南シナ海問題 仲裁裁判、フィリピンのねらい

南シナ海問題 仲裁裁判、フィリピンのねらい
南シナ海を巡る今回の裁判。フィリピン政府は、南シナ海を巡る中国の主張や活動について、15の申し立てを行い、仲裁裁判所に判断を求めています。フィリピンのねらいはどこにあるのでしょうか。
フィリピン政府が国際的な仲裁裁判を申し立てたのは、2012年にフィリピンの排他的経済水域内にあるスカボロー礁を中国が実効支配したことが背景にあります。
フィリピンのルソン島の西およそ200キロに位置する、スカボロー礁では、2012年、フィリピン海軍が中国の漁船を取り締まろうとしたところ、中国の海洋調査船が現れてこれを阻止し、両国の艦船が海上で2か月以上にわたってにらみ合う状態となりました。
この際、フィリピン政府は、国際法にのっとって平和的に解決するべきだとして、国際的な司法機関に判断をゆだねることを提案しましたが、中国政府は拒否し、その後、艦船を常駐させ、いまも一帯の海域の実効支配を続けています。
これをきっかけに、フィリピンは、政治的にも外交的にも解決にむけた努力を尽くしたとして、2013年1月、国連海洋法条約に基づいて仲裁を申し立てました。この申し立てを受けて、5人の仲裁人からなる仲裁裁判所が設置され、オランダのハーグでその後、およそ3年にわたって手続きが進められてきました。

申し立てまでの経緯

フィリピン政府が国際的な仲裁裁判を申し立てたのは、2012年にフィリピンの排他的経済水域内にあるスカボロー礁を中国が実効支配したことが背景にあります。
フィリピンのルソン島の西およそ200キロに位置する、スカボロー礁では、2012年、フィリピン海軍が中国の漁船を取り締まろうとしたところ、中国の海洋調査船が現れてこれを阻止し、両国の艦船が海上で2か月以上にわたってにらみ合う状態となりました。
この際、フィリピン政府は、国際法にのっとって平和的に解決するべきだとして、国際的な司法機関に判断をゆだねることを提案しましたが、中国政府は拒否し、その後、艦船を常駐させ、いまも一帯の海域の実効支配を続けています。
これをきっかけに、フィリピンは、政治的にも外交的にも解決にむけた努力を尽くしたとして、2013年1月、国連海洋法条約に基づいて仲裁を申し立てました。この申し立てを受けて、5人の仲裁人からなる仲裁裁判所が設置され、オランダのハーグでその後、およそ3年にわたって手続きが進められてきました。

最も注目 「九段線」の判断

フィリピン政府は、南シナ海を巡る中国の主張や活動について、15の申し立てを行い、仲裁裁判所に判断を求めています。
このうち、フィリピンが最も注目しているのが、中国が南シナ海を囲うように独自に設定した「九段線」と呼ばれる線についての裁判所の判断です。中国は、自国の地図などに「九段線」という9つの線を引き、その内側の海域は自国の管轄下にあると主張しています。これに対して、フィリピンは、「九段線」に基づく主張は国際法においては根拠がなく、無効であると訴えています。

「海洋権益」どう判断

さらに、フィリピンは、中国が南シナ海で造成した7つの人工島に、排他的経済水域などの海洋権益が認められるかどうかついても、裁判所に判断を求めています。

このうち、ジョンソン南礁やクアテロン礁など3つの人工島については、もともとは、国連海洋法条約の規定で排他的経済水域や大陸棚は認められない「岩」であるとフィリピンは主張しています。
また、ミスチーフ礁やスビ礁など4つの人工島については、もともとは、原則的に一切の海洋権益が認められない「低潮高地」であるとしています。
このほか、スカボロー礁についても、排他的経済水域や大陸棚といった海洋権益は認められないと訴えているほか、その周辺の海域でフィリピンの艦船の航行や漁業者の操業を違法に妨害しているなどと主張し、裁判所に判断を求めています。

国際法に基づき中国の権益拡大に歯止めを

フィリピンとしては、国際法に基づいて、中国が造成した人工島などは排他的経済水域や大陸棚が認められないことを証明することで、中国による南シナ海での権益拡大を防ぎたい思惑があります。
一方、南シナ海は、各国にとって原油や液化天然ガスなどのエネルギー資源を輸送する重要な海上交通路=シーレーンで、南シナ海での軍事的な緊張の高まりは、世界経済に大きな影響を及ぼすおそれがあります。
フィリピンは、仲裁裁判によって国際世論を味方につけ、圧倒的な軍事力を背景に海洋進出を強める中国の動きに歯止めをかけたいねらいもあります。