クローズアップ現代

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No.36112015年2月4日(水)放送
“分断”の危機は避けられるか ~仏テロ 広がる波紋~

“分断”の危機は避けられるか ~仏テロ 広がる波紋~

テロ後のフランス 深まる社会の溝

ゲスト渡邊啓貴さん(東京外国語大学大学院教授)

●今のフランス社会の空気をどう感じる?

今、フィルムでもありましたように、全部とは言えませんけれども、やっぱり彼らムスリムの人たちの大変な疎外感、そうした人たちの社会不満というのが1つ高まっている状況であるかと思います。
そういう意味では、今、とても不安定な状態にあると思います。
ただし、一方で普通のフランス人はイスラムをどう思っているのかといいますと、多くの人は平和主義、イスラム教徒は平和主義だということでは、過半数以上の人がそれを支持していると思います。
また、問題はどこにあるかというと、平和にフランス人と共存しているイスラム教徒の人たちと、過激派といいますか急進派の人たちですね、これはやっぱり区別すべきだという考えの人たちがフランス人の中に、マジョリティーにあると思います。
(冷静な人々も多い?)
そうですね。

●政教分離、表現の自由、多様性の尊重を掲げた同化政策 うまくいっていなかった?

そうですね。
フランスはもともとフランス革命に代表されるような、自由、平等、博愛という理念でやっぱり、国の骨格をつくってきた国です。
それと原理原則というものがだんだん、かつてのような形では維持できなくなっている。
これは一般によくいわれるように文化の多様性とか、今回で言えば、違う宗教といかに共存していくかという問題になると思います。
そういう意味で、現実社会はフランスも次第に多様化、多文化してきているにもかかわらず、制度のほうが必ずしもそれに追いついていない。
伝統的なフランスの社会、国家の在り方というものがやっぱり強く残っていると。
こうしたところで、移民の第1世代と第2世代ということになりますと、その対応や感じ方が、やっぱり違ってくるんだと思います。

●表現の自由を巡るフランス内での議論 移民への寄り添いかたは?

そのへんが、大きな今回の問題の中心的な問題だと思いますね。
というのは、フランスは今まで表現の自由といってきた、それ自体は普遍的な考え方だと思いますけれども、やはりどの文化も、やっぱりそれなりの固有性、特徴を持っているわけですから、自由といったときの、ちょっと難しい言い方になりますけれども、自由の中のスタンダードといいますか、どこまで許容範囲であるということが、今、議論されている、一番最も重要なことだと思います。
特に第2世代の人たちはフランスに溶け込もうとして、そして、そういうふうな教育を受けたにもかかわらず、やはり自分たちの出自とか宗教、特に生活に根ざした宗教ですから、非常にそういうところが受け止められにくい、あるいは適合しにくいということになります。
そういう意味で、フランスが今まで持っていた表現の自由にあるスタンダード・基準が、彼らにとっては逆に一方通行的なものになって見えるんではないかと、そういう状況ではないかと思います。

●第2世代の人々の疎外感 社会的な立場、経済的な状況も影響している?

それはやはり、第1世代が一生懸命勝ち得ようとしてきて、成功例もありますし失敗例もありますけれども、そうした中で一番大きな問題、核心にあるのは、貧困ということだと思います。
そういった社会格差、こういったところでのいわば弱者に対する対応ということになろうかと思います。
そういう意味では、今回のテロが移民系の人によって行われたということは、本来、政治的な問題であるテロの問題が、社会問題、貧困の問題と、あるいは移民の生活状況と社会的な存在感とが結び付いてきているということであろうかと思います。

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