大きさも最も小さかった。
論文の主執筆者であるハワイ大学マノア校神経科学・MRI研究プログラムの責任者、リンダ・チャン氏によると、こういった類の脳の構造の変化は「アルツハイマー病の結果だと考えられる」ことが多いが、それが「幼少期に既に存在していた可能性がある」という。
チームはまた、被験者の認知機能テストのスコアを精査し、特定の記憶のテストで、海馬が小さい子たちの成績が最も悪かったことを突き止めた。とりわけ、アポE4の遺伝子を2個持つ子の成績が悪かった。
テストのスコアと遺伝形質との相関関係はなかった。研究チームはこれについて、E2を持つ子たちをもっとテストし、それが脳機能にどう影響するかを調べる必要があることを示していると述べている。 E2はアポE遺伝子の中で最も見受ける確率が低いものだ。
ニックマイヤー博士は論文とともに掲載された解説文の中で、この結果が臨床的に「すぐに意味を持つわけではない」と断った。だが、アルツハイマー病が発達に関する病気であることを示唆する研究結果は増えているとし、将来の研究の足掛かりを提供すると指摘した。脳の発達をより詳細に評価するためには、子どもたちが青年となり、成人するまでを追う研究が必要になるだろうと述べた。今回の研究では、若年期に1回しかテストを受けていない。