minority resistance

pcfx復活ブログ

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

名古屋あじ

2011年02月28日 | たべもの のみもの
「名古屋めしはマズい」ともっぱらの評判だ。味覚などはおおかた相対的な物なので、
「絶対味覚」を信望する気にはなれない。視覚と比較すれば味覚などはセンサーの量が
少なすぎ、また度々嗅覚と未分化に語られ、多分に主観的過ぎて議論に値しない。
感想や信望として味覚を語るのは楽しいが、自身の感覚を絶対値と盲信した拒絶と嫌悪の
味覚の表明をする事からは何ら得る情報がない。しかしそれは誰しも表明したくなる
普遍的な心情であり、「あれはマズい、これはマズい」と語りたくなるのが人情だ。
人情の否定は大局を見誤る原因となるので、「名古屋めしはマズい」と堂々と言うべき
だとpcfxは考える。


pcfxは博多生まれの名古屋暮らしなので生粋の名古屋人ではない。しかし名古屋に住んで
もう長いので準名古屋人と言えるかもしれない。
博多から名古屋に移り住んだ頃、名古屋の料理はひと通り食べた。意外においしかった
のは「味噌かつ」「味噌やっこ」「味噌煮込みうどん」などの味噌料理。味噌煮込み
うどんの麺の固さには多少戸惑った。名古屋では当たり前とされる「赤だし」という
赤味噌の味噌汁もすぐ好きになったが、「ひつまぶし」や「きしめん」は特においしい
とは感じなかった。うな重やうどんとの大きな違いを感じない。「あんかけスパゲティ」
は今では大好物だが、初めて食べた時は「ミートソース」と色味が似ていたため、その
つもりで食べてギャップに苦しんだ。名古屋の喫茶店などで「ミートソーススパゲティ」
を注文すると、ステーキなどのように鉄板の上に乗った状態で提供される場合がある。
スパゲティの下に卵が敷いてあり、麺は油で炒めてある。「洋食」というカテゴリに
入れられているのだろうか。

今では全国に名の広まった「マウンテン」という喫茶店があり、昔から「罰ゲーム」や
「怖いもの見たさ」や「過食者御用達」的な使われ方をしてきた店だ。基本的に量が
多く、普通の店の倍量がこの店の「並」だ。大盛りを注文する際は「それはいいけど
残すなよ」という念押しがある。また「甘口イチゴスパ」に代表される珍奇な味付けと、
食後の皿に残る大量の油が客を食の臨界点に誘う。だからといって大勢で一皿という
行儀の悪い注文は受け付けておらず、一人一品が掟である。では飲み物だけ、とコーヒー
フロートなど注文しようものなら、ビールジョッキにガムシロ入りアイスコーヒーが
満タンであり、その上にてんこ盛られたバニラアイスがいつまで食べてもなくならず、
コーヒーを飲むまでに相当の発掘作業が義務付けられる。
これは「名古屋めし」ではないし「名物」でもないただの「変わった店」だが、この店を
目的に遠方から来客がくる。話のネタには最適の店だ。


名古屋人はなんでも味噌をかけるというが、それは正解でもあり間違いともいえる。
毎食何にでも味噌をかけるのではなく、「たまに味噌カツなどを食べたくなる」のだ。
その一方で、「つけてみそかけてみそ」という調味料商品がスーパーで売っており、
家庭料理で「一味足りないな」と感じた時に味噌をかけるのだ。毎食ではない。
名古屋人だってソースのかかったカツを食べたくなる時はあるし、目玉焼きには
ソースか醤油がマヨネーズかオーロラソースかでモメごとに発展することはある。つまり
「味噌」は調味料の選択の一つであり、味の幅が拡がっているだけなのだ。もちろん
問答無用で味噌味が突き出される事もあるが、それはそれとして試しに食べてみては
どうか。

味噌の好みは愛知県でも東部の三河地方に強く、尾張ではそれほどでもない。三河に
行くとそこかしこに「五平餅」の看板を見かける。尾張は「みたらしだんご」が優勢だ。
五平餅はワリバシのような木の棒に餅米を小判状にとりつけ、味噌をつけた食べ物だ。
三河はどこへ行っても五平餅五平餅で、「五平餅しかないんかい!」とツッコミを
いれたくなるほどの五平餅空間だ。甘くて赤い豆味噌から身を守る術はない。

ちなみにpcfxは、目玉焼きに何をかけるかは固定されていない。醤油もソースもマヨも
オーロラも味噌も気分次第で、たまに塩だけ、塩コショウだけという選択もある。
焼き加減にもこだわりはなく、レアもミディアムレアもウェルダンもアリだし、片面も
両面も思いのままだ。シングルでもダブルでもいい。そんなことは焼き始めてから
考えればよく、食べる直前に決定すればよいのだ。卵料理はもっと自由なものだった
筈だ。いっそ焼かずにフライでも茹でてもいい。日本なら生という選択肢すらある。
そこまで言うなら鶏の卵でなくともよい。手に入るのなら鴨でもアヒルでもダチョウでも
構わないし、爬虫類も鳥とさほど変わりはない。実際海外で何度も食べたし、どれも
うまかった。



名古屋には九州出身者が多くおり、その九州人の好みが名古屋の食文化に影響を与えて
いるケースも多い。名古屋と九州の繋がりは古く、信長の死後、織田に仕えていた家臣
の一部はそのまま秀吉に仕え、文禄の役(俗に朝鮮出兵)の際に九州まで連れてこられた
兵や九州に領地を与えられた武将が、そのまま九州に住み着いた。そのせいで今でも
名古屋に親戚を持つ九州人が多いのだ。pcfxもそのような家系であり、博多と名古屋や
岐阜に縁者がいる。名古屋に引っ越したのもその縁あってのことだ。

また、新しいところでは戦後に集団就職で名古屋に出てきてそのまま住み着いた人や、
最近ではトヨタの工場などに就職を求めた九州人も多い。中間の大阪をすっ飛ばして
名古屋にくるのも昔からの地縁があるからだ。一方、ここ最近の不況になるまで名古屋で
東北人を見ることは稀で、東北の影響を受けることはほとんどない。彼らは皆東京で
止まってしまう。多くの名古屋人にとって東北は縁のない地域であり、生の東北なまり
を聞くこともない。pcfxも東京で電車に乗った際に聞こえてくる東北訛りや、旅行会社の
車内広告に「東北の旅」という言葉を見ると、遠い所に来たんだな、という感慨がある。
「東北の旅」は名古屋の日常では目にしない。

名古屋で一番有名なラーメンチェーンに「すがきや」がある。スーパーなどのテナント
で入ってる店が多く価格も安いので、名古屋人の子供はこのラーメンを食べて育つ。
この「すがきや」のラーメンのスープは「和風とんこつ」と言われており、豚骨をベース
に魚介のうまみを織り込んでいる。また「すがきや」以外にも昔から豚骨ラーメン店が
多く、醤油ラーメン専門店を探す方が苦労する。いかに九州の味が浸透しているかが
わかる。「手羽先」は九州でいうところの「かしわ」であり、あまり身がない部位で
安いことから庶民に親しまれたものだ。九州は煮込み、名古屋では揚げるのが一般的だ。
アメリカの黒人がフライドチキンを食べる心情に似ている哀愁の料理だ。



一方、名古屋名物といわれている「きしめん」は絶滅が危惧されているほど食べられて
いない。きしめん文化を保存しようとする人たちが活動するほど、名古屋人のきしめん
離れが加速している。まあうどんと似たようなもので単に麺が平べったいだけだし、
うどんの麺のような食べ応えに欠けるのだから、あえて食べようとする人が少なくなる
のも仕方がない。大抵の人が飲食店のメニューにあってもスルーしてしまう悲しい郷土
料理だ。

最後に「エビフリャー」だが、これが名古屋名物だという理屈もわからなければ、名古屋
人が好きな理由もよくわからない。「特にエビフライが好き」という名古屋人に会った
事がない。また本気で「エビフリャー」と呼んでる人も見たことがない。名古屋人は
冗談で半ば自虐的に「エビフリャー」と呼ぶが、元々そうは発音しない。


「名古屋叩き」の起源は「タモリ」が昔ラジオで名古屋の悪口を散々に吹聴した事から
始まっており、「巨大な田舎」「飯がまずい」「なんでも味噌」「エビフリャー」など
は全てはタモリの軽口によるものだ。名古屋は特に特徴のない地方都市で情報が薄い
ため、他地域の人の名古屋のイメージはタモリの言葉で固まったようだ。

しかしタモリが言っていることはウソばかりではない。博多から移り住んだpcfxも同感
に思う事がたくさんある。名古屋という町の「人情」が割と「特殊」なのは紛れも
ない事実であり、他地域の人から見れば受け入れがたいものはたくさんある。そして
現在もpcfxは名古屋が特に好きだったり愛着があったりはない。先祖の因縁でたまたま
住んでいるだけの地方都市であり、名古屋で事足りたので東京に出てないだけといった
理由だけで住んでいる。だから名古屋や愛知県を叩かれても全くの他人ごとに聞こえ
るし、「ああ、まったくその通りだよなあ」と同意してしまう事がままある。

でもまあ、悪いことばかりではない。東京にも大阪にもすぐ行けるし、街もまあそこそこ
の規模なので不便もないし、物価もそれなりだし、住宅事情も悪くない。景気も他所に
比べればマシなほうだ。派手な観光名所はないが歴史的におもしろい立地だから色々
飽きない。そんな普通の生活ができる特徴の少ない都市が名古屋だ。そして「特殊な
人情」も信長の時代から歴史が作ってきたもので、決して「人がいい」とは言えないが、
それにも歴史的な意味合いがある事を考えると感慨深いものがある。

「名古屋めし叩き」や「名古屋人叩き」は正当な評価だと思うが、まあそう言わずに
とりあえずもう少し冷静に観察してみてはどうか。「名古屋がそうなった理由」を
pcfxはあえて詳しく書かないが、調べると「叩くより面白い事」が名古屋にはたくさん
埋まっているのだ。でもpcfxの「長続きしている親しい友人」は皆他の都道府県出身者
だったりする。意図して選んだわけではないが、真実はこの辺にあるのではないか。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« PC-98と同級生 | トップ | テーブルトークRPG »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。