【石坂浩二 終わりなき夢】(特別編)慶大先輩・別当に憧れ大の虎党に

2016年5月6日10時30分  スポーツ報知

 子供の頃に、ボクシングのピストン堀口の試合を見ている。近所の田園コロシアムで武藤選手と戦っていた。自分の本名と同じ武藤はKOされたが、堀口が恐ろしく強かったことは覚えている。若くして亡くなったが、もし世界戦が実現していれば絶対にチャンピオンになれただろう。ボクシング人気に火が付くのはテレビが出現してからで、この頃はやっぱり野球が圧倒的な人気だった。

 私も夢中になっていた。帆布のできそこないに革を張ってグラブを作り、近所の仲間と野球に興じていた。そのうち「紅梅キャラメル」が発売される。1箱10円でおまけに巨人軍選手のカード1枚が入っていて、選手9人と監督の計10枚集めるとボールやグラブとか豪華景品がもらえた。近所に景品交換所があったから、余計にみんなハマった。学校へ持って行くのは禁止だったが、内緒で持ってきては見せ合って楽しんだ。

 仲間同士で10枚集めようとしたが、出るのはウォーリー・与那嶺さんばかりで、とにかく水原茂監督のカードは出ない。一度、友達のパン屋さんでキャラメルを売っていたので「入荷したら箱ごと持ってこい」とお金を出し合って箱買いした。開けてみたら監督のカードが1枚も入ってなくて「メーカーに抗議しよう」と本気で怒ったこともあった。

 私は阪神ファンだ。なぜ虎党になったかというと往年の名選手、別当薫さんがいたから。終戦後、別当さんが慶応大学に復学した時の早慶戦を観戦している。慶大にいたいとこに神宮球場に連れていってもらったが、生で見た別当さんは背が高くてカッコいい、しかも主将で4番と実力もある。以来追っかけて入団先の大阪タイガースはひいきとなった。おやじは巨人ファンで後楽園で巨人―阪神戦を見に行ったものだ。

 別当さんが1950年にパ・リーグの毎日に移籍する。本堂保次、土井垣武らも阪神から引き抜かれた。今でも毎日新聞は恨んでいますよ(笑い)。タイガースに残った藤村富美男さんが「ここで俺たちが踏ん張らないと、阪神が潰れる」という男気ある発言を耳にして、ここでタイガースを見放すわけにはいかないと、別当さんとは別でずっと応援することに決めた。

 選手は神様と思っているので、プライベートではあまり付き合わないようにしている。今年は江越(大賀)やルーキーの高山(俊)とか若手をバンバン使い、2軍に落としたベテランは上げたらすぐ起用。躍動感あるチームに変貌し優勝できると思っている。(大学の)後輩の高橋由伸監督ね…。引退の仕方がちょっと寂しかった。もう少し現役をやりたかったんじゃないかな。今季は阪神と巨人で引っ張っていってほしい。(構成 特別編集委員・国分 敦)

 ◆別当 薫(べっとう・かおる)1920年8月23日、兵庫・西宮市生まれ(享年78)。慶大卒業後にノンプロ全大阪から48年に大阪タイガース入り。50年に毎日に移籍。引退後は毎日・大毎、近鉄、大洋、広島の監督、横浜大洋の球団代表を務めた。本塁打王1回、打点王1回(いずれも50年)。ベストナイン6回。

 ◆星野仙一監督へプレゼント「長嶋茂雄さんには監督就任の時に、油絵を贈りました。星野監督へも2003年に阪神がリーグ優勝した時にプレゼントしました。優勝したら絵を贈ると公約していましたから」

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