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中国は南シナ海めぐる判決を尊重せよ

2016/7/13付
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 南シナ海への中国の海洋進出を巡りフィリピンが提訴した裁判でオランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が管轄権の根拠とする「九段線」には国際法上の根拠がないとの判決を下した。中国は現行の国際法の体系を尊重するのか。今回の判決は決断を迫っている。

 中国は国連海洋法条約の批准国である。にもかかわらず判決を拒否する声明を発表した。判決は法的拘束力を持つが強制力はない。それをよいことに無視するなら国連軽視と言わざるをえない。

 中国は国連安全保障理事会の常任理事国である。アジアと世界の安定維持に大きな責任があるはずだ。判決を一顧だにしない姿勢は、責任の放棄につながる。中国は真摯な姿勢で判断を受け入れるべきだ。強く再考を促す。

 判決はスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国が造成を進める人工島に排他的経済水域(EEZ)は生じないとした。中国の南シナ海での埋め立ては法的な正当性を失った。そもそも古来、南シナ海で主権を有するとの中国の主張には無理があった。それが国際法上もはっきりした意義は大きい。

 今は帝国主義の時代ではない。力による現状の変更は認められない。近代国際法の枠組みを認めないかのような姿勢には、中国内部でさえ批判がくすぶる。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)では南シナ海で領有権を主張するフィリピン、ベトナムのほか、シンガポールやインドネシアも「国際法に沿った解決」に賛同している。中国はカンボジアなどの取り込みに躍起だが、ASEANを分断する戦術には限界がある。

 このままでは南シナ海問題の解決の糸口は見えず、対立が一層、先鋭化しかねない。中国は今回の判決を受け入れたうえでASEAN側と話し合う必要がある。

 中国の海洋進出は東シナ海でも加速している。中国の艦船は6月、沖縄県・尖閣諸島の接続水域に初めて入った。さらに鹿児島県沖の日本の領海を通過し、沖縄県・北大東島の接続水域にも進入した。中国は状況をエスカレートさせる行為をやめるべきだ。

 日本は関係国と緊密に連携して、中国に強く自制を促す必要がある。同盟国、米国との連携も重要だ。先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では首脳宣言で名指しを避けつつ、中国の動きをけん制した。今回もG7各国が結束して、中国に対処すべきだ。

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