天皇陛下が「生前退位」の意向を示されていることが明らかになった。憲法にいう象徴としての務めを十分果たせる者が天皇の位にあるべきだとの考えなのだという。そのお気持ちを尊重したい。
日本国憲法は第一条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と定める。
天皇陛下は一九八九(平成元)年の即位にあたっての記者会見で「憲法に定められた天皇の在り方を念頭に置き、天皇の務めを果たしていきたい」と述べるなど、憲法と天皇との関係について繰り返し表明されてきた。
八十二歳と高齢となった今も、憲法に定められた外国大使らの接受などの国事行為をはじめ、戦没者慰霊の旅や、大規模災害の被災地訪問など、皇后陛下とともに多くの公務をこなされている。
戦後、本土と切り離され、七二(昭和四十七)年まで米軍統治下にあった沖縄県を繰り返し訪問しているのも、憲法に定められた「国民統合の象徴」としての役目を誠実、かつ精力的に果たされているからだろう。
ただ、高齢に加え、心臓冠動脈のバイパス手術や前立腺がんの手術も受けている。公務の負担は重く、年齢に応じた公務の見直しが行われてはきたが、公平性の観点から抜本的な負担軽減には至っていないのが現状だ。
天皇陛下ご自身も昨年暮れ、八十二歳の誕生日を前にした記者会見で「年齢というものを感じることも多くなり、行事の時に間違えることもありました」と、老いや間違いを率直に認めている。
天皇陛下の負担軽減には憲法に基づき、天皇の名で国事行為を行う「摂政」を置く方法もあるが、天皇陛下が摂政ではなく、生前退位の意向を示されたのは、国事行為や公務は、天皇自らが行うべきだとの強い気持ちと推察する。
憲法を誠実に守られる気持ちを真摯(しんし)に受け止めたい。
天皇陛下は皇位を数年内に皇太子殿下に継承することを望まれている、という。生前退位は明治以降はなく、約二百年前、江戸時代後期の光格天皇が最後だという。
憲法は皇位について「国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定めているが、生前退位は、皇室典範に規定はなく、典範改正が必要になる。国会での落ち着いた環境での慎重な議論が必要となろう。
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