2016.07.13 16:00
首都圏の大学生を中心に、さまざまな大学から学生が参加する宇宙フリーマガジン『TELSTAR』編集部では、来る宇宙産業の発展に向けて、様々な分野にわたる人々が宇宙を舞台に活躍する基盤を作るため、全国の高校へ配布しているフリーマガジンを中心に、イベント、webページでの発信を続けている。
学生ながら「宇宙を広報する」という発想に至った理由とはなんだったのか。創設者で初代代表の城戸彩乃さんと今年から代表となった吉田華乃さん、記者の末澤卓さんに、創設のきっかけ、活動の指針について話を伺った。
その中で、「情報を発信する」という現代の情報社会における一つの活動スタイルにおける姿勢について多くを学ぶことができた。
いにしえより人類の興味をかき立ててやまない「宇宙」。歴史の進歩とともに地球上に秘境と呼べるものが無くなって久しい今、宇宙への興味は想像の領域から、テクノロジーを用いて実際にその真理を解き明かすという段階へと移り、その発展は年々加速している。 そんな中で、『TELSTAR』編集部は多くの人が無意識に抱く「宇宙は理系のもの」という考え方に疑問を投げかけ、理系にとどまらない様々な分野から宇宙に関わる選択肢を提案している。学生フリーペーパーの祭典「Student Free Paper Forum 2013」ではグランプリを獲得。高校生をターゲットにした全国的な展開などの精力的な活動、そして宇宙への飽くなき興味を詰め込んだフリーマガジンは高く評価されている。
城戸彩乃さん(写真左)と吉田華乃さん(写真右)
創設者で初代代表の城戸さんは、現在首都大学東京の航空宇宙システム工学域という理系の大学院で学ぶ学生だ。しかし高校生の頃は文系のコースにいて、外交官になることを夢見ていた。そのなかで、あることをきっかけに宇宙に興味を持ち、のめり込むことになったという。
団体を引退した今も、時たま会議に顔を出し、微力ながらアドバイスをしているという城戸さん。
あくまで可愛く、手に取りやすいデザインにすることで、「宇宙は難しい」というハードルを下げる工夫をしている。
運営費の援助をしてくれた方を「一口宇宙飛行士」として巻末に掲載している。
「城戸さんが積み上げてきたものを踏襲しながら、それを越えていきたい」と語る現代表の吉田さん。
自身が担当した記事について語る学部三年生の末澤卓さん。
城戸さんが最も心を砕いたという第6号『今さら聞けない宇宙のコト。』
宇宙にまつわる知識の入門書として、手に取った後も何度も読み返したくなるものを目指したという。
取材に伺った日は自由が丘にあるフリースペースを使い次号のテーマについてミーティングをしていた。
現在の新入生の多くが高校生の時『TELSTAR』の読者だったという。
城戸さんも「自分たちの想いが、きちんと届いているんだ、と身をもって感じました」と語っていた。
テクノロジーの進歩とともに、あらゆることが細分化され一言で説明がつかなくなっている現代。 多くの人にとって、「わからないからいいや」と見逃されてしまうテクノロジーの細やかな知識はとても多い。 宇宙開発にまつわる知識はまさしくその最たる分野だ。多くの人の遥か真上に確かにありながら、宇宙について知ることは「なんとなく難しい」という精神的なハードルによって阻まれてしまう。 その問題について真摯な目で見つめ、若い世代へとターゲットを絞りその興味を掻き立てることに努力を惜しまないTELSTARは、いずれくる宇宙の時代に活躍する騎手を今この瞬間も生み出しつづけている。
1995年生まれ。フリーライター。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系在籍。専らの興味は「メディアテクノロジーの進歩による人間の認知の更新」。SENSORSでは「VR」「ドローン」の記事を担当。
Twitter @do_do_tom