国側逆転敗訴 東京高裁が認定
厚生年金に加入する東京都内の事業主の男性が「社会保険事務所(現・年金事務所)の職員が改ざんした記録をもとに年金支給額が算定された」として国に無効確認を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は13日、男性側の主張を認める国側逆転敗訴の判決を言い渡した。杉原則彦裁判長は社保職員による改ざんを認定し「違法な働きかけを組織的に行っており、年金制度の根幹を揺るがせる行為だ」と指摘した。
年金記録改ざんは2007年以降に発覚し、社会問題化した。厚生労働省によると、改ざんを理由として支給決定を無効とする司法判断は初めて。
高裁判決によると、男性は年金保険料の滞納があった02年4月、社保職員から「標準報酬月額を約5年分さかのぼって引き下げれば滞納分はなくなる」と打診され受け入れた。
1審・東京地裁は男性の同意のもとに引き下げたとして訴えを退けたが、高裁は「男性が同意したのは滞納分を支払う見通しがなかったからで、金額(算定)の誤りは明らか」と認定した。厚労省年金局は「関係省庁と調整し対応を協議したい」とコメントした。【伊藤直孝】