2016-07-14

断言しよう、チャットボットブームは去るし関連ビジネスも失敗するよ

会社名を明かせないが、業界大手ベンチャーキャピタル所属している。

主な出資先は所謂ドルレイターと呼ばれる「成長、拡大期」のベンチャーである

私自身も一回事業立ち上げ、売却した経験を持つ。

さて、そんな私も最近起業前、もしくは新規事業を立ち上げようとしている方にアドバイスをすることが多い。

そしてその中でもここ1ヶ月は会う人の3割がチャットボット系のサービスアイデアを語るのである

「やめたほうが良い」と毎回アドバイスするのだが、毎回伝える3つの点についてここに記したい。

願わくばこの記事が広まり、浅はかな「対話サービス未来」を考えているベンチャーが断念し、より可能性の高いビジネスに切り替えて欲しい。

そしてこの記事を受けても尚、私の予測を上回り成功するチャットボットサービスが出てきてほしいとも思う。

前置きが長くなったが、以下3点がチャットボットが失敗する理由である

1. ユーザーの利用シーンが無い

一番の理由がこれだ。

ここで注意したいのが、 クライアント ではなく ユーザーである点だ。

よくあるチャットボット簡単ECサイトに導入できますサービスを事例に出してみよう。

彼らはこういった切口で法人クライアントに売り込む。

「今まで大変だった顧客対応チャットボット代替できます。」

チャットボット商品アピールをすることで売上が上がります。」

確かに正論に聞こえるし、無料キャンペーンや優先登録などに興味を示すクライアントは多いだろう。

プレスリリースを出せばクライアントの問い合わせは殺到するだろう。

しかし、その先のユーザーのことを考えているだろうか?

ユーザー商品についてわからないことがあった際に、いきなり得体の知れない自動応答システムに話しかけるだろうか?

そもそも埋込み型の顧客問い合わせサービス(zopimやolarkなど)について、ユーザーの利用率が5%未満に過ぎない事例が多いことを知っているだろうか?

私もこれらの問い合わせサービスに関わったことがあるが、日本人性質としてチャットボットにいきなり話しかけるしかも想定された問答を想定通りの言い回しで)例は少ない。

ユーザーが使わなければクライアントも離れる。

無料期間でクライアント数は増えるだろう。

また、少ない額であれば導入する事例も増えるだろう。

しかし、ユーザーチャットボットを使うシーンは少ないだろうし、結果として売上にもコストダウンにも繋がらないケースがほとんどだろう。

厳しい言い方をすると、話を聞くチャットボット関連サービスは現状、ユーザーのことを考えず提供者側の視点しかない マスターベーショナリサービス」

なのである

2. そもそも自然言語処理の精度はそこまで高くない

自然言語処理簡単説明すると、コンピュータが会話を理解し適切な回答を返す処理」である

この技術は現状、正直言ってそこまで高いレベルに達していない。

言い換えるならばユーザー期待値提供できる技術レベルの均衡が取れていない。それどころかユーザーの求める自然対話レベルにはほど遠く失望させるものなのである

よく非技術者創業者流行ものが大好きなコンサルが「Deep Learningの登場で自然言語処理の精度が高まり自然対話を実現できる」とドヤ顔で語るのだが、これは大きな勘違いだ。

画像認識については、「文脈」などその対象以外の外部要因が発生することは少ない。

その為、その特徴量を見出しやすDeep Learningを使用することで精度をかなり高めることが可能である

しかし、「対象のもの」以外にも文脈や発する人間パーソナリティなど様々な外部要因が発生する対話において、特徴量見出しづらい。

特に日本語主語が省略される、漢字の読み方で大きく意味が異なる、「空気」を重視する等のハイコンテクスト文化であり、自然言語処理は難しい。

その為にDeep Learningが自然言語処理を圧倒的に成長させ、機械であることを感じさせない自然な応答」可能にさせることはほぼ不可能なのである

そんな精度をユーザーが求めていないのでは?と思うのは提供者側のエゴだ。

自然対話自分の想定していない回答が続くようであればユーザーサービスから離れてしまうだろう。

3. 対話である必要性が無い

飲食店などの予約がチャットボットでできる」系サービスも良く聞く。

彼らには必ず「それってチャットボットである必要性ってあるんでしたっけ?」質問するのだが、納得のいく回答を得られたことは無い。

対話のほうがかっこ良い、対話でできたら未来っぽい、アメリカ流行っているから、実際にそんな浅はかな考えで通用するほどビジネスは甘くない。

対話によりニーズを深掘りできる」等もよく聞くが、2で挙げた通りそんなに自然言語処理の精度は高くなく、深掘りする以前に離脱してしまうだろう。

「なぜ対話なのか」

「なぜ対話でなくてはいけないのか」

「なぜ対話サービスが従来型のリストサービスを上回るのか」

これらの質問に自信を持って答えられるだろうか。

それができない限りはビジネスは成立しない。

今すぐチャットボット事業を畳み、↑の質問に答えられる別の何かの可能性を考えたほうが良い。


以上である

チャットボットブームは、クライアントが導入した後に「ユーザーに全く使われない」と気づきその悪評が広まる、あと半年寿命といったところだろう。

そんなチャットボットだが、現状で可能性があるとしたらチャネルの1つ」として使う程度だろう。

LineFacebookメッセンジャー組み込み、「既に展開しているサービス広報役割として活用する」、「メディア記事配信させる」役割であれば優秀なツールとなるだろう。

繰り返しとなるが最後にもう一度。

願わくばこの記事が広まり、浅はかな「対話サービス未来」を断念し、より可能性の高いビジネスに切り替えて欲しい。

そしてこの記事を受けても尚、私の予測を上回り成功するチャットボットサービスが出てきてほしいとも思う。

トラックバック - http://anond.hatelabo.jp/20160714211518

記事への反応(ブックマークコメント)