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あうすどいちゅらんと

ドイツの音大でトランペットを勉強中の学生が綴るドイツのこと

トランペットの2000年の歴史についてわかりやすく説明する

トランペット

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トランペットといえば

吹奏楽では花形、オーケストラではここぞという盛り上がるところで登場

ビッグバンドでもリーダー、ジャズコンボでも主役

金管バンドでもコンサートマスター

 

とまあどんな音楽やる時でも一番目立つしかっこいい楽器なわけです。

 

幅広いジャンルの音楽をできるこの楽器も

長い歴史の中で今のようなスタイルが生まれ、たくさんの種類ができていったわけです。

 

原型はブブゼラ

 

以前ワールドカップの時に話題になったこの楽器。

筒に唇を当ててブーってやることで大きい音を出す。

像の鳴き声みたいなアレです。

 

あれはがトランペットの原型であり、トランペット奏者なら普通に美しい音が出ます。

 

Youtubeで探したらドイツ人がブブゼラでボレロ吹いてるのがありましたw

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このような楽器はアフリカだけでなく世界各地にありました。

日本では法螺貝

 

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この人うめえ、、、

 

とまあこういったトランペットの原型は新石器時代の頃からあったといわれています。

 

金属のトランペット

金属のトランペットが最初にできたのはエジプト王朝時代と言われており

ピラミッドからは青銅製などのトランペットが出土されています。

 

まあこの頃のやつもただの筒。

ブブゼラが金属になっただけみたいなものです。

 

ここからの進歩は本当に1000年くらいありません。

 

ツィンク

10世紀になりルネサンス音楽が盛んになってきた頃に

ツィンクという楽器が生まれます。

 

これは簡単に言うとリコーダーにトランペットマウスピースをつけて

唇の振動で音を出す木管楽器。

 

木管のような金管のようななんともあたたかい音がして

この頃はよくメロディー楽器として使われていました。

 

でもあんまりにも演奏が困難すぎることや音量がでないことなどから

トランペットによって淘汰されてしまい長い間存在が忘れられていました。

 

でもBruce Dickeyという人が(存命)この楽器の再興に尽力し現代に蘇りました。

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それにしても本当にこの人は素晴らしい…

 

ちなみにはドイツとスイスではツィンクを専門に音大で学ぶことができます。

Dickeyの功績により数々の素晴らしいツィンク奏者が輩出されました。

Leipzig,Trossingen,Bremen,Baselで勉強できます。

 

Dickeyはスイスのバーゼルで教授をしています。

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オーケストラの中にはこんな感じ。

 

ナチュラルトランペット

そして1400年頃になり現在のトランペットの倍の長さの今ではバロックトランペットと呼ばれているものが出現し始めます。

 

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こんなやつ。

 

これは穴が開いていますが当時はありませんでした。

 

ただの管なので音階は吹けません。

だからイメージとしては太鼓です。信号ラッパみたいな役割。

 

しかし管を長くすると自然倍音(複雑なので説明は省きますが)が増えることによって

高音域だけは音階が吹けるようになりました。

 

ただこれは何も音を補正する機能がないので

音によってはなんとも調子の外れた、音痴な感じになってしまいます。

 

当時はそれを唇の締め具合とかそういうものすごく難しい技術で補正していました。

 

貴族の楽器

 前にも少しだけ書きましたが

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 その当時トランペットは演奏が非常に困難であり

技術は才能ある者が選ばれ一子相伝というくらいに封建的な中で伝承されていきました。

 

この楽器を演奏することが許可されるのはあ貴族のみで一般人は触れることもできなかったと言われています。

 

トランペット奏者には特別な地位が与えられ、その他の楽器奏者の何倍の給料をもらっていました。

 

そのかわり

ミスったら死刑

だったという逸話ものこされているほど過酷なプレッシャーの仕事でした。

 

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王宮ではこのようなファンファーレ

王の御前には必ずトランペット

 

黄金時代へ

バロック期はトランペットのバロック期と呼ばれていて

たくさんがトランペットのために曲を書きました。

 

特にバッハは自身の曲の中にトランペットを多用していています。

カンタータやオラトリウムなど宗教的な曲には必ずトランペットに大事なパートを書いています。

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テレマンやトレッリ、レオポルト・モーツァルトなどがソロ曲も書いています。

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すっかりソロはなくなってしまう。

残念なことに、音楽のスタイルの変化やヴィルトゥオーゾ(技巧的な)の台頭によって

トランペットはすっかりソロの楽器の立場を失ってしまいました。

 

だからオーケストラではドミソくらいとリズムや長い音を吹くくらいの役割しかありませんでした。

 

モーツァルトやベートーヴェンはホルンのための曲は書いていますがトランペットへは書いていません。

 

救世主

しかし1796年、ハイドンがトランペット協奏曲を作曲します。

これは先ほどのナチュラルトランペットのためではありまえん。

 

アントン・ヴァイディンガーというトランペット奏者が

キー・トランペットという楽器を発明しました。

 

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これはナチュラルトランペットに木管楽器のようなキーを付けたもので

これによってついに半音階の演奏が可能になったのです!

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今までドミソとしか吹けなかった音域で

ドレミ(in Es)と始まったのは当時のトランペット吹き達には衝撃だったことでしょう。

 

これに触発され、フンメルという作曲家も協奏曲を作曲します。

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やったぜ!!

 

でもこの二つの初演は成功とはいえませんでした。

やっぱりナチュラルトランペットに比べると音が細くなってしまいますし

新しいものをとにかく嫌う感じあったからでしょう。

 

結局この楽器がオーケストラで使われることはありませんでした。

 

でもこの2曲ができるきっかけを作った発明者の功績はすごいです。

 

アドルフ・サックス

サキソフォーンを発明したことで有名なアドルフ・サックスが

サクソルンと呼ばれるバルブ付きの金管楽器の発明に尽力しました。

https://www.youtube.com/watch?v=hR8H8CSojis

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バルブはこれです。

それでサックスはユーフォニウムやフリューゲルホルンを作りました。

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これはすぐにトランペットにも!!

といきたいところでしたが

トランペットは昔からの封建的な性質を持ったままだったので

そんなことはありえないという感じでした。

 

そしてまずコルネットにつけられました。

コルネットはポストホルンという

郵便屋さんのお知らせとしてのホルン(ドイツのポストのシンボル)を起源としている楽器だったので保守的な制約は何もなくバルブをつけることに成功。

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そしてようやく今のトランペットのスタイルになっていくわけです。

 

コルネットの黄金時代

コルネットはどんなテクニカルなことも可能にする楽器だったので

どんどんコルネットのための曲が書かれていき

スタープレイヤーもうまれ、パリの音大にはコルネット科が創設されました。

 

そのスタープレイヤーこそが

トランペット吹きなら誰もが知っているアーバン

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彼は世界中で今でも誰もが使っている教則本を書いた最も重要な人物。

 

 

そして多くの作曲家がコルネットの曲を書くようになります。

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トランペットに比べ柔らかい音色

 

トランペットにもピストンが

ピストンの有用性をコルネット証明し

ついにトランペットにもピストンがつけられ始めます。

 

それでも

ナチュラルトランペットの音がトランペットだ!

というものはしばらくの間存在し

ブラームスが交響曲を書いていた1880年代にはもうとっくにピストントランペットができていましたが

ブラームスはナチュラルトランペットを指定し続けました。

トランペットパートの楽譜はベートーヴェン時代のものと大差ありません。

 

しばらくは混在

ロマン派時代はオーケストラの中で、バルブのトランペットとコルネットは分けて書かれていました。

 

その当時のトランペットは今のトランペットとナチュラルトランペットのちょうど間位のF管でした。(だからIn Fで書かれている)

 

そしてそれより管の短いA管コルネットも2人という感じ。

 

例でいうとベルリオーズの幻想交響曲があります。

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このように違った役割が与えられています。

トランペットにシグナル的要素が多く、コルネットは技巧的といったところ。

 

ソロ曲が1曲

ロマンに区分される1899年、トランペット奏者であったオスカー・ベーメがトランペット協奏曲を作曲。

ロマン派唯一のトランペット協奏曲。

 

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高橋先生の音源が最高です。

 

フランスでトランペットのソロが再興

フランスのパリ国立高等音楽院のトランペット科の試験のために

20世紀に入るといっきに大量のソロ曲が作曲されるようになり

それらはとても重要なレパートリーです。

 

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ボザはほかの金管のためにもたくさんの曲を書いています。

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教本も書いているシャルリエ

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今でも試験でよく演奏します。

フリードリヒのCDもおすすめ

 

このCDにはほとんどのフランス小品と解説も入っています。

最も重要な作品群

そして1930年代にはヒンデミットとピルスというドイツの作曲科がとても重要なソナタを作曲。

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そして偶然にも高田信一という日本の作曲家もほぼ同時期に初のトランペットのソロ曲を書いています。

 

このCDに3つとも収録されています。

 

それからジョリヴェ、トマジ、デザンクロ、などが一気にトランペット協奏曲を作曲しました。

 

オーレ・エドワルド・アントンセンの録音が最高なのでおすすめ。

 

トマジは色彩あふれる繊細な音楽

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ジョリヴェは野性的でさらに前衛的

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ジョリヴェ1番

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これらの曲は演奏が非常に困難で、コンクールの本選などで必ず課されます。

 

ちなみに僕はこの時代が一番好きです。

 

最近発掘された曲で、同時期に日本人の大澤壽人という人もトランペット協奏曲を作曲しています。

この中で挙げたどれよりも難しいですあり得ない曲。

これをドイツの巨匠に紹介したら興味持ってもらってレコーディングとかするんじゃないかとちょっと狙ってます。

 

このCDに収録

 

そして幅広いジャンルへ

こうしてバルブトランペット完全に楽器としての立場を確立しました。

 

そしてジャズの花形になり、ポップスにも欠かせない楽器となっていったわけです。

 

ジャズはマイルスデイビスが好きなのでCookinというこのアルバムおすすめします。

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かっこいい…

 

オーケストラの重厚な音からこんな渋い音出せるってすごくないですか。

 

それからポップスの超ハイトーンまで。

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メイナード・ファーガソン超すごい。エリック宮城さんの師匠です。

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やっぱりラッパさいこー

トランペットの1000年以上の歴史を説明してたらも5000字近くいってしまいました。w

トランペットがどれだけ好きかどうか伝わりましたでしょうか。笑

 

ほとんどの人が読み飛ばしたかそっとじした気もしますが

これを全部読んだならあなたはすでにとてもトランペットに詳しい!

不真面目な音大生よりもずっと!笑

 

途中から全然わかりやすくないただのレパートリー紹介になってねえかと思ったんですが

トランペットのことについて調べてこのページを見てくれた人がいたならばきっちり書いた方がいいだろうと思ってがんばりました。

 

かなりざっくりといきましたがトランペットってこんな楽器です。

 

ちょっとでもトランペットに興味持ってもらえたり

なんだこりゃかっこいい!!

とおもっていただけたらうれしいかぎりです。

 

トランペット始めてくれちゃったりしたらもっともっとうれしいです。

 

歳をとってから初めても吹けるようにはなる楽器なので

ぜひぜひみなさんラッパをやりましょうー!