【石坂浩二 終わりなき夢】(29)「相棒」高い完成度に感心
「相棒シーズン11」(12年、テレ朝)の話をもらった時、どういう形で出演するか分からなかった。演じる甲斐峯秋なる人物は警察の偉い人(警察庁次長)で、息子(成宮寛貴)がいて対立しているぐらいしか教えてもらってない。そのうち実家は資産家で奥さんはいるけど米国に行っていて…。最後には息子が犯罪を犯してしまった。成宮君は重罪じゃないから仮釈放で1年ぐらいで出所できるはずで、ドラマにどう絡んでくるかも興味がある。
番組はぽつぽつ見ていて、日本の刑事物では珍しく情緒に走らず理路整然と解決するから感心していた。よくあるタイアップで登場する旅館や露天風呂、観光地も出てこないのがいい。私が撮入した時には現場はいいムードで既に完成していると感じた。どんな展開でも堪能できる作品に仕上がって視聴率も高いのもうなずける。水谷(豊)君は完全に杉下右京と合体していた。半年も役を演じれば身についてくるが十数年もやっていればなおさらだ。私も金田一耕助を演じた時は、そんなしゃべり方になっていたと思う。「極道の妻たち」で姐(あね)さん役だった岩下(志麻)さんも電話でドスの利いた声で『誰や!』と、やったことがあると言っていた。
映画「図書館戦争」シリーズ(13年~)では関東図書基地指令の仁科巌を演じた。昨年公開された映画では、仁科が犠牲者を出した責任を取って図書隊を去る姿があったので今後はどうなるか分からない。この映画の不思議なところは犠牲者は出るが死んだかどうか分からないようにしている点だ。もし、本気で戦闘シーンが起きれば自衛隊や警察も黙ってはいないだろうに…。言論弾圧を題材にしている、このアイデアは面白いと思う。
共演した榮倉(奈々)さんは、体が大きい中にも古風な雰囲気を感じていた。実際に絡むとどこかに恥じらいがあり、より日本的だと実感させられた。岡田(准一)君は映画よりもNHK「ザ・プロファイラー」での司会の印象が強い。2回ほどゲスト出演したが自身の立ち位置をしっかり理解していて感心した。歴史は勉強しても伝聞に過ぎないし、ひとつひとつ線を引いて考えないと片寄ってしまう。そんな線引きのできる役者さんだと思う。芝居も理路整然とした演技で情緒に流されないセリフ回しをしている。少し二枚目過ぎるのが難かな(笑い)。
石坂浩二として今年で55年、連載では学生時代やデビュー時のことや大河ドラマ、そして菊田一夫先生や市川崑監督との触れ合いを紹介した。今回は取り上げられなかった「スター千一夜」や「世界ウルルン滞在記」、そして料理の話など…。機会があればまたお話ししたい。(構成 特別編集委員・国分 敦)=おわり=
俳優・成宮寛貴(ドラマ「相棒」で共演)「お会いする前から博識な方というイメージはありましたが、直接お話をさせていただくと、すごくミステリアスで色っぽい方です。石坂さんの描かれる絵にも興味があるので、今度アトリエにお邪魔してみたいです。その時はぜひ、モデルにしてください!」