連続テレビ小説 とと姉ちゃん(87)「常子、花山の過去を知る」 2016.07.13


(常子)「8月15日全てに気付いた」って。
一体何に気付かれたんですか?その時の思いが二度とペンを握らない理由なんですか?教えて下さい。
なぜペンを握らないのか。
・「普段から」・「メイクしない君が」・「薄化粧した朝」・「始まりと終わりの狭間で」・「忘れぬ約束した」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「真実にはならないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の花束を君に」・「涙色の花束を君に」
(花山)コーヒーは好きか?えっ?よく飲むのかと聞いている。
いやあまり…。
私は…母親が好きでねそれで私も好きになった。
座りなさい。
はい。
うちは貧しい家でね。
母親が女手一つで私たち兄弟を育ててくれたんだ。
生きていくのがやっとで母は毎日とても苦しそうな顔をしていた。
だが私が10歳のある日母の顔が突然変わってね。
「元始女性は太陽であった。
真正の人であった」。
平塚らいてう。
そうだ。
らいてうの「青鞜」を読み母はようやく明るくなったんだ。
言葉には人を救う不思議な力があるんだと子ども心に感じてね。
私もそんなふうにペンで力のある言葉を生み出し人を救ったり人の役に立つ仕事をしたいと…。
そうして言葉や絵の仕事に就くようになったんだ。
やがて戦争が始まり私も召集されたんだが戦地で結核を患い帰国した。
戦う事がお国のため人々のためになると思っていた私は役に立てなかった自分を責めた。
そんな時に内務省で宣伝の仕事の誘いを受けたんだ。
これは運命だと思った。
それで人のお役に立とうと?お国が勝てば全ての国民が幸せになれる。
それから私は戦地で戦う友のため国のために尽くそうとペンをとり言葉を選んだ。
ポスターも書いた。
何の疑いもなく「一億一心」の旗を振って戦争に勝つ事だけを考えて仕事をしてきた。
だが去年の8月15日…。
その時初めて気付いたんだ。
小さい頃から何よりも正しくて優先して守るべき大事なものがあると言われていた事が実は間違っていたんじゃないかと。
そしてそれまで言葉には人を救う力があるものだと思ってばかりいて言葉の力の持つ怖さの方に無自覚のままそれに関わってきてしまったのではないかとね。
怖さ?そうだ。
はぁ…。
焼夷弾は分かるよな?はい。
戦時中さんざん見ましたから。
どんなものだと教わった?あ…家々を燃やすために作られたから落ちてきたらすぐに消すようにと。
そう。
「爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず」という言葉を教えられただろう?はい。
その言葉は印刷され回覧板で回され皆それを目にした。
新聞や雑誌の記事にもなった。
だがそれは誤った言葉だったんだ。
「爆弾は怖いが焼夷弾は恐るるに足らず」?とんでもない!焼夷弾も恐ろしい爆弾に変わりはなかった。
それを伝えてしまうと誰も火を消そうとせず逃げてしまう。
火災はますます広がる。
それを恐れてあえて誤った言葉を教えた。
それを信じた人々はどうした?落ちてきた焼夷弾の火を消そうと必死で焼夷弾は怖くないと信じ込んだ子どもたちが…老人が女たちがバカ正直にバケツで水を運んだ!気が付いた時は逃げ道はなかった。
最初から逃げていれば無駄に死なずに済んだのに…。
私ももし戦時中に「『焼夷弾は怖くない』と書け」と言われていたら書いていただろう。
そうしたらそれを信じた無辜の命をどれだけ奪っていたか分からん。
言葉の力は恐ろしい。
子どもの頃から人の役に立ちたくて人を救いたくてペンを握ってきたはずだったのにそんな事も分からずに戦時中言葉に関わってきてしまった。
そして終戦になって信じてきた事の全てが間違っていた事に気付かされた時もうペンは握らないと決めた。
これが全てだ。
さあもう帰ってくれ。
分かりました。
今日は帰ります。
「今日は」じゃない!二度と…来るな。
やっぱり諦められません。
花山さん。
私はどうしても女の人の役に立つ雑誌が作りたいんです。
たくさんの女の人たちが今この戦後の日本で物がないお金もない仕事もない…。
先行きが見えないこのひどい状況の中で必死にもがきながら生きています。
そんな皆さんの毎日の苦しい暮らしに少しでも明かりを灯せるような雑誌を作りたいんです。
コーヒーありがとうございました。
また来ます。
来んでいい!
(ため息)
(せつ)雨漏りが?
(君子)ええすごいんです。
(せつ)だったらちょうどいいわ。
今うち大工さんが来てるの。
戸の立てつけが悪くて。
うちのが終わったら君子さんとこ寄るよう言っとくわ。
(君子)いいんですか?いいのいいの。
あ…でも…。
お代なら大丈夫よ。
うちの親戚筋だから気にしないで。
今の世の中持ちつ持たれつよ。
ありがとうございます。
じゃ大工さんに伝えとくね。
はいすみません。
またね。
はい。
ごめんください。
(君子)は〜い!はい。
あの…こちらは小橋さんのお宅ですか?あら随分お早いんですね。
はい?お待ちしておりました。
よろしくお願い致します。
待っていた?私をですか?ええ。
さあさあどうぞどうぞこちらへ。
さあさあどうぞ。
いや…。
さあさあさあどうぞどうぞ。
お上がりになって。
これなんです。
何がです?天井です。
随分ガタが来ているようだが。
さすが分かるんですね。
そりゃ見れば分かりますよ。
天井のほかにも家のあちこちが傷んでいる。
そうなんですよ。
女しかいないものでどうしても手入れが行き届かなくて。
はぁ…。
あっすみません。
ではお願いします。
いやちょっと待って下さい。
すみません。
私夕飯の支度が。
いやいや待って下さい。
お願いとは一体…。
(美子)ただいま帰りました。
(君子)あっお帰りなさい。
かか遅くなってごめんなさい。
ううん。
雑誌はまり姉ちゃんに任せて手伝いに戻ってきました。
あらいいのに。
だって雨漏りの修理は?それがね大工さんに来て頂けたの。
そうなんですか。
よろしくお願いします。
いや私は…。
私も手伝います。
そうじゃない!あの…何か勘違いをなさっているようですが私は雨漏りの修理になど…。
こんなにしやがって…。
あぁ〜!あの…。
道具はどこだい?道具?金づちやらの大工道具だよ。
大工さんなのに持ってないんですか?いいから持ってきなさい!はい!このちゃぶ台どかします。
あっはい。
せ〜のはい!はい!せ〜のはい!はい!せ〜のはい!
(君子)はい!生字幕放送でお伝えします2016/07/13(水) 08:00〜08:15
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 とと姉ちゃん(87)「常子、花山の過去を知る」[解][字][デ]

常子(高畑充希)は五反田(及川光博)に説得され、花山(唐沢寿明)にペンを折った理由に迫る。常子の熱意に心打たれる花山だが、もう編集の道には戻らないと誘いを断る。

詳細情報
番組内容
「花山(唐沢寿明)さんは君が追いかけてくるのを待っている」と、常子(高畑充希)は五反田(及川光博)に説得される。再び喫茶店を訪れ、ペンを折った真意を聞かせてほしいと迫る。常子の熱意に心打たれる花山だが、編集の道には戻らないと誘いを断る。立ち去る常子。が、大切なはずの財布を店内に忘れてしまう。捨てる訳にもいかず、花山は家まで届ける。しかし、君子(木村多江)に天井の修理に来た大工と間違われてしまい…。
出演者
【出演】高畑充希,木村多江,杉咲花,唐沢寿明,【語り】檀ふみ
原作・脚本
【作】西田征史
音楽
【音楽】遠藤浩二

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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