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参院選与党大勝  改憲への賛同とは言えない

参院選で、与党の自民、公明両党が大勝した。
 さらに、自公におおさか維新の会、日本のこころを大切にする党を合わせた計4党と、憲法改正に賛同する無所属・諸派議員を合わせた「改憲勢力」が、憲法改正発議に必要な全議席の3分の2を超えた。
 安倍晋三首相が目指す憲法改正が、現実問題として浮上してきたといえよう。ただし、選挙運動での論戦や出口調査をみれば、改憲に国民の理解が得られたとはとても言えまい。与党は国民の声に丁寧に耳を傾けるよう、心してほしい。
 安倍首相は今回の選挙で、来年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを先送りすることについて「国民の信を問う」と位置づけ、与党で改選過半数の獲得を勝敗ラインに設定した。
 しかし、与野党とも消費税増税延期では一致しており、この点で与党だけが支持を得たとはみなせない。増税分を充てるはずだった社会保障の充実をいかに実現するかについては、与野党とも曖昧なままで、選挙戦でも論争がなかったのは残念だ。早急に具体的な財源を含めた社会保障の将来像を示す必要がある。
 経済が中心的な争点となった今回、安倍政権のアベノミクスについて、国民は一定評価したといえよう。アベノミクスは円安株高を導くことで輸出企業中心に企業業績を改善させたが、消費税引き上げ後、消費は低迷し、景気の停滞感は強い。安倍首相も「道半ば」と認めている。民進党などはアベノミクスを「失敗」と批判したが、それに代わる経済政策を示せなかった。

 アベノミクスの点検が要る

 新興国の景気減速や英国の欧州連合(EU)離脱決定などで世界経済が不安定化している。安倍首相は「エンジンを最大限ふかす」というが、この方向が適切なのか、点検が必要だろう。
 民進、共産、社民、生活の4党は32ある改選1人区で統一候補を立てたが、共闘の効果は限られていた。改憲や安保関連法などの重要テーマで国民の支持を取り戻そうと図ったが、与党との対立軸を明確に示せなかった。戦略の立て直しが求められる。
 おおさか維新の会は大阪副首都構想を訴え、関西を中心に議席を伸ばした。ただ、アベノミクスにほぼ賛同し、改憲にも前向きとあっては、野党というより、与党の補完勢力と考えるべきだろう。
 地元の京都と滋賀でも自民が勝利した。滋賀では自民新人が、野党統一候補の民進現職を破った。改選2人区の京都では、自民と民進が議席を分け合った。

 巨大与党の監視が不可欠

 今後、注目されるのは憲法改正だ。
 あと2年あまりは国政選挙がない可能性があるが、衆参で圧倒的多数を得た安倍自民に国民は全権を委ねた訳ではない。
 安倍首相は年頭会見で、憲法改正を参院選の争点にすると明言したが、実際の選挙戦では話題にするのを避けてきた。出口調査では「安倍晋三首相の下での憲法改正について」の問いに対し、反対が50・0%に達し、賛成は34・6%にとどまった。
 安倍首相はこれまで、選挙戦では経済政策で一点突破を狙い、大勝すると、論点にあがっていなかった特定秘密保護法や安全保障関連法の成立に突き進む手法を繰り返してきた。三度目は許されない。
 自民の谷垣禎一幹事長が「改憲が支持されたと受け止めるか」と聞かれ、「すぐにそのような受け止めはしていない」と話したのは当然のことだ。改憲を目指すというのなら、具体的な条項を示し、改めて民意を問わなければならない。
 環太平洋連携協定(TPP)や原発政策についても議論が低調だったのは残念だ。国会でしっかり議論してほしい。
 与党大勝の流れの中、沖縄で自民の現職閣僚が落選したのは注目に値する。政府は、米軍基地問題で高まる沖縄県民の怒りに誠実に向き合う必要がある。原発事故で揺れる福島でも現職閣僚が落選した。
 今回の選挙は、18歳選挙権で行われた初の国政選挙だった。少子高齢化が進み、投票率が高い年配層に手厚い「シルバー民主主義」が問題になる中、未来を担う若者たちの政治参加を広げることは不可欠だ。
 選挙が終わっても、政治への関心を持ち続け、巨大与党が「数の力」で押し切る暴挙に出ないか、注視したい。

[京都新聞 2016年07月11日掲載]

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