田原総一朗「日本会議と公明党、安倍首相はどちらを選ぶのか」
10日に行われた参院選で、自民党と公明党の与党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党など、改憲勢力の議席を合わせると162議席を確保した。憲法改正の現実味を帯びた今、改正に慎重な姿勢を見せる公明党と憲法改正を訴える任意団体「日本会議」の存在がカギになるという。ジャーナリストの田原総一朗氏が解説する。
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参院選は自民党、公明党、おおさか維新の会の改憲勢力が憲法改正の発議に必要な3分の2を確保する結果に終わった。安倍政権の勝利と言えるだろう。
安倍政権は今回の選挙でも経済を前面に出し、憲法改正という真の争点を隠した。これまでも特定秘密保護法や安保関連法という争点を隠して選挙を行っており、いわば常套手段である。
野党側は戦い方が下手だった。「憲法改正反対」を訴えたものの、民進党も実は護憲ではないため「安倍内閣での改憲に反対」という言い方になり、リアリティーがない。もっと具体的に、自民党が2012年に発表した憲法改正草案の問題点を突くべきだった。
自民党の改憲案の本当の問題点は9条ではない。例えば現行憲法の21条では言論や集会、結社の自由が保障されているが、自民党案ではこれに「公益に反しない限り」という趣旨の条件がつけられている。家族を大切にすることを国民に義務づけてもいる。憲法とは政府を縛るものなのだが、自民党案は国民を縛るものになっているのだ。野党は安全保障の問題にばかり注目して、こうした点の訴えが弱かった。
改憲勢力で3分の2をとった以上、安倍首相は任期中に悲願である憲法改正の実現を目指してくるはずだ。今後の焦点は、実際に憲法改正をしようという動きが出てきたとき、公明党がどこまで壁となれるかだ。かつての自民党ならば党内に非主流派や反主流派がいて歯止め役になっていた。自民党内に首相への対抗勢力がいなくなってしまった今、その役割を公明党がどこまで担えるのか。
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