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参院選の勝利を受け、安倍首相が経済対策とその柱となる補正予算案の検討を…
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参院選の勝利を受け、安倍首相が経済対策とその柱となる補正予算案の検討を指示した。
キーワードは「未来への投資」だという。保育や介護の受け皿整備、保育士や介護福祉士への支援、無利子、さらには給付型奨学金の検討……。首相があげた項目は、いずれも待ったなしの課題だろう。
しかし、今回の対策の主眼は別のところにある。「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」「内需を下支えすることができる、総合的かつ大胆な対策」。首相が繰り返す言葉からも、景気対策のための財政出動であることは明らかだ。
政府・与党では「総額10兆円超」が相場になっている。金額ありきの旧来型である。
新興国経済が陰り、英国の欧州連合(EU)からの離脱ショックも重なった。だが主要国の中央銀行の目配りもあり、リーマン・ショック時のような経済の落ち込みは生じていない。
日本経済にとっての懸案は円高基調だろう。上場企業全体では減益が予想され、それが給与の抑制を通じて個人消費の足を引っ張りかねない。
必要なのは、為替相場に左右されにくい企業体質へ改革を促しつつ、利益をため込みがちな企業から家計へとおカネが回る仕組みを作っていくことだ。
経済の構造を変えずに企業向けの補助金や融資を膨らませ、消費を喚起しようと家庭に商品券を配っても、一時的な下支えやカンフル剤にしかならず、財政悪化を招きかねない。
今回の経済対策でとりわけ疑問を禁じ得ないのは、官民あげての土木・建設事業でおカネを流し込もうとしている点だ。
海外からのクルーズ船受け入れのための港湾整備や農林水産物の輸出基地建設、防災対策などが挙がるが、事業規模が大きいのは財政投融資(財投)を使ったリニア新幹線や整備新幹線の建設前倒しだ。
財投による貸し付けはいずれ返済される。税金を使う一般の公共事業とは違い、政府の財政再建計画の枠外だ。空前の低金利環境を生かさない手はない――。そんな考えのようだが、財投資金も国債を発行して調達することを忘れてはなるまい。
かつて「第2の予算」と言われるほどに肥大化し、01年度の財投改革で「民業補完」を掲げて縮小に努めてきた歩みを逆行させようというのだろうか。
アベノミクスの危うさは財政規律への意識の乏しさにある。
消費増税の再延期に続き、今度は歳出で大盤振る舞いなのか。再考を求める。
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