韓米両軍当局が高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備地域を「慶尚北道星州星山里一帯」と事実上決定したのは、軍事的な効用や韓国内外での波紋などを総合的に考慮した選択とみられる。
両軍当局は、軍事的な効用を評価するに当たり、在韓米軍の装備や兵力を最もうまく保護できる地域を優先要素として考慮してきた。米軍の兵力や装備の集結地としては竜山基地や、米第2師団が集結する京畿道平沢基地、在韓米空軍の中心戦力がいる烏山基地、有事の際に米軍が使う戦車・装甲車など重旅団用の装備が保管してある慶尚北道漆谷郡倭館(キャンプ・キャロル)などがある。
米軍は、有事の際に大規模な増援兵力および装備が入ってくる釜山港と金海空港を、北朝鮮のミサイル攻撃から守ることも重視している。これらの中で、竜山基地が移転する平沢にTHAADを配備する場合、韓国首都圏や米軍中枢の防御には役立つものの、釜山港や金海空港の防御には効果がない。逆に、慶尚北道にTHAADが配備されると、韓国首都圏の防御は難しい一方、倭館や釜山港・金海空港、原発などの防御には役立つ。
韓国軍当局は、もともとは在韓米軍基地を中心に敷地の候補を検討していたという。THAADは在韓米軍の武器として配備されることに加え、既存の米軍基地とは別に新たに敷地を購入し、米軍へ提供するのは困難だからだ。しかし「THAADのレーダーは人体に危険」という批判の声が予想より大きな波紋を呼び、候補とされた地域が激しく反発する状況になった。既存の在韓米軍基地は、ほとんどが人口密集地の近くにある。慶尚北道漆谷の人口はおよそ12万人、慶尚南道梁山は31万人、京畿道平沢は46万人だ。このため人口密集地を避けることが、THAADの配備地域を決定する上で考慮すべき重要な要素となった。これとともに、射程200キロに達する北朝鮮の300ミリ新型放射砲(多連装ロケット)の攻撃圏から外れていなければならず、さらに中国をなるべく刺激しないよう、できるだけ南に下げる方が問題を減らせると考えられた。
米軍基地を活用するのは現実的に困難とみた韓国軍当局は、韓国軍の防空基地(ミサイル基地)を代案として取り上げたという。韓国軍が駐屯しているので新たに敷地を購入する必要がなく、また基地は山の上にあるので、レーダーが危険という批判をめぐる負担も相対的に小さくなるからだ。両国の実務調査団は、これらの候補のうち、周辺の人口が多くないところを集中的に訪れた。こうした基準により最大の効果が得られる場所として、星州が選ばれたと考えられる。THAADミサイルの最大射程は200キロあるので、星州にTHAADを配備すれば、平沢米軍基地や群山空軍基地、陸・海・空軍本部がある忠清南道鶏竜台、江原道江陵付近まで北朝鮮の弾道ミサイル攻撃から守ることができる。かつ、京畿道南部までは北朝鮮の弾道ミサイルを防げる。
また、在韓米軍が運用するTHAADの射撃コントロール用レーダーは、探知距離が600-800キロある。星州にTHAADを置けば、北朝鮮全域がレーダーの探知範囲に入る一方で、中国地域は山東半島の端の部分や中朝国境地帯の一部しかレーダーの探知範囲に入らない。これとともに、星州の全人口はおよそ4万5000人で、THAAD配備の有力候補地に挙げられたほかの地域より相対的に人口の密集度が低い。韓国軍の消息筋は「星山里基地は付近の地域より高いところにあり、周辺に民家は少なく、レーダーが人体に危険だという批判を避けることができるだろう」と語った。
THAAD配備に伴い、現在星山里基地にいるホークミサイルと約170人の兵員は、別の場所へ移動することになる。消息筋は「大邱の軍空港(K2)の移転先近くに星山里基地のホークミサイルを移動配備し、THAADの作戦基地を守る役割を受け持たせる可能性も一部ある」と伝えた。しかし、THAADを星州に配備するとソウルなど韓国首都圏中心部の防御は難しく、星州地域の住民もTHAAD配備反対に乗り出していることなどは短所に挙げられる。THAAD配備のため既存の韓国軍防空基地を移転させることに伴う費用の問題なども、課題になるものとみられる。