1300万都民のリーダーを選ぶ東京都知事選が、きょう告示される。

 立候補を表明しているのは、自民党衆院議員で元防衛相の小池百合子氏、元岩手県知事で編著「地方消滅」で人口急減社会に警鐘を鳴らした増田寛也氏、ジャーナリストで「憲法改正への流れを変えたい」と手を挙げた鳥越俊太郎氏ら。

 増田氏は自民、公明などが推す。これに反発する小池氏との間で自公陣営は分裂選挙となる。

 鳥越氏は民進、共産、社民、生活の野党4党が参院選での共闘の流れを引き継ぎ、野党統一候補として支える。

 元日弁連会長で前回は共産、社民両党の推薦を受け、次点だった宇都宮健児氏も、いったん立候補を表明した。

 だが、野党票の分裂を避けようと、野党4党が鳥越氏への一本化を呼びかけた。宇都宮氏もこれに応じ、最終的に出馬を取りやめた。

 各政党の候補者選びが参院選後にバタバタと進んだこともあり、都民にとって、各候補が何をめざすのか、その政策を聞く機会が乏しいまま選挙戦に突入することは残念でならない。

 だからこそ、各候補に求めたい。「東京の未来」をどう描くのか、17日間の選挙戦を通して具体的な政策を競い合うことによって、有権者に判断基準を示してもらいたい。

 都政が抱える課題は明白だ。

 東京五輪・パラリンピックの準備が迫られるのはもちろんのことだ。約8千人といわれる保育所待機児童の解消、首都直下地震への備えも急務だ。

 新知事が任期を終える2020年から都は人口減少に転じ、2035年には都民の3人に1人が65歳以上となる。「巨大都市の超高齢化」という未曽有の難問に直面することになる。

 きのう日本記者クラブで行われた主な候補の会見でも、こうした点が論点となった。

 逆にいえば、これらの課題を「解決する」と言うだけでは何も語っていないに等しい。

 大切なのは、山積する課題に優先順位を示し、将来への大きな道筋を示すことだ。

 少子高齢化、東京一極集中をはじめ全国共通の課題にメッセージを出し、時には国政にもの申す発信力も「首都の顔」として大事な資質だろう。

 無党派層の多い都知事選は、知名度が優先されがちだ。それではダメだというのが猪瀬、舛添両都政の停滞で学んだ教訓だった。その苦さを、17日間の選挙期間中、忘れずにいたい。