南シナ「九段線」、中国主張に法的根拠はない
中国は仲裁裁判所の判決を無視する構え
【ハーグ=横堀裕也、マニラ=向井ゆう子】中国の南シナ海における主権の主張は国連海洋法条約に違反するなどとしてフィリピンが提訴した仲裁裁判で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、南シナ海をほぼ囲い込む境界線「九段線」は「歴史的な権利を主張する法的根拠はない」などとする判決を示した。
南シナ海を巡る中国の主張に国際法に基づく判断が示されたのは初めてで、フィリピンの主張がほぼ認められた。中国は判決を無視する構えだが、主権を巡る主張の根拠が否定されたことになり、外交的に厳しい立場に立たされるのは必至だ。
訴えで大きな焦点となっていたのは、「九段線」の法的根拠と、中国が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で造成を進める人工島の法的位置付けだった。
判決は「九段線」について、歴史的に南シナ海を支配していたとする中国の対外的主張を退けた。また、中国のほかフィリピンや台湾などが権利を主張するスプラトリー諸島にある人工島はいずれも満潮時に水没する「低潮高地」や岩で、排他的経済水域(EEZ)や大陸棚は生じないと断定した。人工島造成が同条約の環境保護義務に違反し、中国がスカボロー礁でフィリピン漁民の伝統的権利を妨害しているとの判断も示した。
フィリピンは2013年、こうした争点を含む計15件について提訴した。中国は領有権に関係する訴えで仲裁裁に管轄権(審理する権限)はなく、提訴は無効と主張し、裁判を最後まで欠席した。裁判官5人で構成する仲裁裁は昨年10月、7件の審理入りを決め、「九段線」など残る8件については判断を保留したが、今回の判決では訴えのほとんどについて判断を示した。
中国は南シナ海で少なくとも七つの人工島を造成して軍事拠点化を進め、「九段線」を根拠に、境界の画定していない海域で石油掘削や埋め立てを強行し、周辺国と摩擦を生んできた。
判決には当事国に強制的に従わせる仕組みがないが、同条約に加盟する当事国には従う義務がある。フィリピン外務省は12日、「画期的な決定だ」と、判決を歓迎する声明を発表した。岸田外相は12日、判決について、「紛争当事国を法的に拘束する。当事国が従うことで、南シナ海における紛争の平和的解決につながることを強く期待する」との談話を発表した。